YouTube・サブスク動画配信サービスの台頭、視聴率指標の多様化、見逃し配信の定着、同時配信の開始、コロナ禍での制作体制――テレビを取り巻く環境が大きく変化する中、最前線にいる業界の“中の人”が語り合う連載【令和テレビ談義】

第4弾は、『全力!脱力タイムズ』制作総指揮『千鳥のクセがスゴいネタGP』総合演出の名城ラリータ氏(フジクリエイティブコーポレーション)、『有吉の壁』『千鳥のクセがスゴいネタGP』『新しいカギ』などを手がける元芸人の放送作家・樅野太紀氏が登場。『新しいカギ』の総合演出を担当するモデレーターの木月洋介氏(フジテレビ)を含めた3人によるテレビ談義を、4回シリーズでお届けする。

最終回は、現在のテレビ界のお笑いブームと、そのきっかけになった『有吉の壁』(日本テレビ)の話題に。そこから『脱力タイムズ』、そして3人がそれぞれの番組で仕事をするくりぃむしちゅー・有田哲平の番組作りにかけるエピソードが次々に飛び出した――。

  • 『全力!脱力タイムズ』に出演する有田哲平 (C)フジテレビ

    『全力!脱力タイムズ』に出演する有田哲平 (C)フジテレビ

■コロナでみんなが「お笑いを見たい」気持ちに

――この1年半でのテレビ界の「お笑い番組」のブームについては、みなさんどのように捉えていますか?

木月:明確に上の世代に向けた番組にシフトしていく時代がありましたけど、そこから大きく変わりましたもんね。

樅野:この変わり様って、すごすぎますよね。

木月:キー特性(※1)などコア視聴率が重視されるようになったのもありますけど、やっぱり風向きを変えたのは、樅野さんがやってる『有吉の壁』(日本テレビ)の大成功じゃないですか?

(※1)…フジテレビの視聴率重点指標。13~49歳男女。

樅野:あれはもう(総合演出の)橋本(和明)さんですから。

ラリータ:橋本さんは『有吉ゼミ』でうちの妻(=ギャル曽根)もお世話になってるから、「ありがとうございます!」って心からお礼が言いたいです。でも、冷静に物事を見て番組を作ってる感じがしてバランスの良さを感じますね。芸人さんのことがすごく好きそうな感じもあるし。

木月:大学の先輩なんですけど、当時落研でやってらっしゃるのを1回見たことがあるんです。もともとお笑いが好きなんですよね。それで、日テレに入って『笑ってコラえて!』とか『ヒルナンデス!』とか王道もやってるから、ちゃんと日テレのノウハウも受け継いでる。

樅野:この連載の最初が木月さんと橋本さんと水野(雅之、MBS)さんだったじゃないですか。この3人には共通項があるんです。それは俺がアイデアを出すと、3人とも「なるほどー!」って言うんですけど、瞬間に「でもここ大丈夫ですか?」「こうなりませんか?」って次の議論始めるんですよ。いや、もうちょっと「いいアイデアだな」とか言って、あと2ホメくらい言ってくれないと!

(一同笑い)

木月:これは反省しないといけないですね(笑)。でも、『有吉の壁』をあのタイミングにレギュラーにした日テレの判断もすごいですよね。

樅野:こんなこと言ったらアレですけど、レギュラーになる番組だと思わないでずっとやってたんですよ。それが、橋本さんから電話があって「レギュラーになる」「しかも19時台のゴールデン」って聞いて、すごいことするなと思いましたよね。しかもちゃんと数字とるんかい!って。

ラリータ:そこで数字とるっていうのがすごいですよね。

樅野:ナレーション原稿を見たことがあるんですけど、ペラ紙に1行だけでしたよ。頭にちょろっと言うだけ。すごい番組ですよ。

木月:しかも、スタートがコロナの時期でロケができなくて逆風だなと思ったのに、全然大丈夫だった。みんなが「お笑いを見たい」っていう気持ちになりましたもんね。

樅野:リモートでそれぞれ自宅に中継つないでものまねしてもらう企画をやったときの(とにかく明るい)安村なんて、家の中を水浸しにしてすごかったですもんね。やっぱり『有吉の壁』での安村の根性って、頭下がるというか「芸人ってそうだよね」って思わされます。

――特番の1回目で、安村さんが熱海の商店街の散髪屋で頭を剃り上げるというネタをやったときに現場の空気が変わったと、橋本さんに聞きました。

樅野:完全にスイッチになりましたからね。

ラリータ:ありがたいことですよね、そういう人がいるというのは。

木月:それができるのって、やっぱりスタッフと芸人さんの関係性じゃないですか。それがあるから、毎回提出が大変なネタの“宿題”もやってくれるわけですもんね。

樅野:あの番組は本当に芸人がネタを考えてますからね。安村から日曜日に「このネタどう思います?」って相談来ますから(笑)