●インターネットは人類には早すぎたのかも
──4曲目「tie」はご自身で作詞・作曲された一曲です。
曲は、いつも通りに僕がサビの部分を鼻歌で何となく歌って、それを赤堀さんがピアノやギターを使って演奏する。それに併せて僕がまた鼻歌でメロディを考えるという形で作っていきました。今までの鼻歌作曲のなかでは、いちばん思い通りにいったと思います。
──詞にはどのような想いを込めましたか?
コロナ禍って、恐らく死ぬときに思い出すぐらい人生のなかでの大事件のひとつになったと思うんです。その中で感じたことを前面に出した曲ですね。みなさんも色々なことを考える時間があったと思いますが、僕は特に人との付き合い方について思うところがありました。コロナ禍では、インターネットでコミュニケーションを取る機会がかなり増えたと思います。でもインターネットって、人類が使うのはまだ早すぎたと思うんですよね。変な話ですが、まだもうちょっと不便な方がよかったかもしれないなって。
──その心は。
例えば手紙やメールを送るときって、言葉遣いや文面をもっと精査していたと思うんですよ。ただ、いまのSNSやさまざまなツールだと、精査する前にポンと送れちゃう。それによって相手が読み間違えたり、言葉の真意が伝わらなかったりして、誤解が生まれる。そういうシーンをコロナ禍では頻繁に目撃しました。自分自身が当事者にならなかったとはいえ、それを見ているのは正直、気持ち的にしんどかったんです。
──気持ちが沈んでしまうことがあった。
はい。人間って、良い部分だけでなく、悪い部分やダメな部分も持っていると思うんです。好意を寄せていても、いい人だと思う相手でも、嫌いな部分や直してほしいところはあるはず。一方、あまり好きとは思えない方がいたとしても、その人の嫌なところばかりに目を向けるのではなくて、ちゃんといいところを見つけたら、そこまで忌み嫌うことはない気がするんです。
──自分の苦手なものや考え方と違うものばかりに目がいってしまうと、歪みが起きてしまう。
そうだと思います。今って、知らなくてもいい情報まで手に入ってしまう世の中だと思うんです。自分が好きじゃない情報まで目に入ってしまうというか。それでも、自分の不得意なことや、考え方が合わないものばかりに目を向けたり、限定的なコミュニティにわざわざ入っていったりしなければ、いざこざは生まれないと思うんです。関わらなくても特に自分の生活に影響がない人や事件に無理矢理ネットで関わって不幸になるよりも、外界に対しては少し鈍感になってもっと内側の自分や自分が好きなものに集中した方が良いと思います。この曲にはそういう僕の考えを込めました。
──なるほど。
すみません、熱くなり過ぎました……!
──いえ! むしろ、とても真摯に心の内を語っていただき、ありがとうございます。
そう言ってもらえると、助かります。
●人との繋がりによって完成したアルバム
──ミニアルバム5曲目に収録されているのは「Thank you for...」。
これまでも僕の曲をいくつか書いてくださっている山中真一さんに作詞をお願いしました。山中さんは寺島惇太像をよく分かっていらっしゃるので、僕らしく、カッコつけすぎない、マイペースな歌詞を書いてくださいました。歌っているときもすごくリラックスして、気持ちを乗せることができた気がします。アルバムのなかでもホッと一息つけるような、いい曲をいただけました。
──ライブでもアクセントになりそうです。
そうですね。この曲があることで、より緩急が付いたライブをできるんじゃないかな。
──そして、ミニアルバムを締めくくるのは「Lightning」。
アルバムのラストはどうしようかという話し合いをしたとき、元気な感じで、まだまだいくぜという終わらせ方にしようという方向性に決まったんです。そうして、寺島惇太らしいロック全開な曲で締めくくることとなりました。この曲は赤堀さんが作曲、そして作詞は以前僕が出演したアニメ作品のタイアップ曲をエドガー・サリヴァンとして歌唱されていた佐々木萌さんに担当していただいています。色々な縁が繋がって完成した一曲ですね。
──今回のアルバムは様々な縁が繋がって出来上がった一枚なんですね。
そうですね。声優・アーティスト活動での繋がりによって完成したアルバムなので、僕の人生がギュッと詰まっている気がします。
──最後に、アーティスト活動で今後実現したいことを教えてください。
ギターがちゃんと弾けるようになりたいですね。バースデーライブで初めて弾き語りをしたのですが、すごく楽しかったんです。それに楽器が弾けるようになれば、鼻歌じゃない形で作曲ができるようになり、アーティスト活動の幅もより広がる気がします。ギターを練習して、より骨太なアーティストになりたいですね。
●「Soul to」
CD収録内容
M1.キミハレーション
M2.Realize
M3.Youth
M4.tie
M5.Thank you for...
M6.Lightning
●初回限定盤
3,000円(税込)
※「キミハレーション」のMVとメイキング映像が収録されたDVD付
●通常盤
価格: 2,200円(税込)
寺島惇太(てらしまじゅんた)8月11日生まれ。長野県出身。ケンユウオフィス所属。主な出演作は『KING OF PRISMシリーズ』一条シン役、『A3!』御影密役、『アイドルマスター SideM GROWING STARS』大河タケル役ほか。2019年3月にアーティストデビュー。これまで2枚のミニアルバムをリリースしている。