目の離せない挑戦争いと残留争い

渡辺明王将への挑戦権を争う第71期ALSOK杯王将戦(主催:毎日新聞社・スポーツニッポン新聞社)の挑戦者決定リーグは、11月5日に豊島将之竜王―藤井聡太三冠戦と、広瀬章人八段―糸谷哲郎八段戦が行われています。先後は事前に決まっており、それぞれ藤井三冠と広瀬八段の先手番です。

■藤井三冠はただ一人の無敗

ここまでリーグ戦績は豊島竜王が2勝2敗、藤井三冠が2勝0敗です。また広瀬八段は1勝3敗で、糸谷八段は0勝3敗です。藤井三冠はリーグの中でただ一人負けなしです。スケジュールの都合上、他の棋士と比べると進行は遅いですが、残り全部勝てば文句なしでの挑戦ですし、また仮に1敗を喫してもそこで踏みとどまればプレーオフ以上は確実です。2勝2敗の豊島竜王は挑戦とリーグ陥落のどちらも可能性が残っています。まずは競争相手を直接たたいて残留を確定させつつ、更なる上を目指したいところでしょう。

すでに3敗目を喫してリーグの勝ち越しがなくなった広瀬八段と糸谷八段は、挑戦こそ消滅していますが、残りを全て勝って指し分けに持ち込めばリーグ残留の可能性はあります。こちらも負けられない直接対決です。

■豊島―藤井戦は相掛かりに

王位戦・叡王戦・竜王戦と連続してタイトル戦を争っている豊島竜王と藤井三冠が王将リーグでも相まみえました。これまで藤井三冠の11勝9敗で、直近は藤井三冠が5連勝中。現在行われている竜王戦七番勝負でも挑戦者の藤井三冠が3勝0敗と追い込んでいますが、前期王将リーグでは豊島竜王が勝っています。その再現を目指して逆転挑戦の弾みとしたいところでしょう。

直前の竜王戦第3局では先手の藤井三冠が角換わりを選択、それ以前は先後問わずに相掛かりが6局続いていました。さらにその前は角換わりが5局続いていました。このように豊島―藤井戦は同じ戦型を何局か続けることが多いため、本局で藤井三冠がどの戦型を選択するかによって、今後の両者の対戦の潮流が左右されそうです。

注目された藤井三冠の戦型選択は相掛かり。竜王戦第3局で見せた角換わりはいったん1局限りで、再び相掛かりに戻したということになりました。

■広瀬―糸谷戦は糸谷八段の雁木模様に

広瀬―糸谷戦はこれまで広瀬八段の13勝5敗。直近は広瀬八段が3連勝中ですが、その前の2局が前期の棋王戦挑戦者決定戦という大きな勝負で、こちらは糸谷八段が連勝して挑戦権をつかみました。王将リーグでは1勝1敗で、本局は第69期以来、2期ぶりの対戦となります。糸谷八段の後手番というと一手損角換わりが有名ですが、10月29日に指されたばかりのA級順位戦、▲広瀬―△糸谷戦では角換わりになっておらず、変則的な矢倉模様ともいうべき力戦に進みました。

本局も糸谷八段が早々に角道を止め、雁木模様のスタートとなっています。

将棋界で最も厳しいともいわれる戦場で、トップ棋士がどのような熱戦を見せるか、目が離せません。

相崎修司(将棋情報局)

対局開始前に駒を並べる藤井三冠(左)と豊島竜王(提供:日本将棋連盟)
対局開始前に駒を並べる藤井三冠(左)と豊島竜王(提供:日本将棋連盟)