会議の席などで、“忌憚のない意見”を求められた経験のある人は多いのではないでしょうか。この「忌憚」という言葉、正しく理解していますか?
本記事では、忌憚の読み方や意味、使い方や例文を紹介します。忌憚という言葉を正しく理解し、的確に使えるようになりましょう。
「忌憚」とは?
忌憚とは、「きたん」と読み、忌み憚る(いみはばかる)こと、遠慮することを意味します。
「忌憚」「忌憚のない」の意味
ビジネスシーンでは、よく「忌憚のないご意見をお願いします」など、「忌憚なく」といった使い方をします。
忌憚には、「遠慮すること」「差し控えること」という意味があります。「忌憚のない意見」とすることで「遠慮のない意見」という意味になり、率直な意見を求める時などによく使われます。
「忌憚」の使い方
忌憚は否定の言葉と一緒に使われる
忌憚は、「忌憚なく」「忌憚のない」など否定語とともに使われます。忌憚という言葉自体には「遠慮」という意味がありますが、「遠慮しておきます」と伝えたい時に「忌憚しておきます」という使い方はしません。
「忌憚のある意見」という表現もしません。忌憚は否定の言葉とともに使う、ということを覚えておきましょう。
「忌憚のない」が使われる場面
「忌憚のない」など、忌憚という言葉が使われる場面には、発表やミーティング、アンケートなどで相手から率直な意見が欲しい時です。
友人との会話など日常では「忌憚のない」といった表現をあまりしないことからわかるとおり、やや堅苦しい表現です。日常生活ではなく、ビジネスシーンで使われることが多い言葉です。
「忌憚のない意見」の例文
忌憚という言葉の使い方について、実際の例文とともに説明します。 忌憚は「忌憚のない」「忌憚なく」「忌憚なき」というように、否定表現とともに使用します。
忌憚のない意見が欲しい時の例文
忌憚のない、率直な意見が欲しい時の例文には、以下のようなものがあります。
- 月1回の店長会議では、いつも忌憚のない意見や発言が求められる
- この件については、全員に忌憚なく意見を述べて欲しい
- 忌憚なきご意見をお待ちしております
忌憚のない意見を伝える時の例文
相手が忌憚のない意見を求めている時などは、率直な意見を述べたいもの。とは言え、相手の計画を否定したり、企画にダメ出しをしたりする際には注意が必要です。相手への礼を失しないように、「恐縮ですが」「まことに申し上げにくいのですが」といった前置きをするのがおすすめです。
「忌憚のない意見」を求められた場合にも、目下の人から目上の人へ「忌憚のない意見を申し上げます」という使い方はしません。相手が目上の人の場合や、相手の意見と自分の意見が異なった場合には、なかなか自分の意見を伝えにくいものですが、自分の意見をしっかりと伝えることも社会人には求められます。
「恐縮ですが」「まことに申し上げにくいのですが」などの前置きがあれば、「自分の意見を伝えたいけど、失礼にならないようにしたい」という意図も相手に伝わります。また、相手にとっても前置きがあることで心の準備をしやすくなるなどの効果を期待できます。
忌憚のない意見をもらった時の返答の例文
自分自身が実際に忌憚のないストレートな意見をもらった時には「率直なご意見、ありがとうございます」など、意見をもらったことに対する相手へのお礼を伝えましょう。
メールであれば、以下のような返答の仕方があります。
- 率直なご意見をおうかがいし、大変参考になりました
- 率直なご意見をいただき、まことにありがとうございます
意見をもらったことへのお礼を述べてから、必要があればさらに自分の意見や用件を伝えるようにしましょう。
使い方に関する注意点
目上の人に対して「忌憚のない意見をお聞かせください」などと使うのはふさわしくないケースもあるといわれています。そもそも、目上の人が目下の人に対して意見をいうのに遠慮する必要がないためです。
自分の上司や目上の人からストレートな意見が欲しい時には「ご意見をいただければ幸いです」など「意見が欲しい」ことが伝わるような表現にするといいでしょう。
「忌憚のない」の類語・言い換え表現
「忌憚のない」の言い換え表現を紹介します。状況や相手に応じてスムーズなコミュニケーションがとれるよう、ぜひ覚えておきましょう。
率直
率直は、ありのまま隠さない様子を意味します。「率直なご意見をお願いします」「率直にいうと、面白くなかった」といった使い方をします。素直な意見が欲しい時、自分の意見をそのまま伝えたい時に、使用できる言葉です。
気兼ねなく
「気兼ね」は、相手に気を使ったり、遠慮したりすることです。「何か意見や指摘する点があれば、気兼ねなく教えて欲しい」といった使い方をすれば、「忌憚のない」と同様に、遠慮や気遣いなく率直な意見が欲しいという意図を伝えられます。
遠慮なく
「遠慮なく」は、気を使って控えたりせずにという意味で、相手の行動を促す時に使われます。
「ご意見があれば、なんでも遠慮なくおっしゃってください」など、相手からの感想や意見を促すことができます。
「忌憚」の対義語
忌憚とは逆の意味を持つ対義語を紹介します。
図々しい
「図々しい」は、自分勝手なふるまい、態度や行動をあらわす言葉です。「遠慮」という意味を持つ「忌憚」とは、逆の意味があります。
厚かましい
「厚かましい」は、態度や行動が図々しく、慎みがないことを意味します。他人に迷惑をかけていながらそのことに対して恥ずかしいと思う気持ちがない状態をあらわす言葉です。
不遠慮
「不遠慮」は遠慮の逆となる言葉で、遠慮がなく図々しいふるまいをあらわします。「無遠慮」という表記もあります。
「忌憚」「忌憚のない」の英語表現
忌憚の英語表現について解説します。
「遠慮」を意味する英語表現
忌憚(=遠慮)という意味をあらわす英語には名詞の「reserve」などがあります。
トムは遠慮しながら意見を述べていた
「忌憚なく」という意味での英語表現
忌憚なく(=遠慮なく)という意味の英語の形容詞には「frank」があります。ほかにも副詞の「frankly」、名詞を使った「whithout reserve」といった使い方もできます。
・We look forward to your frank opinions!
忌憚ないご意見をお待ちしています
・Tell me your opinions, without any reserve
忌憚ない意見を聞かせてください
忌憚の意味を理解してビジネスシーンでも使いこなそう
忌憚は、「きたん」と読み、忌み嫌うこと、遠慮することといった意味があります。
否定の言葉と一緒に「忌憚なく」「忌憚のない」といった形で使われることが多く、率直な意見を求める時などに「忌憚のないご意見をお聞かせください」などと使われます。発表や会議の場で使われることも多く、ビジネスシーンでもよく聞かれる言葉です。
忌憚の読み方や意味だけではなく、実際の使い方や例文を知っておくと、自分が人から意見を求める時にもスムーズに使うことができます。
ぜひ、意味とあわせて例文も覚えておきましょう。