木月:この2人は関係性が面白いんですよ。『プロフェッショナル』で、学生時代からお知り合いで、切磋琢磨してきて今があるんだと知って。

矢野:最初に出会ったのは、高校3年生のときですね。大学に入ってからガッツリと付き合うようになって、それから関係性はずっと変わらないんです(笑)

日高:それぞれ違うクイズサークルに入ってたんですけど、“テレビクイズ”のあの雰囲気が好きということで意気投合したのが僕と矢野だったんですよ。

木月:そこから、どうやってテレビ業界に入ることになるんですか?

矢野:大学のクイズ研究会にいると、クイズ番組の問題を作るアルバイトがあるんですよ。『高校生クイズ』(日本テレビ)の問題とかやってて、その流れで「大学卒業したらおいで」って声をかけられて、そのまま作家になったのが僕です。そこで、「CAMEYO」という事務所に入りました。

木月:CAMEYOさんは、クイズ作家さんの事務所だったんですか?

矢野:構成作家事務所なんですけど、立ち上げのメンバーが『アメリカ横断ウルトラクイズ』とか『高校生クイズ』とか日テレの特番を作った人たちなので、毎年『高校生クイズ』の構成とクイズ制作を一手に引き受けていたんです。でも、クイズマニアで入ったのは、僕が初めてでしたね。

木月:「クイズ作家」というジャンルは、最近特に多く言われるようになった気がします。

日高:でも、我々より上の世代の先輩の後を受け継がせていただいてるという意識ですね。

矢野:一番最初は、今『脳ベルSHOW』(BSフジ)とか『Qさま!!』(テレビ朝日)をやってる道蔦岳史さんがいらっしゃって、もともとクイズプレーヤーとして活躍されていたんですが、『ギミア・ぶれいく』(TBS)の『史上最強のクイズ王決定戦』で作り手に回ったのが、クイズマニアが問題を作るようになったきっかけですね。それが平成元年。その後に、田中健一さんとか長戸勇人さんがプレイヤーから作問のプロになっていき、その次の世代が僕らです。

日高:矢野はCAMEYOに2001年に入るんですけど、そのとき「俺、この道をプロでやっていくことになったんだけど、日高はどうする?」と言われて、僕は「うーん、怖いからやめとく」って言ったんです(笑)。その頃は塾の先生と家庭教師のほか、CAMEYOの方から「『全員正解あたりまえクイズ』(TBS)の問題まとめて作ってくれない?」みたいな仕事も、アルバイトでちょこちょこやってたんですけど、2006年に「クイズを量産する人間として来てほしい」と言われて、正式に『クイズ!ヘキサゴンII』(フジテレビ)から作家として入りました。だから、矢野とは同い年なんですけど、5年後輩なんです。

■息抜きに「謎解き」「東大入試問題」

木月:僕、クイズ作家という仕事は、日本で一番幸せな職業だと思ってるんです。だって、大好きなことで飯が食えて、趣味もクイズなんですよ。『久保みねヒャダ』に出てもらったとき、楽屋裏で2人がずっとクイズを出し合って楽しんでるのを見て、衝撃を受けましたから(笑)

矢野:あの時はたしか『古畑任三郎』のカルトクイズを出し合ってましたね(笑)。日高と時間があると、「昔のクイズ番組でこんな珍解答があった」みたいなことをクイズにして出し合ったりとか、そんなマニア同士の遊びをやってます。

木月:あれを見て思いましたよ。趣味であり、日常の楽しみであり、そしてそれをやればやるほど仕事にもなるなんて、「何だこの幸せな職業は!」と。

矢野:僕も、パソコンに向かって仕事としてクイズを作っていて、「はぁ疲れた」と息抜きに謎解きをしていると、「俺は何をしてるんだ」って思います(笑)

日高:でも、クイズを作るってなると、やっぱりしんどい作業なんですよ。責任を持ってクイズを作らなきゃいけないとなったときに、趣味が1個減ったなって思いましたもん。

木月:日高さん、趣味多いですもんね。『M-1』の点数つけてたり、あと今、東大受験の勉強してますよね?

日高:何で知ってるんですか(笑)。受験するかどうかは別ですよ。矢野は仕事で疲れたときに謎解きやってると言ってましたけど、僕は微分積分の問題を解いてたりすると心が安らぐんです。

――大豆田とわ子じゃないですか(笑)

日高:たしかに(笑)。でも、東大の入試問題はとにかく良問なんですよ。木月さんはご出身だからお分かりになると思うんですけど、東大の問題って美しいじゃないですか。些末なところだけを取るんじゃなくて、ポイントとポイントを論理でつなげるようなクイズ、いや問題を出してくるので、眺めてるだけでも面白いんですよ。日本史とか世界史とか地理とか、暗記科目なのにちゃんと論理というか、本質が分かっているかどうかを試す問題文の要求になっていて、「図から読み取れることを●●という言葉を使って5行以内で記せ」とか、結構クイズに役立ったりするんですよね。

木月:こうやって趣味が仕事に再生産されるサイクルが、一番純粋に行われるのがクイズ作家という方々なんですよ。東大の問題は、知識だけじゃなくて思考力を問われるんですよね。謎解きとも似ています。その着想から始めたのが『今夜はナゾトレ』の「東大ナゾトレ」ですから。

日高:だから、息抜きとして矢野が謎解きをやっているのと、僕が東大の問題を解いているというのは、そんなにベクトルが違わないんじゃないかなと思ったりします。