パラパラマンガへの向き合い方

――1日30枚、2ヶ月描いてもパラパラするとあっという間に終わってしまいますよね。

鉄拳:あっという間ですね。2か月かけて描いて、テレビで1回放送して終わりということが多いです。

  • 鉄拳さんが考える作品との向き合い方とは?

――それを見たときはどのように感じますか。

鉄拳:パラパラマンガは反響があるので嬉しいですね。ネタの方は、1日2日で描けるんですけど、それよりはパラパラマンガの方がみなさんの反応があるので嬉しいです。

――それこそ、「振り子」がMUSEのMVで使われたときは世界的な反響がありましたが、当時はどのように感じていましたか?

鉄拳:異常だなって思いました(笑)。YouTubeのコメントが全部英語だったので、読めないんですよね。唯一読めたのが、「FUCK」っていう字だったんですけど、なんで僕にそんなこと言うのかなって思って後で英語がわかる人に聞いたら、「泣かせんなよ、このくそったれ」みたいな意味だったんですよ。僕は何か知らないけど怒られてるなあ~って思ってたんですけど(笑)。

――怒られてるどころか絶賛されていたんですね(笑)。

鉄拳:あの頃はまだ、YouTubeを見ている人もそこまでいなかったんで、知らない世界で盛り上がってる感じでした。でもすごく嬉しかったですね。

――鉄拳さんのパラパラマンガは感動作から、今回のような子ども向けの楽しいものまで幅広いですが、鉄拳さんご自身が自由に作品を作るとしたら、どんなものになりますか。

鉄拳:僕はどちらかというと、ストーリーよりも見せ方で工夫したいなと思っていて。「振り子」のときもそこまで感動してもらうとは思ってなかったんです。「振り子」は横の動きと縦の動きを同時にやったら面白いなと思って、振り子が横に振られる中で縦に道あったりとかを描いてみたんです。そうしたら「感動しました」っていう声が多くて。それからは、仕事の依頼のほぼ90%ぐらいが「「振り子」のような感動ものを作ってください」っていう話になったんです。感動ものの動画を作ると、一般の人は「またお涙頂戴かよ」とか「感動の押し付けかよ」とかって言うんですよ。でも再生数が多いのは結局感動ものなんですよ。それで、「スケッチ」っていうだまし絵のパラパラマンガを描いたら、全然再生されなかったんですよ(笑)。「おまえらこういうのが見たかったんじゃないのか!?」って描いたんですけど、感動ものより全然再生されないんですよね。そういうもんなんでしょうね、人間って。

――なんだかんだ文句を言いつつ感動ものが見たいという(笑)。

鉄拳:そうなんですよね。1回、ネットニュースになったんですけど、知り合いとごはんを食べに行ったときに、僕はマスクをしていたんですけど、その人が僕と並んでる写真をインスタに上げたんです。そうしたら、「鉄拳の素顔なんか別に興味ねえんだよ!」ってコメントに書いてあるんですよ。でも、「鉄拳」で検索すると、「素顔」ってすぐ出てくるんですよ。「みんな、「鉄拳 素顔」で調べてんじゃねえかよ!?」って思いますもん。

――結局、知りたいんですよね(笑)。

鉄拳:本当、裏腹ですよ。見といて文句言うっていう。

――エゴサーチしたりしますか?

鉄拳:昔はしたんですけど、Twitterをやってると気になっていろんなものを見ちゃうので去年止めたんですよ。だけど最近YouTubeを始めて、「Twitterが宣伝するには一番いいですよ」って、人に言われたのでまた始めました。

――メイク越しにも嫌々やってる感がすごく伝わってきますけども(笑)。

鉄拳:いやあ(笑)。僕関連のつぶやきがあると目に着いちゃうんですよね。それが嫌なので止めたんですけど、でもまだフォロワーさんが少ないので。

――でも今回本が出て、いろんなメディアの取材も受けられているわけですから、きっと広がっていきますよね。今後パラパラマンガで新しく表現したいことなどはありますか?

鉄拳:この本、自分で描いてみるというよりも、みなさんパラパラして動くのを見る人が多いんですよ。だったら僕の作品集を集めてパラパラして見れる分厚い本にした方が売れるんじゃないかって、最近思ってます(笑)。

――それは確かに見たいです!

鉄拳:昔、「振り子」っていう本を出したんですよ。それはパラパラする本じゃなかったんです。「振り子」は全体で1400枚ぐらいあるので、全部載せるのなんか絶対無理なんです。だからシーンを抜粋して本にしたら「パラパラできねえじゃねえか!」って苦情がいっぱいきました。

――いつも何か言われてるじゃないですか(笑)。

鉄拳:そうなんですよ、いつも何か言われるんですよ。それはもともとパラパラする本じゃないって言ってるのに苦情がくるっていう。

――だから、感動もので尚且つパラパラできる本を出せばいいということですよね。

鉄拳:そうですね。あとは面白い動きがあれば。今回は子ども向けに作ったので、動きが平面の簡単なものだけにしたんです。パラパラで見るんだったら回転して見えるもう少しすごいこともできるので。次はそういうのも出したいですね。

――改めて、『鉄拳のパラパラマンガうつすだけドリル』はどう楽しんでほしいですか。

鉄拳:子どもに夢中になってもらうための本なので、大人の方はお子さんにプレゼントしてあげてほしいです。これを一生懸命やるんじゃなくて、「なんか暇だなあ、やることないかなあ。あれ?鉄拳の本があったな、ちょっとやってみようかな。あれ、これ以外と面白いじゃん!」っていう展開が一番の理想ですね。パラパラマンガって押し付けてやるものじゃないから。

  • 『鉄拳のパラパラマンガうつすだけドリル』を子どもにたちに夢中になってほしいと話す鉄拳さん

――これからもパラパラマンガを描き続けますか?

鉄拳:う~ん……。

――悩むところなんですか(笑)。

鉄拳:それはわからないです。依頼があって、僕が丈夫であれば、描きます(笑)。ちょっとのんびりしたいので。田舎で喫茶店とかを開きながら、お客さんがいない暇な時間にパラパラマンガを描けたらいいなって思ってます。それが理想ですね。