ユニクロは来年より、地域に根ざした社会貢献活動の新たな取り組み「スポGOMI×UNIQLO」を全国で展開する。ゴミ拾いをスポーツ感覚で楽しめるイベントで、担当者は「街のゴミが海洋ゴミにつながっていることを人々が意識するきっかけになったら」と期待を寄せる。全国での開催に先駆け、11月13日に香川県高松市のユニクロゆめタウン高松店にて開催されたイベントを取材した。

  • 海洋ゴミ削減に向けた「スポGOMI×UNIQLO」がユニクロゆめタウン高松店(高松市三条町)で開催。たくさんの参加者が、街なかでゴミを拾い集めていった

楽しんでゴミ拾いできるイベントに

スポGOMI×UNIQLOは、一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブが協力する新感覚のゴミ拾い活動。チームのメンバーと制限時間内でゴミを拾い、その量と質でポイントを競い合う。同日、参加したのは41名(17チーム)。社会人、家族、大学生など、様々な世代が早朝の秋空の下に集結した。

  • 挨拶する日本スポGOMI連盟の馬見塚健一代表理事

まずは主催者を代表して、日本スポGOMI連盟の馬見塚健一氏が挨拶。「海洋ゴミ問題は、私たちの生活の延長線上で起こっています。世界では年間800万トンのゴミが海に流れていますが、その多くは街の中で発生したゴミ。雨で側溝に流れ、川を通って海までたどり着いているんです。街を綺麗にすることで、海洋ゴミ問題の解決にもつながることに気づいてもらえたら」と、イベントの趣旨をあらためて説明する。

  • 海洋ゴミについては、会場に設置のパネルでも説明

このあと、大学生がマイクの前に立ち「我々はスポーツマンシップに則り(中略)チーム一丸となって、高松の地と瀬戸内海の豊かなを海を守るため、ゴミ拾いをすることを誓います」と爽やかに選手宣誓した。

  • 選手宣誓する学生。若い世代も積極的にイベントに参加していた

参加者たちはリサイクル素材から生まれたオリジナルTシャツに身を包み、軍手、トング、ゴミ袋を手にして、決められたエリア内で30分間のゴミ拾いを行う。ゴミは「燃える」「燃えない」「ビン、缶」「ペットボトル」「タバコの吸殻」に分別。燃えるゴミは100gで10pt、燃えないゴミは100gで5pt、などと得点が定められており、合計ポイントで優勝を争うルールになっている。各チームは、何処を回るか事前に作戦会議を実施。そして競技スタートの号令を合図に、三々五々、エリア内に散らばっていった。

  • 小さな子どもを連れた親子連れの姿も多かった

小さな男の子2人を連れて参加した家族に密着した。歩き始めてすぐに、駐車場の一角にゴミが溜まっているホットスポットを発見。「なんでこんなにタバコが多いんやろ」と問いかける子どもに、「吸い終わったらポイ捨てしちゃう人がいるんだよ」と父親が説明する。この後も植え込み、歩道の脇などに菓子袋やビニールのゴミを発見しては回収していく。人通りの多い道路は綺麗でも、一歩、路地を入るとゴミが溜まっている所がある。回収用のゴミ袋は、ものの数分でそれなりの大きさまで膨れ上がった。

  • 植え込み、路地裏などでゴミの回収が進んだ

制限時間の30分が短く感じてしまうほど、歩く先々にゴミがあった。決められた時刻となり集合場所に戻ってきた参加チームは、それぞれに充実した表情がうかがえる。「はじめのうちは『高松の街、綺麗じゃないか』と思ったけど、途中でホットスポットを見つけちゃった」なんて声も聞こえる。先の家族の父親は「楽しみながら参加できました。会社でもSDGsに取り組んでおり、こういうイベントにかねてから興味があって。思ったよりタバコが多かった印象です。自分たちもゴミを出さないように気を付けていきます」と感想を口にした。

  • 集めたゴミは重さを量り、ポイントに換算してPCで集計。優勝チームを決めていった

ポイントを集計した結果、優勝チーム、および2位と3位のチームが決定。それぞれに(ユニクロが20年来支援している)瀬戸内オリーブ基金ゆかりの関連商品が提供された。優勝したのは3.67kgを集めて680ポイントを獲得した家族だった。「ゆめタウンでチラシを見て参加しました。人の集まる公園にゴミが多かった。これからもゴミはポイ捨てしない、見つけたら海に流れ着いてしまう前に拾いたい」と話していた。

  • 優勝チーム、2位、3位のチームをユニクロゆめタウン高松店の店長が表彰した

ちなみに、わずか30分で集まったゴミの総量は約18kgというから驚く。最後に、瀬戸内オリーブ基金 理事長の岩城裕氏が「私たちは豊かな海と、豊かな島を次の世代に引き継ぐべく瀬戸内海の環境問題に取り組んでいます。今回のイベント参加が、日常生活で出てくるゴミについて考える良い機会になれば幸いです」と総括した。

  • 最後は皆んなで記念撮影して終了となった

なぜスポGOMIと連携? 今後の展開は?

ユニクロを展開するファーストリテイリングは2001年に「社会貢献室」が発足。それ以来、社会課題の解決に向けた活動を積極的に行っている。今回、ユニクロゆめタウン高松店でイベントを開催した経緯、そして今後の展開について、ファーストリテイリング コーポレート広報部のシェルバ英子氏に聞いた。

――スポGOMIと連携した経緯について。

シェルバ氏「私たちは、様々な側面からサステナビリティの取り組みを進めています。服を回収してリサイクルする、難民を支援する、再生ポリエステル素材を使った商品を開発する、そういったことですね。でも日本全国にショップを出して、地域に根ざした店舗づくりを心がけている会社として、お客様と一緒に取り組めるものがなかった。そんなとき、馬見塚さんのスポGOMIを知ったんです。『ボランティアに参加してみたい』『きっかけが欲しい』という人は世の中にたくさんいます。でも『ゴミ拾いしよう』だと道徳的すぎて、ちょっと敷居が高い感じがする。そこで、スポーツと絡めたら?皆さんが参加しやすい雰囲気になるでしょう。これは発明だ、と共感したんです」

  • 同日午後、スポGOMI×UNIQLOに参加の大学生たちと座談会する、ファーストリテイリング コーポレート広報部のシェルバ英子氏

――京都でも11月6日にスポGOMI×UNIQLOを実施した。参加者の反応は。

シェルバ氏「京都では若い社会人の姿も目立ちました。話を聞くと『会社でSDGsに取り組んでいるけれど、いまいち何をやったら良いのか分からない。でもユニクロがやっている取り組みなら分かりやすいのではないか、と思って参加した』という声が聞けました」

――午後、学生とは座談会で話し合う機会もあった。

シェルバ氏「今後、大変な時代を担っていく彼ら彼女らは、意識も高く感じます。スポGOMI×UNIQLOにも楽しみながら参加してくれました。ボランティア活動にワクワク感を持って参加できることは大事。それでこそ活動も横に広がります。SDGsの取り組みを次につなげられる世代だと期待しています」

  • 座談会の様子。馬見塚氏も輪に加わり、活発な意見交換が行われた

――ユニクロとSDGsについて。

シェルバ氏「世の中にSDGsという言葉が浸透しました。最近は企業に対する期待値が、お客様が商品を選ぶ理由になってきたと実感します。ユニクロでは社会貢献、環境への取り組みを20年続けてきました。環境に良いことをしているか、地域とつながっているか。ときにお客様には厳しい目で見てもらい、お互いに高め合えていけたら良いですね。将来的には、サステナビリティのタッチポイントのような存在にユニクロがなれたら、と思っています」

  • スポGOMI×UNIQLOの会場となったユニクロゆめタウン高松店には、再生ポリエステル素材を使ったフリース商品も展示されていた

――今後の展開について。

シェルバ氏「スポGOMI×UNIQLOは、来年から全国規模で展開します。都道府県で、それぞれの土地にあったカタチで開催できれば。定期的に、どこかで必ず実施されている状況になると良いですね。スポGOMI×UNIQLOは、お客様が参加できる社会活動のひとつとして大きく育てていきたいです」