――時代の変化がクイズ番組に反映されていることはありますか?

日高:『Qさま!!』(テレビ朝日)でらせん階段が久しぶりに復活して、「下克上チャンス」っていう上位3人から三村(マサカズ)さんのクジ引きで1人がターゲットになって、その1人対下位3人が4人で早押しをやって、下位が勝てば入れ替わるっていうシステムがあるんですけど、今までコツコツ頑張って正解を重ねて上位にいる人が、運によって下に落ちなきゃいけないっていう理不尽が、令和の時代にはもう合わないじゃないかという話があるんです。いわゆる“どんでん返し”と言われていたものですよね。

木月:一方で、王東順さん(※)にいろいろ聞いたときは、“理不尽”の魅力を教えられましたけどね。『なるほど!ザ・ワールド』は、強い人が上の席にいて、上から答えていくじゃないですか。平等にするなら逆に下から答えていくはずなんだけど、あれはわざとそうしてたんだと。『年の差なんて』も、優勝チームが最後にボードを選ぶ賞品チャンスで「●●さんと」「ハワイへ」……「電話をかける」ってどんでん返しだったし。出演者の熱量を引き出せて、とても良い仕組みだと思うんですが。

(※)…『クイズドレミファドン!』『なるほど!ザ・ワールド』『クイズ!年の差なんて』などを手がけたプロデューサー

日高:点数を取ったらちゃんとその分だけ有利にならないと、クイズとしてどうなんだと思われるんです。放送中のTwitterとかを見ていると、そういうルールに対して「ここでこれが落ちるのが理解できない」とか「このコーナー嫌いなんだよなあ」というのを、やっぱり目にしますよね。

――前回テーマになった『アタック25』(ABCテレビ)でも正解数よりもパネルの枚数で優勝することにアンフェアだと思う人がいるという話がありましたが、「アタックチャンス」も理不尽と捉えられていた部分はあったのでしょうか?

日高:う~ん、あれはパネルを自分で指定して、その後もう1問取らなきゃいけない形なので、全員にチャンスが2回あるということで、公平と捉えられていたと思います。自分で守り切ることももちろんできますし。

  • 『アタック25』最終回に出場した日高氏=本人提供

■「厳正にやっている」ことが求められる時代に

矢野:『(くりぃむクイズ)ミラクル9』(テレビ朝日)は、最後のクイズで、逆転の目はあるけど作為的に思われないようにするルール作りをすごく気をつけていますね。例えば、近似値クイズで答えが近いトップ3に点数が入るという形。1番近い人に30点、2位に20点、3位に10点と振ると、そのトップ3をチームで独占できたら一気に60点入って頑張れば逆転できるけど、なかなか至難の業なので、結果として両チーム均等に入る。運で左右されたり、理不尽なルールにすることは、絶対にしないですね。

木月:「最終問題は1,000点!」みたいなのは、もうないですよね。

矢野:テレビのお約束みたいなのは、ないですね。それはバラエティ全体も含めて。だから、正解した後に「さあ、今のは何点だったでしょう!」って発表するのも最近はなくなりましたよね。それで高得点が出て逆転となったときに、今の視聴者は「えー、後から点数つけたんじゃないの?」と思ってしまったりするので。

日高:それを象徴する場面が『ザ・タイムショック』(テレビ朝日)であったんですよ。最初に番号から出題ジャンルを選ぶとき、「3番お願いします」って言うと、必ず中山秀征さんがタブレットで3番をタップして、ジャンルが出てくるショットがインサートされるんです。これも、「ちゃんと厳正にやってますからね」っていう裏返しじゃないですか。それを初めて見たとき、「こういうのを入れなきゃいけない時代になったんだあ」と思いましたね。

木月:『今夜はナゾトレ』は年間で何勝したかを争う形にして、皆さんが本気で競い合ってるんですよ。あれになってから熱量がより出てきていい感じになってるんですけど、それに合わせて配点のレートを変えたんです。前は下が10点で上が150点と15倍の差があったんですけど、今は30点から150点で5倍にしたので接戦になり、全くスタジオの熱量が変わりましたよね。

  • 『ザ・タイムショック』

  • 『今夜はナゾトレ』(C)フジテレビ

次回予告…~クイズ作家編~<4> 『オールスター感謝祭』“背骨”になるクイズ×イベントのバランス

●矢野了平
1977年生まれ、埼玉県出身。高校時代からクイズ番組で活躍、東洋大学在学中からクイズ作家の仕事を手がけ、01年にプロの放送作家としてデビュー。現在の主な担当番組は『くりぃむクイズ ミラクル9』『マツコ有吉かりそめ天国』『有吉クイズ』(テレビ朝日)、『水曜日のダウンタウン』『オオカミ少年』『オールスター感謝祭』『クイズ☆正解は一年後』『佐藤健&千鳥ノブよ!この謎を解いてみろ』(TBS)、『潜在能力テスト』『今夜はナゾトレ』『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』(フジテレビ)、『天才てれびくんhello』(NHK)など。

●日高大介
1977年宮崎県生まれ、静岡県育ち。高校時代からクイズ番組で活躍し、慶應義塾大学在学中からクイズ作家の仕事を手がける。06年に『クイズ!ヘキサゴンII』(フジテレビ)でプロの放送作家として活動を開始する一方、『お願い!ランキング』『キス濱テレビ』『真夜中のプリンス』(テレビ朝日)、『笑っていいとも!』(フジテレビ)、『行列のできる法律相談所』(日本テレビ)、『勇者ああああ』(テレビ東京)などに出演。現在の主な担当番組は『全国高等学校クイズ選手権』(日本テレビ)、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日)、『超逆境クイズバトル!!99人の壁』(フジテレビ)など。

●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『千鳥の対決旅』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』などを手がける。クイズ番組は、現在放送中の『今夜はナゾトレ』のほか、『タモリのジャポニカロゴス』『全国一斉!日本人テスト』『優しい人なら解ける クイズやさしいね』などを担当。