収入(世帯の働き手)がひとつなのか、複数なのかは現在の家計管理や将来のマネープランを考えるうえで重要なことです。それによって世帯収入や家計の黒字率が変わる傾向があります。

そこで今回は、総務省の「家計調査家計収支編(2020年)」を元に、専業主婦率と世帯主収入、家計の黒字額などとの関係や傾向を紹介し、これらの結果から見えてくる共働きのメリットについて説明していきます。

はじめに

共働き世帯が増えている昨今ですが、地域や都市によっては専業主婦家庭が多いなど、傾向は異なります。そこで今回は、専業主婦率と世帯主収入および家計の黒字額の関係等を検証するために、専業主婦が多い都市と少ない都市の家計を比較していきます。

使用するデータは、総務省が調査・公表している「家計調査・家計収支編(2020年)」のうち、「都市階級・地方・都道府県庁所在市別1世帯当たり1か月間の収入と支出(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」です。このデータを参考に、都道府県庁所在市および大都市(川崎市、相模原市、浜松市、堺市、北九州市)の計52都市の家計と専業主婦率の関係を見ていきましょう。

専業主婦率の高い地域は?

まずは、専業主婦率の高い都市と低い都市にはどの都市があるのか見てみましょう。 なお、ここでの専業主婦率は、参照データにある「世帯主の配偶者のうち女の有業率」を100から差引き求めています。計算式で表すと次のようになります。

専業主婦率=100-(世帯主の配偶者のうち女の有業率)

計算した結果、専業主婦率が高い都市・低い都市、それぞれ上位5都市は次表のとおりとなりました。

上位順 専業主婦率が高い地域 専業主婦率が低い地域
1位 京都市(59.6%) 金沢市(31.9%)
2位 北九州市(58.6%) 鳥取市(33.4%)
3位 横浜市(57.4%) 松江市(34.8%)
4位 仙台市(57.2%) 浜松市(35.7%)
5位 那覇市(57%) 前橋市(36%)

※出典:総務省「家計調査(2020年)/二人以上世帯/都市階級・地方・都道府県庁所在市別1世帯当たり1か月間の収入と支出/勤労者世帯」を基に作表

専業主婦率が最も高い都市は京都市で59.6%です。いわば、10世帯中約6世帯が専業主婦家庭ということです。一方、最も専業主婦率が低いのは金沢市で31.9%です。10世帯中専業主婦家庭は約3世帯で、両者の間には3世帯の差があることになります。

専業主婦と家計の黒字率との関係

ここからは、専業主婦率と家計黒字や世帯主収入、預貯金の関係を見ていきましょう。

世帯の黒字額×専業主婦率

専業主婦率が高い世帯では、全体的に家計の黒字率が低めの傾向にあります。1カ月あたりの黒字額の全国平均額は192,828円ですが、先に紹介した専業主婦率が高い上位5都市でも、横浜市を除く4都市が全国平均額を下回っています。

なお、全国52都市のうち、黒字率の低い順に並べたときの順位は仙台市、那覇市、北九州市となっています。黒字率ワースト3の都市は、いずれも専業主婦率の高い5都市のなかに入っています。

実際の黒字額を金額で表すと次表のとおりとなります。全国平均額との差も記載しています。

都市名 1カ月の黒字額 全国平均額との差
全国平均額 192,828円
京都市 178,902円 ▲13,926円
北九州市 135,986円 ▲56,842円
横浜市 199,500円 +6,672円
仙台市 120,880円 ▲71,948円
那覇市 131,036円 ▲61,792円

世帯主収入×専業主婦率

次に、専業主婦率と世帯主収入の関係を見てみましょう。

専業主婦率が高い上位5都市のうち黒字額が全国平均を上回っていた横浜市では、1カ月あたりの世帯主収入(505,207円)も全国(431,902円)よりも高くなっています。世帯主収入が高いことが、家計黒字額の高さにもつながって、専業主婦率の高さに影響しているのかもしれません。

一方、専業主婦率の低い(共働き世帯の多い)都市2位の鳥取市では、世帯主収入額は392,343円と全国平均額よりも低くなっています。このことから、配偶者も働き、夫婦で力を合わせて収入を得ていることがうかがえます。

預貯金の純増額×専業主婦率

今後のマネープランを考えると、預貯金を増やして資産を形成していくことが重要です。そこで、専業主婦率と預貯金の純増額の関係を見てみましょう。

あくまで一般的な傾向ですが、専業主婦率が高い都市は低い都市に比べて預貯金純増額も低い傾向にあります。特に、北九州市では1カ月当たりの預貯金純増額は68,258円と全52都市のうち最も低い状況です。

都市名 1カ月の預貯金純増額 全国平均額との差
全国平均額 157,186 円
京都市 153,614円 ▲3,572円
北九州市 68,258円 ▲88,928円
横浜市 191,407円 +34,221円
仙台市 122,422円 ▲34,764円
那覇市 121,524円 ▲35,662円

預貯金純増額の大小は、先に見た家計黒字額と高い関係がありますが、専業主婦率が高いほど黒字額は小さい傾向が預貯金純増額にも現れていることがわかります。

しかし例外もあります。熊本市では専業主婦率が38.9%と低く、かつ黒字額は151,338円。北九州市、那覇市、仙台市よりも黒字は大きいにもかかわらず、預貯金純増額は96,454円と北九州市に次いで低い状況です。実はこれは、黒字額の4割以上を土地家屋借金(ローン)の返済に充てていることも要因で、過去の大震災も影響しているとも考えられます。

共働き・片働き(専業主婦)の強み

黒字率が高く、貯金も増えやすいのが共働きの強みでしょう。また、必要に負われているかどうかは別として、熊本市の例のように夫婦で力を合わせて資産を築いていけそうです。もちろん、家計に余裕があるほど食費や教育費、教養娯楽費なども多めに支出できる傾向もあり、生活のゆとりも得られそうですね。

一方、専業主婦家庭でも黒字を多くし、貯蓄を増やすことも可能です。たとえば、専業主婦率が最も高い京都市では、世帯主収入は全国平均額に比べて26,919円少ないものの、預貯金純増額は全国平均額との差はわずか3,572円。というのも消費支出額が平均よりも44,166円低く抑えられており、収入が少ない分を補い、さらに補強している状態です。物価や持ち家率、自動車所有率などの影響もありますが、家計管理の仕方によって支出を抑え、資産形成もしっかりできることがわかります。

まとめ

今回、総務省の家計データをもとに専業主婦率と世帯主収入および家計の黒字額の関係などについて確認しました。その結果、共働きをすることで家計が安定する傾向にあることが読み取れました。可能であれば共働きをして現在の家計を安定させることはもちろん、将来的な資産形成にも役立てていきたいですね。

しかし、家族の事情などによって共働きできる環境にない人もいるでしょう。その場合でも家計管理の仕方次第で貯蓄を増やしていくことは可能です。節約を心がけ、できる限り支出を抑えながら資産形成に努めていきましょう。