「水菓子」のことを、水羊羹や葛餅といった「やわらかくみずみずしい和菓子」のことだと思っている人は多いでしょう。実は、本来はお菓子を指さないのです。
本記事では、「水菓子」の意味や語源について解説します。
水菓子とは? 読み方・意味・由来
水菓子の読み方
「水菓子」は「みずがし」と読みます。
水菓子の意味
「くだもの」を指す言葉です。東京ならではの方言だとされています。近年では水羊羹や葛餅など、ぷるぷるとやわらかく、みずみずしい和菓子のことを水菓子と呼ぶこともあります。
水菓子の由来・語源
水菓子は、なぜ「くだもの」を指すようになったのでしょうか。それには歴史をさかのぼる必要があります。
もともと「正式な食事以外で食べる軽食」のことを、「くだもの・菓子」と呼んでいました。果実類、菓子類、酒のつまみなどはすべてこう呼んでいたとされています。
江戸時代になると、「菓子」は「人が手を加えて作った甘い食べ物」だけを指す言葉に変わります。一方、果実類を指す場合には、江戸では「水菓子」、上方では「くだもの」が使われるようになりました。
現在では全国的に、果実類のことを「くだもの」と呼びます。「水菓子」と呼ぶケースは東京においてもほとんどありません。
水菓子の意味は水羊羹やゼリーじゃない?
水菓子の本当の意味が「くだもの」なら、水羊羹や葛餅のようなぷるぷるとしてみずみずしい和菓子は本来、何というのでしょうか。
答えは「生菓子」です。生菓子とは「餡(あん)を使った日持ちのしない和菓子、もしくは生クリームや果物などを使った日持ちのしない洋菓子」を指します。つまり水分を多く含む菓子のことです。
最近では、水羊羹や葛餅などを「水菓子」と認識されることが多いですが、本来の意味を考えると誤用であること覚えておきましょう。実際に水羊羹などを「水菓子」ということもありますが、これはあくまで専門分野での用語として使われます。
旬の水菓子(果物)
ここからは、水菓子を本来の意味「くだもの」として捉えた場合の、代表的な旬の水菓子を紹介していきます。なお、イチゴやスイカは農林水産省が「果実的野菜」に分類していますが、ここでは「くだもの」として扱います。
春(4月頃)の水菓子
春の水菓子としては「イチゴ」が挙げられます。かつての主流は「女峰」や「とよのか」でしたが、現在では品種がとても豊か。なかでも「とちおとめ」や「あまおう」が多く出回っています。
夏(8月頃)の水菓子
夏の代表的な水菓子といえば「スイカ」でしょう。よく冷やしてから食べると夏の暑さも和らぎます。
秋(10月頃)の水菓子
秋は「柿」を思い浮かべる方も多いでしょう。なかでも代表格とされている品種は「富有柿(ふゆうがき)」です。「富有柿」はやわらかな果肉とジューシーな果汁、甘みの強さが特徴。出回るのは10月下旬頃からです。
冬(1月頃)の水菓子
冬は「リンゴ」が思い浮かびます。国内でもっとも多く生産されている品種は、シャリッとした食感が心地よく、酸味と甘みのバランスが絶妙な「ふじ」です。スーパーなどでは季節を問わずリンゴを目にしますが、本来の旬は秋から冬にかけてとされています。
水菓子は本来、果物・フルーツを指す
水菓子はもともと、東京方面で「くだもの」を指していました。現在では水羊羹や葛餅など、やわらかくみずみずしい和菓子を指す言葉としても使われます。この使い方も間違いではないですが、ご年配の方や伝統を重んじる方に対しては、水菓子は「くだもの」の意味で使ったほうがよいでしょう。