• (左から)名城ラリータ氏、木月洋介氏、樅野太紀氏

木月:樅野さんは元芸人さんの作家さんとして、気をつけていることはあるんですか?

樅野:芸人の先輩だからって勘違いして、若い芸人とかに「メシ行こうよ」って言いたくなるんですけど、それはなるべくやらないようにしてます。自分が芸人だったときのことを思い出すとそういう人、面倒だったなと思って(笑)。でも困るのは、チャイルドマシーンって芸人としては中途半端なんですよ。めちゃくちゃ売れたわけでもないし、全然売れなかったわけでもないじゃないですか。たまに後輩の芸人との打ち合わせに出席しないといけないときがあると、「元チャイルドマシーンの樅野です」ってわざわざ言わないんで、「こいつ俺のこと知ってんのかな? 知らないのかな?」って距離を取りながら、ふわふわしていつも帰ります。だから芸人との打ち合わせは、あんまり行きたくない(笑)

ラリータ:樅野さんにはよく、「作家さんの次の目印になっていただかないと」って言ってるんですよ。

木月:若い作家さんも前よりたくさん出てきてますからね。

樅野:今の若い子はうらやましいです。スタート時点からこんなお笑い番組がいっぱいあって、20代からお笑いの仕事ができるなんてすばらしいですよ。「コント案募集」なんて、何年もなかったですから。

木月:でも、ちょっと揺り戻しがありますから、また変わってくるかもしれないですね。

ラリータ:フジテレビが、変わりそうだもんなあ。

――金光(修)社長が9月の定例会見で「若い層にターゲットを振る基本戦略は維持しつつも、量、すなわち個人全体視聴率を取りに行くことも目標に加えている」と言っていました。

樅野:このお笑い番組ブームが焼け野原になったら、一番影響食らうのは俺だろうなあ(笑)。将来のことを考えたくないから今必死に生きてるんですけど、1個だけ夢ができたんですよ。絶対いつか仕事はなくなるから、暇になったら「放送酒家(さっか)」っていう居酒屋作ろうと思ってます(笑)

(一同笑い)

木月:いいじゃないですか!(笑)

ラリータ:マジで作りそうだな…(笑)。でも、作家さんって仕事に多様性がありますよね。ディレクターって、テレビ作るか、YouTube手伝わせてもらうか、それくらいですけど、作家さんはプランナーだから、テレビじゃなくても全然いいし。

■テレビ以外もやっていくべき時代に

木月:それでも樅野さんは、やっぱりテレビですか?

樅野:自分がいろんな仕事をする中で、テレビが一番得意だなと思ったんです。やってて楽しいし、自分がワクワクしてたのがテレビだし。これが若い頃にYouTubeを見てワクワクしてたらYouTubeに行ってたかもしれないですけどね。あと、テレビって巨大組織じゃないですか。そのビッグプロジェクトをやってる感じのほうが楽しいんですよね。YouTubeみたいにグループのノリでやろうぜ!っていうのも楽しいと思うんですけど、それよりもやりがいがあるなと思って。

ラリータ:たしかにそうですよね。

樅野:すごい組織ですよ。スポンサーがいて、営業がいて、編成がいて、制作がいて…って、すごいものを背負ってるわけじゃないですか。

木月:ラリータさんもテレビですか?

ラリータ:配信もやってはいるけど、テレビですね。大学生の人にとかフジテレビの新人研修とか呼ばれて話すことがあるんですけど、ディレクターになりたい人は、1個だけに固執しないほうがいいって言ってるんです。俺らはテレビをどうにかしなきゃいけないっていう世代で、配信で裾野を広げることもチャレンジしてるけど、軸はやっぱりテレビじゃないですか。でも今は、僕らと同じようにやっても予算の問題があるし、働き方改革で休みもできるから、そこで何か別のことをやったほうがいいって話を必ずしてますね。自分が若いADだったら、YouTubeやってもいいんじゃないかって思いますもん。

木月:そうですよね。

ラリータ:僕らの世代は朝から晩までテレビやってきたから、その感じで歯車が回ってるけど、これからの人は余力がある中で休みが取れると思うから、いろんなことをやっていったら、それでまた新しいディレクターを作るんだろうなあと思うんですよね。昔ほど他局との仲も悪くないし(笑)、どんどんテレビが厳しくなって、一緒に頑張っていきましょうみたいになってくると、自分を高めていくのも自分でやるしかないだろうから。それに、演者さんも若くなっていて、テレビメインでやらなくていいという人たちもいるじゃないですか。そういう人たちに「テレビ頑張っていきましょう」ばっかり言うと、可能性をこっちが狭めてる感じもするし。でも、個人的には樅野さんと一緒です。テレビが一番楽しいですから。

次回予告…~音楽番組編~

●名城ラリータ
1976年生まれ、沖縄県出身。日本大学芸術学部卒業後、00年フジクリエイティブコーポレーションに入社。フジテレビのバラエティ制作センターに配属され、『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』『ココリコミラクルタイプ』『もしもツアーズ』『全国一斉!日本人テスト』などを経て、現在は『全力!脱力タイムズ』『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ)、『冗談騎士』(BSフジ)、『有田P おもてなす』(NHK)を担当。

●樅野太紀
1974年生まれ、岡山県出身。95年からお笑いコンビ・チャイルドマシーンとして活躍するも04年に解散し、放送作家に転向。現在は『ミュージックステーション』『しくじり先生 俺みたいになるな!!』『関ジャム 完全燃SHOW』『かまいガチ』『まだアプデしてないの?』『くりぃむナンタラ』(テレビ朝日)、『有田P おもてなす』『わらたまドッカ~ン』(NHK)、『有吉の壁』(日本テレビ)、『プレバト!!』(MBS)、『アウト×デラックス』『千鳥のクセがスゴいネタGP』『新しいカギ』(フジテレビ)などを担当。『しくじり先生』で第41回放送文化基金賞・構成作家賞、『両親ラブストーリー~オヤコイ』で第45回放送文化基金賞・企画賞を受賞。

●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『千鳥の対決旅』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』などを担当する。