• 『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』(9月25日19:00~「アニメ知識王決定戦」) (C)フジテレビ

矢野:『99人の壁』に関しては作り手の立場ですが、視聴率が悪かったとか、番組が不評だから終わるというわけではなくて、レギュラーでなくなるだけですからね。

日高:僕もレギュラー化以降、矢野と一緒にやらせていただいているので、同感です。視聴率が悪くて終わるんだったら、叙々苑弁当とかローストビーフ弁当が連発する現場になるわけがないので。矢野は「今一番、テレビ業界でお弁当がおいしい番組」って言ってますし(笑)。そういう側面からも、波に乗ってる番組だなと感じ取ったりするので、放送のペースも、これまでとそんなに変わらないんじゃないかなと思っています。僕、全部の問題監修してるんで、パソコンに全部問題が入ってるんですよ。思い入れのあるジャンルもめちゃめちゃありますし、また100人集まってやるクラシカルなパターンも、特番ではやりたいですね。

矢野:僕的に『99人の壁』は、ルールとかシステムうんぬんじゃなくて、出題方法をいろいろ発明できる番組だと思うんです。「こんな出し方があったんだ!」みたいなことは、他の番組ではないところなので、特番になってからもそこは探求していきたいと思ってますね。

日高:矢野と演出の千葉(悠矢)さんで会議をやるんですけど、コロナの前の対面の時はじゃれ合いながらクイズ作ってて、「冗談のように言ったことが実はクイズになるんだ!」っていうことが結構あったりしたから、僕の中で最近では結構自信がついた番組なんですよ。中でも会心の一問は、ジャンル「石川さゆり」っていうのがあって、石川さゆりさんって『紅白歌合戦』で「天城越え」と「津軽海峡・冬景色」を交互に隔年で歌うんですね。その中で「近年、『天城越え』と『津軽海峡・冬景色』以外で歌った曲はなんでしょう?」という早押し問題がベースにあったんですけど、それを年表があって縦にスクロールしていって、津軽、天城、津軽、天城…って続く中で、2006年に「?」があって曲名を答える問題にしたんです。正解は「夫婦善哉」なんですけど、その画面のスピードの気持ち悪さがちょうど良くて、(佐藤)二朗さんが「モニター壊れたかと思った!」と言ってバーンと笑いが起きたときに、1つの達成感がありました。「こういうのできないですかね?」みたいな発想ができたのも、あの番組だからだと思うんですよね。

■「早押しクイズ、視聴率とりにくい説」

木月:先ほど日高さんからあった早押しクイズの話ですが、「早押しクイズ、視聴率とりにくい説」ってのが最近矢野さんと話しているテーマの一つでして。テレビ番組としては、解答者が押しちゃうと、視聴者が考えられないうちに答えられちゃうんですよ。それだとストレスに感じて、もうちょっと考えさせてほしいという気持ちになるんではないかと。

日高:テレビのクイズ番組というのは、やっぱり解くために見てるんですよね。主にゴールデンの番組は、いかに視聴者がストレスなく一緒に考えられるかどうかを計算してお届けされているんです。一方で、いわゆるクラシックな『アタック25』は、読んでる問題文が途中でストップしてしまうので、その先を読むという楽しさもあるのかもしれないですけどね。

矢野:今のゴールデンのクイズ番組にも早押しは全然残ってるんですけど、それは2つの目的に行き着いてるんです。1つは、タレントさんが答えを分かると押すんだけど、それは視聴者も同じくらいの時間で一緒に考えられるレベルの出題になっている。もう1つは、東大王みたいな人に「何でこんな早く押せるの!?」って驚く“びっくり人間ショー”。この両極になっていて、『アタック25』はその中間にいる難しさがあるんですよね。

――『99人の壁』が初期の頃、わりと早押しクイズ中心だったのが、ビジュアルを見せて交互に解答し合うみたいなクイズを盛り込んでいったのは、そうした背景があったのですか?

矢野:そうですね。『99人の壁』は後半に早押しが待ってるんですけど、それは100万円が懸かった勝負なので、そこの段階だと戦いとして見れるということなんです。

木月:結局、何を見せるかが大事なんですよね。早押しクイズはやってるほうは楽しいけど、見てる側も楽しくなれるようにしないといけないんです。

矢野:そういう早押しクイズが今求められているというのを考えると、『アタック25』は46年守り続けたオールドスタイルなので、それが大好きな人は楽しいけど、ご新規様、特に若い人や今のゴールデンのクイズ番組に慣れている人には、ちょっとついていきづらいところがあったのかなと。『アタック25』は、かたくなに問題文のテロップも出さないですからね。そこは良き伝統ではあるんですが。

日高:ある種の職人肌みたいなものを感じますね。伝統とプライドのような。20世紀の早押しクイズというのは、『ウルトラクイズ』にしても他の番組にしても、問題の先読みをするというよりは、正解が分かったらボタンを押してその知識について答えるというのが大原則だったと思うんです。ただ、今世紀に入ってあまりにも答える側の技術が明らかにアップしたんですよ。クイズ番組が研究し尽くされてしまって、「このフレーズが来たら、答えはこれだ」という感じで百人一首になってしまったんです。もちろん、僕とか矢野もクイズを研究した側ではあったかもしれないですね。『アタック25』もクイズプレイヤーが全然出られなかった時期もあったように記憶しています。

■クイズマニアvs番組制作者の戦い

矢野:そういえば、『クイズグランプリ』(フジテレビ)って、誰かがボタンを押そうが最後まで問題を読み切ってたんで、そのルールを逆手に取って問題が出た瞬間に早押しボタンを押して、問題を全部聞いてから答える人が横行したから、番組が終わってしまったそうなんですよ。

日高:最初はみんなフェアプレーでやっていくけど、必勝法を逆手に取ってしまったんですね。

木月:マニアがジャンルを潰すというよくある例ですね。そこを、制作者側がどう対応していくかというところの繰り返しですね。

矢野:『高校生クイズ』が、時期によって「知の甲子園」と言って超ハイレベルなクイズバトルのときもあれば、『ウルトラクイズ』みたいにアドベンチャーにすることもあれば、今は「地頭力」というふうにテーマが変わっていきますけど、それはその時代の高校生に合わせているのと同時に、高校生対策という部分もあるんですよね。

日高:「『高校生クイズ』ならこう出してくるだろう」と予想されるので、クイズの組み方を裏切るんですよね。

矢野:「知の甲子園」は5年やったんですけど、後半の3年は開成高校が3連覇したんです。それで、もう違うテーマに行こうという感じでしたね。