現在公開中の映画『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』は、今年で誕生50周年を迎えた「仮面ライダーシリーズ」と、今年で45作品目を数える「スーパー戦隊シリーズ」を祝うダブルアニバーサリー作品である。
最強の敵・アスモデウス(演:谷田歩)により、世界を揺るがす危険な禁書が解放され、仮面ライダーセイバー/神山飛羽真(演:内藤秀一郎)はスーパー戦隊シリーズ『機界戦隊ゼンカイジャー』の世界に、そしてゼンカイザー/五色田介人(演:駒木根葵汰)は仮面ライダーシリーズ『仮面ライダーセイバー』の世界に飛ばされてしまった。「現実」と「物語」の境界があいまいになり、混ざり合った世界に戸惑う飛羽真たち。しかし、世界の混乱はさらに拡大。さまざまな世界から呼ばれたヒーローが「物語」の結末を確かめようと、悪との戦いを続けていく。しかしそれこそが、アスモデウスの仕組んだ壮大な計画の到達点だった……。
仮面ライダーとスーパー戦隊、昔も今も子どもたちを熱狂させ続ける2つのスーパーヒーローが、力をひとつに合わせて強大な悪の野望を叩きつぶすオールスター映画である本作のメガホンを取るのは、過去に「仮面ライダーシリーズ」「スーパー戦隊シリーズ」各作品の演出を手がけ、両シリーズの特徴を熟知している名匠・田崎竜太監督。かつて少年時代に『仮面ライダー』(1971年)を観て、斬新なヒーロー像を体感した記憶を持つ田崎監督が、この映画を作るにあたって念頭に置いたこととは何か。半世紀を過ぎてなお、幅広い世代から愛されるヒーロー像を具現化した“萬画家”石ノ森章太郎氏に対する強いリスペクトと共に、映画のテーマや必見ポイントについて語ってもらった。
――田崎監督に今回の映画のお話が来たとき、企画はどの段階まで具体化されていたのでしょうか。
決まっていたのは「仮面ライダー50年、スーパー戦隊45作を祝う映画にしよう」ということだけでしたね。ヒーロー全員集合もやるかどうか未定でしたが、記念映画ならばおそらくやるだろうなと予測はしていました。
――ストーリーを作られる段階で、映画のテーマをどのように定められましたか。
僕らがやりたかったこと、それはアニバーサリー映画とはいうものの、誰に向かっての記念なのか、誰に「ありがとう」と言えばいいのかという部分を明確にすることでした。そこで、仮面ライダーの原点・仮面ライダー1号、スーパー戦隊の原点・(秘密戦隊)ゴレンジャーというヒーローキャラクターを生み出した石ノ森章太郎先生にアプローチしてみたい、と思って筋書きを考えていきました。
――映画の冒頭に出てくる「仮面ライダーの物語」「スーパー戦隊の物語」が記された本ですが、整然と規格も厚さもそろっているスーパー戦隊に対して、仮面ライダーのほうは大きさも厚みも装丁もバラバラ。これは両シリーズの特徴の違いをひと目で表す、優れた演出でしたね。
仮面ライダーとスーパー戦隊の違いを何かつけておかないといけないと思って、美術部と相談しながらあの本棚の本を作っていきました。フォーマットがしっかりしているスーパー戦隊に対して、仮面ライダーは一冊ごとにまったく違っていたほうが、それらしいでしょう。
『仮面ライダーBLACK』と『仮面ライダーBLACK RX』のデザインが対になっているとか、『仮面ライダーJ』は大判の本だとか、作品の個性が本の装丁に反映されています。映っている時間はそんなに長くないですが、できれば一冊一冊つぶさに見ていただければうれしいです。希望を言えば、どこかで実際に展示して、ご覧いただきたいくらいです。小道具なので、すべての本に中身は書かれていないんですけれどね(笑)。
――異なる2つの作品のヒーローたちがいきなり出会ったとき、通常ならば誤解から一度バトルが起きたりする展開が過去にありました。今回はそういった『大戦』的なノリはほとんどないですが、これは意識的にそうなったのでしょうか。
『スーパーヒーロー大戦』ではなく『スーパーヒーロー戦記』ですから、ヒーロー同士のぶつかりあい、つぶしあいにはなりません。むしろ世界の融合によって、介人がいつものキカイノイドではなくイマジンと絡んだらどんな雰囲気になるのか、ノーザンベースの剣士たちが介人とキカイノイドに出会ったらどんなリアクションをするのか、ファンのみなさんが想像するような“IF”の部分を具体的なビジュアルとしてお見せしようという狙いがありました。「八犬伝の世界」や「西遊記の世界」では、『仮面ライダーセイバー』『機界戦隊ゼンカイジャー』以外の歴代キャラクターも参加して、コスプレも加えて楽しい画面を作るべく、頑張ってみました。