マーケティングファネルとは、商品やサービスの「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購買(行動)」といったユーザーの行動プロセスを図で表したものです。各プロセスの行動・心理を分析することで、マーケティング施策の改善のヒントを得られます。今回はマーケティングファネルの概要や分析事例について解説します。

マーケティングファネルとは認知から購買へのプロセスのこと

ファネルとは英語で「漏斗」を意味します。口の小さな容器に液体を注ぐ容器で、逆三角形の形がポイントです。

ファネルは複数の段階で構成され、認知→購買に至るまでの過程を示しています。上図の逆三角形のように、各プロセスへ進むほど顧客の数が絞られていきます。

漏斗の逆三角形の形が購買行動に似ていることから、「マーケティングファネル」という名称のフレームワークとして利用されています。

なお逆三角形の形はあくまでもプロセス上で自然と顧客の数が減ることを意味します。 顧客を選別したり、ふるいにかけたりすることを目的とするモデルではないことに注意しましょう。マーケティングファネルの理想は、最下層の購買を少しでも大きくすることです。

ファネルを分析するメリット

マーケティングファネルの各段階について分析することで、施策の改善につながります。

1.ユーザー数の変動を把握できる

各プロセスのユーザー数を観察することで、どの段階で顧客が継続または離脱してしまうのかがわかります。たとえばWEBで製品の一覧ページから個別の詳細ページへの移行率が低い場合、一覧ページが見にくいなどの問題点が考えられます。

2.各段階のユーザーに適したアプローチにつながる

段階ごとに顧客の商品・サービスに対する興味関心の度合いや心理状況は異なります。ファネルを分析することで、各段階にふさわしいコミュニケーションを実施できます。

3.ペルソナの設定・活用に役立つ

段階ごとの心理・行動の変化を捉えることで、ペルソナの設定に役立てることもできます。各プロセスにおけるペルソナをもとにして、ターゲットを絞ったメール配信、コンテンツ表示の切り替えといった施策の実施が可能です。

4.B to Bのマーケティングでも使いやすい

マーケティングファネルはB to Bのビジネスでも活用できます。企業の購買プロセスは消費者と比べると、よりシステマティックで直線型です。

B to Bの購買は複雑で時間がかかると言われることもありますが、関係者が多いことや協議・会議が多いことが要因であり、プロセスそのものはシンプルです。マーケティングファネルはB to Bでも活用できるフレームワークです。

ファネルの3種類のテンプレート

ファネルのなかでも、よく使われる3種類のテンプレートについて解説します。

1.パーチャスファネル

マーケティングファネルを代表する、もっとも有名なテンプレートです。前述のとおり「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購買」の4つのプロセスで構成されています。

さらに下記の3段階に分ける考え方もあります。

・TOFU(Top of the Funnel):認知+興味・関心
・MOFU(Middle of the Funnel):比較・検討
・BOFU(Bottom of the Funnel):購入

マーケティングで他に似たような行動モデルがあると気づく人もいるかもしれません。そのとおりで、このパーチャスファネルは下記の「AIDMA(アイドマ)モデル」をベースに考えられたものです。

・Attention=注意
・Interest=興味・関心
・Desire=欲求
・Memory=記憶
・Action=行動

購買までのプロセスにおいてどこでユーザーが離脱してしまうのかを分析し、ファネルの最下部にあたる購買を大きくするためにはどうしたらよいのか、施策を検討します。

2.インフルエンスファネル

消費者が購入した後のプロセスを図式化したものがインフルエンスファネルです。継続・忠誠、紹介、発信の3つの段階で構成されています。

継続的に利用してもらって愛着度を深め、利用者が周囲に紹介したり良い口コミ・評判を発信したりすることで、さらなる顧客の獲得を目指すというプロセスです。

SNSや通販サイトの発展により、消費者の口コミが購買行動に与える影響も大きくなっています。インフルエンスファネルは顧客を獲得した後の関係構築も重要であることを示しているモデルです。

3.ダブルファネル

パーチャスファネルとインフルエンスファネルを合体させたモデルです。逆三角形と三角形が組み合わさることで、砂時計のような形をしています。

認知から購入までのパーチャスファネルでいったん顧客数は絞られるものの、その後のインフルエンスファネルで情報を拡散し、さらに広くユーザーを獲得することを目指します。

ファネルの分析・活用の成功事例

ファネルを分析して施策の改善に活用し、成果を上げた事例を紹介します。

ファッションブランド「Charles Tyrwhitt」

「Charles Tyrwhitt」とは英国のメンズブランドで、ファネル分析を生かした動画広告により、ROAS(広告の費用対効果)を5倍、CVR(コンバージョン率)を2.2倍に引き上げることに成功しました。

ファネルの各段階の利用者に対し、以下のように異なる動画広告でアピールしました。

・認知の段階:イメージ訴求のブランディング動画
・比較・検討の段階:利用するメリットを丁寧に解説した動画
・購入の段階:無料配送や価格訴求を打ち出した動画

ファネルごとに最適な訴求を行ったことで成果に結びついたと言えます。

ファネルの考えはもう古いって本当? 注意すべきポイント

マーケティングファネルを利用する際は、下記の注意点も頭に入れておくと良いでしょう。

1.購買行動が直線的でなくなりつつある

インターネットの発達は、顧客の購買行動に大きな変化をもたらしました。ネットで情報を見ることが簡単になったため、興味・関心があちこちに向くようになりました。

よって1つのことをずっと調べるのではなく、ネットやSNSで「サーフィン」をしながら、興味のある情報を次々チェックするスタイルになっています。

マーケティングファネルでは「興味・関心」から「比較・検討」、さらに「購買」と一直線のプロセスが描かれますが、実際の購買行動はそこまで直線的ではなくなっているとの指摘があります。B to Cの領域で特にこの傾向が顕著です。

2.ネット上の口コミ・評判の影響力が増している

SNSや通販サイトなどに投稿されている口コミについて、インフルエンスファネルでは要素として含まれていますが、パーチャスファネルでは含まれていません。しかしネットの口コミは近年、大きな販促効果を生んでいます。

消費者は広告を一方的に受け取るだけの存在ではなくなり、自ら情報を発信したり商品やサービスを評価したりすることが可能になりました。購買の意思決定をする際に、投稿されている情報をもとに判断するユーザーも増えています。


マーケティングファネルについて、代表的なテンプレートのパーチャスファネルとインターネットの普及により加わったインフルエンスファネル、その両方を合わせてたダブルファネルをご紹介しました。

また、マーケティングファネルは「AIDMA(アイドマ)」モデルを元に生まれましたが、「AISAS(アイサス)」「SIPS(シップス)」「DECAX(デキャックス)」といった新しいモデルが登場しています。

ファネルを活用してユーザーの行動プロセスを理解したうえで、商品やサービスの売れる仕組みづくりへ役立てるといいでしょう。