女優の宮崎あおいが、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、12日・19日に2週にわたって放送される『人生の終わりの過ごし方 ~「ダメ人間マエダ」の終活~』。末期がんで余命宣告を受けたパチスロライター・マエダさんと仲間たちの終活を追った作品だ。
「最後まで楽しく死にたい」と、どんなに体調がつらくなっても、やりたいことをやり続けるマエダさん、そんな彼を特別扱いせず、いつものように笑いながら付き合う仲間たち、そして息子に先立たれようとしている母親の姿……ナレーション中から収録後にインタビューを受ける間まで、涙が止まらなかった宮崎。番組26年の歴史で最多となる36回のナレーションを経験してきたが、「ちょっと今までとは違いました」と語り始めた――。
(注)…宮崎の「崎」は正しくは「立つ崎」
■「ちょっと経験したことがない時間でした」
今回のナレーション収録を終え、「私は客観的に、でも心は映っている方に寄り添う、今まではそういう気持ちで読んでいましたが、今回は読んでいる途中で自分もマエダさんのお友達になったような感覚になったんです」という宮崎。
「そんな味わったことのない感情の中で、最後は背筋を伸ばして、両手を膝の上に置いているような感じで読んでいました。ちょっと経験したことがない時間でしたね」と振り返る。
マエダさんは、幼稚園からエリート街道を歩むものの、同級生の中でただ一人、大学に進学せず、ギャンブルにのめり込み、トラック運転手やパチスロ店、豆腐店、転売業など職を転々。がんの進行が進み、治療や薬の副作用で体が悲鳴を上げても、酒もタバコをやめない自分を「ダメ人間」と呼んでいるが、そんな彼のもとに仲間たちはどんな状況でも集まってくる。
その様子を見て、「周りに集まっている方たちが本当に楽しそうでしたし、あの方たちに囲まれているマエダさんは幸せだったんだろうなって思いました。本当に、皆さんが中学生みたいで(笑)。男の人って、そういう部分が大人になってもどこかにあって、それがすごく残ってる方たちなのかもしれないですね」と想像。
特に、「お仕事をしてるときの間合いとか、友達と話しているときのツッコミなどが、とても楽しそうだったのが印象に残っています」といい、そんな姿からも、自身もマエダさんの友達になったような感覚に誘われたのかもしれない。
■もし自分の友人が余命宣告されたら…
マエダさんの「最後まで楽しく死にたい」という考え方には、「自分もそうありたいと思います。『あー人生楽しかった』と言って、次の場所に行きたい」と共感。
「最期の日まで楽しく周りの人と笑顔で過ごしたいし、おいしいものを食べたいし、行きたいところに行きたいというのは、きっと誰しもが思うことでしょうけど、実際にそれができるかどうかは、いろんな状況があるから難しいですよね。マエダさんには、それをかなえてあげようと集まってくれる人たちが周りにいたことが、今までの人生での宝だと思うので、それはとても幸せなことだなと思います」と、かけがえのない仲間たちの存在をうらやましがった。
番組内でたびたび登場するマエダさんの食事シーンは、「食べ物がすごくおいしそうに見えました!」という必見の場面だ。
もし、自分の友人が余命宣告されたとしても、「あんなふうに笑いに変えながら最期まで付き合っていくということが、できるのか…。先輩ライターのガル憎さんが『自分の(マエダさんへの)アプローチの仕方が合ってるかどうか分からないけど』とおっしゃっていましたが、本当に答えは出ないものだし…」と悩ましい。
それだけに、一見何も考えずに楽しく接しているように見える仲間たちを「マエダさんと一緒に、すごいものを背負っているように感じました」と思いやった。
●宮崎あおい
1985年生まれ、東京都出身。4歳で子役としてデビュー。その後、『NANA-ナナ-』『少年メリケンサック』『舟を編む』『怒り』などの映画、『純情きらり』『篤姫』『あさが来た』などのドラマに出演。『ザ・ノンフィクション』では番組最多回数のナレーションを担当し、今回の『人生の終わりの過ごし方 ~「ダメ人間マエダ」の終活~』で担当回は38回に達する。