メルセデス・ベンツがクルマの電動化を加速させている。ドイツで開催された国際的な自動車ショー「IAA MOBILITY」で発表した10台の新型車のうち、実に7台が電気自動車(EV)という徹底ぶりだ。あの本格オフローダー「Gクラス」のEVコンセプトも発表となった。

  • メルセデス・ベンツの「コンセプトEQG」

    「Gクラス」がEVに?

どこから見ても「Gクラス」

メルセデスが発表した7台のEVとは、「EQB 350 4MATIC」「EQE 350」「Mercedes-AMG EQS 53 4MATIC+」「Concept Mercedes-Maybach EQS」「Concept Mercedes-Benz EQG」「Concept EQT」「smart Concept #1」である。

その中でも注目は、メルセデスのSUVラインアップの中でトップに君臨する「Gクラス」のEV「コンセプトEQG」だろう。実用的なオフロードの象徴であるGクラスのEVが、ほぼ完成に近い形のコンセプトカーとして登場した。

  • メルセデス・ベンツの「コンセプトEQG」
  • メルセデス・ベンツの「コンセプトEQG」
  • 「Gクラス」特有の印象的な外観に、メルセデスのオールエレクトリックモデル「EQシリーズ」の特徴となる要素を組み合わせたデザインの「コンセプトEQG」。「4x4の性能は電動モビリティの時代にもいかされるだけでなく、いくつかの分野ではさらに発展する」とのコメントからは、悪路走破性に対する自信のほども伝わってくる

ひと目でGクラスとわかる伝統的なデザインを踏襲したコンセプトEQG。量産型に近いこのモデルは、Gクラスの象徴的な角ばったシルエットを採用している。フロントビューは典型的な丸型ヘッドライトのおかげで見慣れた顔になっているが、従来のエンジンモデルのようなラジエターグリルではなく、深みのあるブラックのフロントカバーを配置してあるところが斬新だ。3D効果のある星のイルミネーションが、ブラックのカバーのアクセントになっている。その周りには、メルセデスがEQモデルでよく使っている、ブルーを基調とした「丸い四角」のアニメーションパターン(リスクルパターン)があり、視覚的にもほかのEQモデルとのつながりを想起させる。

  • メルセデス・ベンツの「コンセプトEQG」

    ブラックのフロントカバーには星のイルミネーションが浮かび上がる

エクステリアデザインのハイライトは、ハイグロスブラックのフラットなルーフラックだ。そのミニマルなデザインをトップビューで見ると、中心には「G」の文字が。ルーフラックのフロントエッジに組み込まれた白色LEDストリップは、過酷なオフロード走行に欠かせないサーチライトを現代風にアレンジしたものとなっている。ルーフラックのリアエンドには、レッド仕上げのLEDストリップを装着している。

  • メルセデス・ベンツの「コンセプトEQG」

    オフロード走行性能を強調するルーフラックには大きな「G」の文字が!

「G」を名乗る以上、オフローダーとして妥協は許さないとメルセデスは強調する。シャシーは堅牢なラダーフレームをベースとし、フロントアクスルには独立したサスペンション、リアアクスルには電気駆動を組み込むため新たに開発したリジッドアクスルを採用。ホイールに近い位置にある4つの電気モーターを個別に制御することで、オンロードでもオフロードでも「個性的」な走行特性を実現するという。

意外と大きい? 「スマート」のEV

メルセデスが発表したクルマの中で気になったのは、スマートのEVコンセプトである「smart Concept #1」だ。使用シーンを考えると、スマートほどフルEV化するのにふさわしいクルマはない。その生産モデルを示唆しているのが、このsmart Concept #1なのだ。

  • 「スマート」のEVコンセプト「smart Concept #1」
  • 「スマート」のEVコンセプト「smart Concept #1」
  • 「スマート」のEVコンセプト「smart Concept #1」

生産開始が間近に迫るsmart Concept #1のデザインは、メルセデス・ベンツ・デザインのグローバルネットワークで作り上げたとのこと。バランスのとれたプロポーション、力強い面構成、フロントとリアのショートオーバーハングなどが特徴的だ。

中でも目を引くのは、光の輪が印象的な大きなパノラミックガラスルーフ。フロントガラスやフレームレスドアの窓面とシームレスにつながっているため、ルーフがボディから浮いているように見える。一方で、アンスラサイト(無煙炭)とブラックが印象的なボディ下部のデザイン要素はSUVの堅牢性を強調。ユニークなデザインの21インチホイールがアクセントになっている。

  • 「スマート」のEVコンセプト「smart Concept #1」
  • 「スマート」のEVコンセプト「smart Concept #1」
  • 「スマート」のEVコンセプト「smart Concept #1」
  • フロントガラスとシームレスにつながるパノラミックガラスルーフが印象的

特徴的なのは、隠れたドアハンドルだ。smart Concept #1のリアドアは後ろにヒンジがあり、フロントドアとは逆方向に開く。つまり、観音開きだ。このドアにより、クルマへの乗り降りが特に容易になる。Bピラーがないので、ドアを開けたときには広い室内空間を見渡すことが可能だ。

ボディサイズは全長4,290mm、全幅1,910mm、全高1,698mm、ホイールベースは2,750mmと聞くと、スマートという名前から想像するよりは、かなりサイズの大きなクルマだと感じる。特に、全幅はかなりのものだ。

ホイールを車両の四隅に配置したことで、広々とした室内空間を実現したsmart Concept #1。BEV(バッテリーEV)アーキテクチャーを採用しているため、将来の5人乗りの量産モデル同様、4人乗りのコンセプトモデルでも、上位セグメントの車両と同等の足元と肘まわりのスペースを確保している。収納スペースも十分だ。

  • 「スマート」のEVコンセプト「smart Concept #1」

    車内のスペースと荷室の容量は十分に確保してある

紹介した2台は市販を前提とするコンセプトカーなので、誇張している部分はあるとは思うが、ほぼイメージは変わらずに市販化にこぎつけるだろう。オフロード性能を重視したSUVのEQGは、自然の中へ入り込むことが多いことを考えると、フルEVであることのメリットは大きそうだ。Gクラスらしい走破性も期待できるだろう。デザインは「ここまでやるか」というくらいGクラスを意識したものなので、現行Gクラスユーザーがどういう反応を示すか興味がわく。

smart Concept #1はどちらかというと「Aクラス」に近いサイズなので、EQAあたりとどのような差別化を図るかがポイントになるだろう。