特撮コメディ映画『遊星王子2021』の公開を祝した舞台挨拶が8月28日、東京・渋谷ヒューマントラストシネマにて行われ、主演の日向野祥、ヒロインを務める織田奈那、そして河崎実監督が登壇。昭和30年代のレジェンドヒーローを現代風にリブートした本作の見どころ、楽しみどころを語り合った。

  • 左から、織田奈那、日向野祥、河崎実監督

1958(昭和33年)に日本テレビ系で放送された宣弘社製作の特撮SFドラマ『遊星王子』を、『いかレスラー』『日本以外全部沈没』『アウターマン』『ヅラ刑事』など数多くの特撮コメディ作品を手がけた「日本バカ映画の巨匠」こと河崎実監督が、大胆にもリブートした作品こそが本作『遊星王子2021』である。河崎監督が「映画監督を目指すきっかけになった原点的作品」と語る、円谷プロの『ウルトラマン』(1966年)は、宇宙からやってきたヒーローが地球人を守るため敵(怪獣・宇宙人)と戦うドラマだったが、『遊星王子』はそんな「宇宙人ヒーロー」の偉大なる先駆者といえる。河崎監督は「和製スーパーマン」を目指したというオリジナル『遊星王子』のキャラクターを現代によみがえらせるにあたり、2.5次元舞台で人気を集めたイケメン俳優・日向野祥(ひがの・しょう)を主役に起用。キリリとひきしまった二枚目の日向野が麻宮騎亜デザインの宇宙的コスチュームを身に着けたとき、かつてない「高貴さ」と「親しみやすさ」の両方を備えた、インパクト抜群の宇宙人ヒーローが令和の時代に誕生した。

本作の主人公・遊星王子と人気アイドル歌手・舟木康介の2役を演じた日向野祥は、60年以上も昔に活躍した特撮ヒーローの姿を受け継いだことに対し「出演するにあたり、昔の『遊星王子』を観て勉強させていただきました。その上で河崎監督とは“昔っぽさを出すというよりも、僕らしさを出したい”みたいな話をしましたね。昔のマネではなく、僕なりの遊星王子を演じるようにしました。できあがった映画は、今風でありつつ、昔ながらのヒーローの良さも出せているんじゃないかと思います」と、よく通る魅力的な低音ボイスで完成作品の手ごたえを語った。

どんなシーンを特に観てほしい? というMCからの質問には「君子の弟・まことと遊星王子がキャッチボールをしているシーン」と答え「このシーンだけはコミカルさでなく、けっこう人情味あふれる、いいセリフのやりとりがあるので好きなんです。時おりこういった心あたたまるような演出も入っていて、河崎監督はさすがだなって思いました」と、宇宙人が日本の下町で騒動を巻き起こすギャグ、ドタバタの部分だけでなく、遊星王子と少年の信頼関係を丁寧に描くドラマチックな場面もあり、それが映画の魅力になっていると強調した。

遊星王子が居候するパン屋の娘であり、アイドル歌手・舟木の大ファンというヒロインの大村君子と、タルタン星の姫クローディアの2役を演じている織田奈那は、出演オファーをもらったときのことをふりかえって「一度、特撮作品に出てみたかったので、やってみたいな、面白そうだなって思いました。実際、内容もシュールですごく面白かったです」と、かねてから特撮ヒーロー作品に興味を持っていたため、楽しく撮影することができたと笑顔で話した。遊星王子を自宅のパン屋に住まわせる女子大生・君子とクローディア姫の演じ分けについては「君子は素の私に近いので演じやすかったですが、クローディアは君子と対照的に高貴な姫という、自分にない部分の多い難しい役柄。でも頑張って演じてみました。しゃべり方とかをエレガントに、気高い感じで……」と語り、庶民的な女性と宇宙の姫という両極端な役を演じきったことに満足そうな表情を見せた。

本作のメガホンを取った河崎実監督は、主演の日向野について「遊星王子は顔を丸出しにしていて役者の表情がぜんぶ見えるヒーローだけに、日向野くんの“昭和”っぽい二枚目顔がピッタリ」と、端正な顔立ちで濃厚な日向野の存在感、ヒーロー性を高く評価した。そして「声も低音でカッコよかった。劇中で歌(VACATION)を歌うんですけど、日向野くんが低音すぎてキーがなかなか合わず、6段階くらいキーを下げて歌ってもらった。困ったのはそれくらいで、あとは非常に良かった!」と、日向野の歌のシーンで予想外の苦労があったことを打ち明けた。

地球到着から200年がすぎ、本来の目的をすっかり忘れた状態で下町に現れた遊星王子を中心に、さまざまな騒動が巻き起こる本作のストーリーについて河崎監督は「これは宇宙の寅さん(車寅次郎/『男はつらいよ』シリーズの主人公)なんですよ。なんかすごく迷惑な奴がいきなりやってきて、日常の世界が大騒ぎするという。僕が好きな『オバケのQ太郎』とか『ウルトラマン』も、異世界からやってきた未知なる存在が人間社会で活躍するという意味では、共通しています。言葉も人種も違う者たちが出会って、仲良くなるって話が僕は好きなんです!」と、本作に秘められたハートウォーミングなテーマについて熱っぽく語った。

日向野演じる遊星王子は、冒頭で宇宙船に乗って地球に来るシーンをはじめ、至るところで「高笑い」をしているのが大きな持ち味となった。これについて日向野は「この映画の中でいちばん練習をしたのは、あの笑い声なんです。台本を読んだときは、わりとあっけらかんとした笑い方を想像していたのですが、河崎監督からはもっとインパクト大で! と言われまして、そこから劇中でのあの高笑いのイメージができました。あの笑い方は監督と僕と2人で作り上げたもの」と、映画の中で強い印象を残した「高笑い」に自信のほどを見せた。MCから「ぜひここで、あの笑いをやってみせて」と要望された日向野は「やりましょう」と快く応じ、思いっきり「ハーッハハハハハハ!」と遊星王子の高笑いを再現。隣の河崎監督からも「素晴らしいね!」と称えられた。

河崎監督は続けて「映画の冒頭で、宇宙船が故障しているのに遊星王子がいきなり笑っている。これはどう見てもおかしいでしょう(笑)。でも、60年代のアニメヒーロー『黄金バット』(1966年)も笑いながら出てくるんで、あれを参考にしたところもありますね。いろんなスーパーヒーローの要素を入れ込んで作ってます」と、河崎監督が少年時代に観た多くのスーパーヒーローたちへの憧れも本作に強く込められていることを明かした。

パンが大好物の遊星王子は、映画の中で空腹になるとアンパンを食べて元気を回復する。これにちなんで、日向野、織田、河崎監督それぞれのパワーの源は? という質問が寄せられた。日向野は「好感度を上げるようなことを言っていいですか?」と前置きし、少々はにかみながら「日ごろ僕を応援してくれるファンのみなさまです」と語り、客席からの拍手を集めた。織田は「音楽を聴くことです。楽しいときはもちろんですが、悲しいとき、さみしいとき、辛いときでも、音楽を聴くと元気になれます。ラブソングが好きで、Mr.Childrenさんの曲をずっと聴いています」と、食事と睡眠以外の時間はほとんど音楽を聴いていると話し、大きな目を輝かせた。そして河崎監督は「最近の僕のパワーの源は、糖質ゼロのビールです! あれはいいよ!」とエネルギッシュな表情で話し、客席のファンたちを沸かせた。

マスコミ向けのフォトセッションでは、今回のイベントでMCを務めたほか、劇中にも俳優として出演している映画コメンテーター・有村昆も日向野、織田、河崎監督と並んでフレームに収まった。

最後の挨拶で河崎監督は「世界は今、たいへんな状態がずっと続いています。でも、多くの方々がこういう映画を安心して観ることのできる世界に早く戻ってほしい。それが僕の本音です。この映画『遊星王子2021』には、僕が生きてきた中でのいろんな思いが込められています。人間、死ぬまではずっと生き続けなければいけませんから、これからも映画を作っていきます! みなさんどうか見捨てずに、これからもお付き合いよろしくお願いします!」と、新型コロナウイルス感染の猛威がいまだ収束を見ない厳しい昨今であっても決して負けずに、楽しい映画を作り続けていきたいと強い意欲を見せた。

織田は「応援してくださるみなさまのおかげで、無事公開の日を迎えることができました。映画を観終わったあと、みなさんが感じたことや心に残ったものを、ぜひ大切にしていただきたいと思います」と話して、コメディ要素や人情ドラマ要素など、さまざまな魅力を備えた本作への愛情に満ちたコメントを残した。

日向野は「監督も言っていましたけれど、日本に元気がなくなってきている昨今だからこそ、僕たち演者っていうのはエンタメを発信していかないといけないのかな……とすごく感じます。この映画は観終わったあと、決して暗くなるような内容ではありません。ぜひ『遊星王子2021』をご覧になり、明るい気持ちやワクワクする感情を抱いていただき、周りの方たちにも広めていってほしいです。僕の夢は『遊星王子2021』が世界じゅうまで広がって、たくさんの人たちがニコニコと笑顔になってくれること。そうなれば、すごく嬉しいと思っています。これからも『遊星王子2021』よろしくお願いいたします!」と、深刻な問題が積み重なっている世の中だからこそエンタテインメント、娯楽作品がもたらす力は大きいと信じ、本作を可能な限り多くの方たちに観て、楽しんでもらいたいと語って、イベントを見事に締めくくった。

(C)2021「遊星王子2021」製作委員会