パラパラマンガを描き始めて10周年を迎えた芸人・鉄拳が『鉄拳のパラパラマンガうつすだけドリル』を発売した。代表作「振り子」をはじめ数々の感動的な作品を世に送り出した鉄拳が初めて子ども向けに描いたこの本は、パラパラ見てもうつして描いても楽しい、まさにおうち時間にピッタリの作品となっている。今作について話を伺うとともに、“パラパラマンガーズ・ハイ”だったという、「振り子」や「あまちゃん」で大ブレイクした当時の過酷な仕事ぶりなどについても語っていただいた。是非、動画を見たり本を手に取って参照したりしながら読んでみてほしい。

  • パラパラマンガを描き始めて10周年を迎えた芸人・鉄拳が『鉄拳のパラパラマンガうつすだけドリル』を発売

子ども向けの本をつくった経緯

――『鉄拳のパラパラマンガうつすだけドリル』発売おめでとうございます。うつすだけでパラパラマンガを描ける画期的な本でとても興味深く読んで、実際に描いてみました。

鉄拳:ありがとうございます!どうでしたか?

――最初は正直、「30枚も描くの!?」と思いました。

鉄拳:はははは(笑)。30枚が、最低のラインなんですよ。30枚描かないとやっぱり動きが短くて面白くないので。あと、10枚だとめくれないので30枚ぐらいがいいですよって本の中でも子どもたち向けてに書いているんです。

――なるほど。でもその大変さがだんだん楽しくなってきて面白かったです。

鉄拳:ああ、それは良かったです。

――鉄拳さんはパラパラマンガを描き始めて10周年ということですが、この本を出すことになったきっかけを教えてもらますか。

鉄拳:この本は、コロナ禍でおうち時間が増えている夏休みの子どもたちのために、「何か家で楽しめるものはないか?」ということで出版社の「主婦の友社」の方が企画して僕に依頼してくれました。

――鉄拳さんご自身は、子どもたちに向けてこういうパラパラマンガの本を出したいという気持ちはあったんですか?

鉄拳:いや、なかったです(笑)。自分が教えるみたいなことは全然考えてなかったので、今回ご依頼をいただいたときに「大丈夫なのかな?」と思いました。僕の描いているパラパラマンガを、ちゃんと子どもたちに教えることができるのかなって。イラストのワークショップをやったことは何度かあるんですけど、パラパラマンガを描き始めてからはずっと忙しくて、そういうイベントもやってなかったので。

――本にしてみて、いかがですか?

鉄拳:30枚描かないといけないから、子どもたちがちゃんとついてこれるかなって、ちょっと心配になりました。でもそうしないと1つの作品が仕上がらないので、ここを子どもたちが根気よくやってくれてるかなって。

――発売されて1ヶ月近くたちますが、反響はどうでしょうか。

鉄拳:子どもより、大人が買ってくれていて反響がありますね。子どもはやっぱり飽きやすいので、最後までいかない人が多いと思います(笑)。

――そんな(笑)。でもその根気をつける勉強にもなるわけですね?

鉄拳:そうですね。根気をつけて、苦労して出来上がったときの楽しみを味わうということを、パラパラマンガで知ってほしいです。でもこれって、描かなくてもパラパラマンガがパラパラ見られるんですよ。「これをこう合体させればこういう作品ができるんだ」っていう完成形が見られるので良かったです。これがなかったら、「どうなるんだろう!?」って謎で終わっちゃうので。

  • 苦労して出来上がったときの楽しみを味わうということを、パラパラマンガで知ってほしい、と話す鉄拳さん

――確かに、見ているだけでも楽しめます。例えば「鳥のフンとクマのぼうし」は実際にどうやって完成させているんですか?

鉄拳:「鳥のフンとクマのぼうし」は、計算がかなりむずかしかったです。ぴったり30枚でオチをつけなきゃいけないので、逆算してオチから描いていきました。「おばけの野球大会」も、オチから描いてそこから逆再生していって、良いスタートになるように描きました。「おばけの野球大会」は一番大変で1日かかりましたけど。すべてが同じ場所でオチになるようにしないといけないんですけど、登場が余っちゃうキャラクターができてしまったので、オチに合わせてキャラクターの動きを演出しました。これはむずかしかったです。

――オチで「ああ、こうなるんだ!」ってわかるというのが面白いですよね。「鳥のフンとクマのぼうし」もそうですけど。

鉄拳:子供は、うん〇が好きなので(笑)。子ども相手にパラパラマンガを描くとなったら、感動ものはたぶんわからないので、こっちのギャグ路線の方がいいんじゃないかと思いました。

――見ているうちに描いてみたくなって、「鳥のフンとクマのぼうし」を描いてみたんですけど、ちゃんとパラパラさせるためには紙を丁寧に揃えて切らないといけないんですね。雑に切って失敗してしまいました(笑)。

鉄拳:紙の切り方は需要なんですよ。紙は本当にキレイに切ってください。あと、紙はこの本についているものじゃなくてもいいんですよ。本の端っこを使って書いてもいいですし。

――そもそもパラパラマンガって、授業中に教科書の角に描いているイメージですもんね。

鉄拳:そうです。本についている紙はおまけなので使っても使わなくてもいいんです。でも使うときはキレイに切りましょう。

――わかりました。でも、ただうつしているだけなのに、描いているうちに絵が上手になった気がしました。

鉄拳:ああ~、それは錯覚です!うつしているだけなので(笑)。でも慣れてくると本当に描けるようになると思いますよ。