――主人公・陣内は獄中生活で日記を書き続けていて、出所後はブログを書き始めます。陣内にとって「書くこと」は特別なことですが、北村さんご自身もブログを15年ほど続けていて今年は「LINE BLOG 6月の月間MVP」も受賞されました。北村さんはどんな思いでブログを書いていますか。

北村:ブログを始めたのは俳優活動の宣伝のためでした。「出演舞台のチケットが発売します」、「初日の幕が上がります」、「無事千秋楽を迎えます」、「ありがとうございました」とか。でも書いているうちにだんだん日々の思いを綴る日記のようになってきて、そのうち僕に家族ができたことでブログの持つ意味がまったく変わりました。もし僕が早くに亡くなってしまって、子どもが「お父さんはどういう人だったのだろう」と知りたくなったときに、読まれても恥ずかしくないことを書こうと。今は「子どもがいつか読み返す日が来るかもしれない」という思いで書いています。書きたいことが書きにくくなっている現代ですが、なるべく今思ったことを残していこうと思っています。

――今回板尾さんが演じるのは神出鬼没の「夜勤部長」で、北村さん演じる主人公の陣内にしか見えないという特殊な役どころですが、どんな印象を持ちましたか。

板尾:主人公の妄想という役どころなので、他のキャストさん・登場人物とは絡みがない。それでいてほとんどのシーンにひょっこりと登場するので、僕もいわば主演です(笑)。

――板尾さんはそんな北村さんとのやりとりを「漫才をしているよう」とコメントされていましたが、そのテンポ感を作る工夫やお話し合いはされたのでしょうか。

板尾:「妄想のキャラクターに話しかける」ということ自体がファンタジーなので、“正しい”距離や間は存在しない。だから特に「ああしようこうしよう」という話はしなかったですね。

北村:そのファンタジーな設定を活かした、どこから出てくるのか分からない神出鬼没なところが楽しかった。陣内も最初は驚きますが、次第に慣れて来て自然な対応になっていく。

板尾:撮影が進むにつれ、演じる側も慣れていくところがリアルに出たと思います。登場シーンは、「こんなところから出てくるのか」「ここから出てこないのかい!」と一緒に楽しんで頂ければと思います。

■北村有起哉(きたむらゆきや)
1974年4月29日生まれ、東京都出身。1998年に舞台『春のめざめ』、映画『カンゾー先生』でデビュー。舞台『CLEANSKINS/きれいな肌』(07年)で朝日舞台芸術賞寺山修司賞、読売演劇大賞優秀男優賞、ドラマ『トッカン 特別国税徴収官』(12年)でザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。2016年『太陽の蓋』で映画初主演を果たす。近年のドラマに『美食探偵 明智五郎』(20年)、『半径5メートル』(21年)、映画に『新聞記者』(19年)、『浅田家!』(20年)、『ヤクザと家族 The Family』『すばらしき世界』(21年)、舞台に『唐版 風の又三郎』(19年)、『願いがかなうぐつぐつカクテル』(20年)など。
■板尾創路(いたおいつじ)
1963年7月18日生まれ、大阪府出身。1987年にNSC4期生で同期のほんこんとお笑いコンビ・130Rを結成し、1989年『第10回ABCお笑い新人グランプリ』諸芸部門 優秀新人賞を受賞。1991年より『ダウンタウンのごっつええ感じ』にレギュラー出演し、全国的にブレイクする。以降『板尾ロマン』など冠番組をはじめとするバラエティ番組に出演する一方、俳優として数多くの作品に出演。近年のドラマに『監察医 朝顔』(19年-)、『いだてん〜東京オリムピック噺〜』『全裸監督』(19年)、『おちょやん』(20年)、『黒鳥の湖』(21年)、映画に『おいしい家族』『決算! 忠臣蔵』(19年)、『ファーストラヴ』(21年)など。ピース・又吉直樹のデビュー作で第153回芥川賞を受賞した『火花』映画化の際には、監督と脚本を務めた。
■ドラマ『ムショぼけ』
ABCテレビ10月3日開始(毎週日曜23:55~)、tvk10月5日開始(毎週火曜23:00~)
映画『ヤクザと家族 The Family』(21年)で所作指導を務めた小説家・沖田臥竜氏の自伝的体験をベースにした小説を実写ドラマ化。映画『新聞記者』(19年)で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞後、『ヤクザと家族The Family』など数々の話題作で脚光を浴びる気鋭の若手映画監督・藤井道人氏が企画プロデュースを務める。長年の刑務所暮らしを経ての出所後、世の中の変化やスピードについていけない“ムショぼけ”状態にある元ヤクザ・陣内宗介を描くハートウォーミングな任侠コメディ。