東武鉄道は15日、「SL大樹」「SL大樹 ふたら」に導入する12系展望車の車両撮影会を実施した。JR四国で活躍した12系客車2両を大規模リニューアルし、開放型展望デッキを新設したほか、グループやファミリーでの利用に適したボックスシートや大型テーブルも車内に設置。11月4日以降、順次導入予定とされている。
東武鉄道のSL列車は現在、14系客車を使用して運転されるが、窓を開閉できないこともあり、利用者から「SLが牽引していることを感じたい」「SLが吐き出す煙や、石炭が燃えた匂いも感じたい」「SLのドラフト音が聞きたい」「客車もSLと同時代(昭和20~30年代)の仕様にしてほしい」などの要望が寄せられていたという。
新たに導入される12系展望車は、JR四国で活躍した12系客車2両(「オロ12-5」「オロ12-10」)を大規模リニューアル。総合車両製作所、日本電装、札幌交通機械が改造を手がけ、「オロ12-5」はぶどう色の「オハテ12-1」、「オロ12-10」は青色の「オハテ12-2」となった。利用者からの要望を参考に、SL列車が活躍した昭和20~30年代の客車をモチーフとしてデザイン選定が行われた。
「オハテ12-1」は旧国鉄塗装色ぶどう色2号をベースに、昭和20~30年代の3等車をほうふつとさせる赤帯をアクセントに加え、窓枠を茶色に塗装することで、旧型客車をイメージさせるデザインに。「オハテ12-2」は旧国鉄塗装色青15号をベースに、急行グリーン車をほうふつとさせる緑帯をアクセントに加え、窓枠を灰色とすることで、旧国鉄10系軽量客車をイメージさせ、「オハテ12-1」との対比も楽しめるデザインとしている。2両とも車体側面に真鍮製の「大樹」エンブレム(800mm×1,400mm)を配置した。
12系展望車の座席数は64席。車内のデザインは2両ともほぼ共通しており、現在の安全基準に適合した素材を使用しつつ、昭和レトロを感じさせるデザインを採用している。座席は旧型客車をイメージした4人掛けのボックスシート(固定式。座席の回転は不可)で、大型テーブルも用意。安全性や使い勝手の良さを考慮し、ボックスシートの背摺り肩部に手すり、大型テーブルにバッグ等を掛けられる丸形フックを取り付けた。側窓は開閉可能となり、室内灯はLED化された。
車端部に新設された開放型展望デッキは、SL列車の煙や石炭の燃える匂い、風など感じられる仕様とした上で、柵を高くし、スタンションポールを設置するなど、安全面にも配慮している。自由に利用可能なベンチとヒップレストを設け、ベンチの一部はこども用として座面高さを抑えたつくりに。照明器具は下今市駅を模したレトロ調の壁灯を採用した。車内ではその他、アテンダントカウンターやパンフレット台、テレビモニターを備えたギャラリースペースも新設された。
展望デッキ下部にメロディーフォンを搭載したことも特徴のひとつ。おもに沿線のおもてなしに対する感謝の気持ちを音楽で伝えるコミュニケーションツールとして使用され、栃木県出身のエレクトーン奏者で、とちぎ未来大使も務める倉沢大樹氏が作曲したメロディ音源2曲(テーマは「SLが力強く走る様子」と「沿線から手を振ってくださる方へ」)を使用する。走行中、SL観光アテンダントの操作で随時放送するとのこと。アテンダントが使用するマイクはワイヤレス化された。
12系展望車2両の導入日は、「オハテ12-1」(ぶどう色)が11月4日、「オハテ12-2」(青色)が11月13日の予定。現行と同じ座席指定料金(下今市~鬼怒川温泉間は大人760円・小児380円)で乗車可能。12系展望車の導入により、東武鉄道のSL列車は14系・12系客車の混成編成となるが、ぶどう色客車編成・青色客車編成での運転(展望車は客車編成の中間車両として連結)とするなど、できる限り外観の一体化を図るとのこと。車内については既存の「ドリームカー」をはじめ、コンセプトの異なるバラエティ豊かな車両の組み合わせにより、これまで以上に多様な選択肢を提供するとしている。
なお、12系展望車の導入に先立ち、東武トップツアーズが企画・実施する「DL大樹展望車お披露目ツアー」が10月17・30日に行われる。両日ともディーゼル機関車が客車4両(展望車は2・3号車)を牽引し、南栗橋駅から鬼怒川温泉駅まで走行する予定。途中の下今市駅で入換作業などの撮影も楽しめる。往路の浅草駅から南栗橋駅まで、復路の浅草駅まで350型に乗車して移動するとのこと。その他、11月1~30日に「12系展望車就役 記念乗車券」の発売も予定されている。