人生の三大支出の1つがあるお子さんの教育費。夫婦のライフプランを考える上で大きなポイントの1つです。このお子さんの教育費がどれくらいかかるか、どのように用意したらいいかについて今回は解説いたします。

■子どもの教育費は総額でどれくらいかかる?

文部科学省のデータをまとめると以下の通りです。

  • 子どもにかかる教育費一覧(筆者作成)

幼稚園から大学まで全部公立で800万円程度、全部私立だと2,300万円程度かかる計算になります。どの進学プランを選択するにせよ、大きな金額になる点は変わらず、やはり計画的に教育資金を用意する必要があることがわかります。

以下、それぞれの時期で教育費を考える注意点についてコメントします。

●幼稚園の時期に教育費を考えるポイント

今後の教育費に比べれば比較的金額は小額なので、今後に備えて貯めどきのタイミングです。後述する通り、中高生の時期は住宅ローンなど他の支出もかさむ時期で教育費を貯めにくい傾向にあります。ですので、その前に先行して貯めていくことが重要です。

なお、上記統計データは、幼児教育無償化の実施前のものなので、実際にはもっと小額で済むケースが多くなると考えられます。ただ、認可外保育施設や幼稚園の預かり保育は利用料全額が無償になるわけではないので、金額は一定の目安として考えておいた方がよいでしょう。

●小学校の時期に教育費を考えるポイント

公立の場合、まだ小額なので幼稚園と同じく貯めどきです。

ただ、私立に入学する場合は非常に高額になるので、事前に計画的に資金計画を立てることが必要です。

●中学校の時期に教育費を考えるポイント

公立の場合でも、やや費用負担が増します。ライフプランによっては住宅ローン返済とも重なってくるので、他の支出とのバランスも注意が時期でもあります。

私立の場合、高額な学費に加えて部活動の費用も注意です。スポーツに力を入れている学校だと、部活動によってはユニフォーム、練習道具、遠征費等で想定外の出費がかかるケースがあります。

なお、中学3年生は高校受験に備えて塾通いなど学習費がかさみがちなので、その費用も気にかけた方がいいでしょう。

●高校の時期に教育費を考えるポイント

私立も公立との金額差が他の時期に比べ小さいので、私立への進学も比較的しやすい時期です。そして、一番教育費のかかる大学進学が数年後に控えているため、進学プランによって今後どれくらい費用がかかるか、念入りなシミュレーションが必要な時期でもあります。

大学進学を目指す場合、資金を事前にどれくらい用意できるか確認する必要があります。文系理系などによって費用負担も変わってくるので、そこも注意が必要です(上記データは文理平均)。また、お子さんが下宿する場合は上記データからさらに費用がかかるため、そこも事前に確認しておいた方がいいでしょう。

もし金額が不足する場合は、奨学金等の利用を検討する必要があります。奨学金は高校3年生春から申し込み手続きが始まりますので、その前までにお子さんの進学予定を話し合うことも大事です。なお、低所得者の方でも、高等教育無償化により以前より助成を受けやすくなっていますので、あきらめずにぜひチェックしていただきたいです。

●大学の時期に教育費を考えるポイント

大学は最も教育費がかかるタイミングです。この時期からお金を貯めるのは現実的ではなく、奨学金等の活用を検討することになります(入学後も様々な助成制度があります)。

教育費は大学卒業までの費用を考えるのが一般的ですが、特にお子さんが理系に進学した場合、大学院まで進学する可能性も気にかけておく必要があります。在学中にお子さんと話し合い、追加の支出が発生しないか事前に確認もしておきましょう。

■教育費の目標金額はいくら?

お子さんの教育費は、私立大学への進学にも備え、大学進学前に400万円用意できれば安心です。もちろん、お子さんの進学プランによって金額はまちまちなので、最終的にはそのプランに応じて考えていく必要があります。

ただお子さんが小さく進学プランが定まらない状況で教育費を貯め始めていかなければならないのも事実ですので、金額が定まらない時点では、いったん400万円を目安に考えるとよいでしょう。

この点、お子さんが生まれてから15歳まで受給できる児童手当を全て貯金に回せば、その半分の200万円を貯めることができますので、自力で実際に用意できればいいのはもう200万円です。

■教育費の貯め方は?

教育費を貯める方法は主に以下の3点です。

●学資保険

以前から一般的だったのが学資保険です。ただ現在は、学資保険に入っても掛金総額と比較して満期保険金は多くありません。途中解約した場合に元本割れしてしまうことを考えれば、現在はあまりおすすめできないのが実情です。

ただし、決まった時期に決まった金額を受け取ることができる点はメリットです。計画的な貯金が苦手な方にとっては、強制的な貯金として学資保険に加入する余地はあります。

●資産運用

お子さんがまだ小さいときであれば、資産運用で教育費を貯める方法もあります。

一方で、高校入学以降など資産運用できる期間が短い場合は、運用期間が短い分、運用してもそこまで増えることは期待しにくいです。この場合、むしろ元本割れのおそれもありますので、あまり有力な方法ではありません。

また教育費をたくさん増やそうとしてハイリスクな投資に手を出すと失敗したときにダメージが大きいので、リスクとリターンのバランスを考えて資産運用していくことも重要です。

●貯金

教育費を貯める一番有力な方法は貯金です。計画的に貯めていくことで着実に資金を貯めていくことができますし、何かあった際にすぐに引き出すこともできる点もメリットがあります。

貯金は生活費が余った分を貯金に回すのではなく、お給料が銀行に振り込まれたら最初に貯金額を差し引き、余りで生活費に回すと先取り貯金の実践がおすすめです。

■奨学金・ローンは最後の手段

どうしても教育費が十分に用意できなかった場合は奨学金やローンの活用を検討することになりますが、これはあくまで最後の手段で最初から期待するのはおすすめできません。

もし利用する場合は、給付型奨学金→貸与型奨学金→国の教育ローン→民間の教育ローンという流れで返済負担が小さいものから検討していく手順も大事です。

ただ、奨学金の貸与型の場合、お子さん自身が借金をすることになりますので、卒業後の社会人生活にも影響も考えた上で利用を検討することも大事です。

お子さんの教育費はできるだけ早めに準備を始めた方がいろんな用意を仕方ができますし、精神的にもゆとりをもって対応できます。上記の情報も参考にぜひ教育費の設計を考えてみてください。

【引用】
文部科学省ホームページ 平成30年度子供の学習費調査
文部科学省ホームページ 国立大学等の授業料その他の費用に関する省令
文部科学省ホームページ 私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査結果について