新入社員の研修や看護の現場などで利用されている「ケーススタディ」。横文字のため、馴染みがないと「何をするのか」「何のためにするのか」と疑問に思ってしまいますよね。

本記事では、ビジネスや看護における「ケーススタディ」の意味と意義、具体的なケーススタディの進め方などをご紹介します。ケーススタディで何を得られるのかを理解して、より有意義に研究を行いましょう。

  • ケーススタディの意味とは?

    ケーススタディの意味とやり方を知ろう

ケーススタディの意味とは

ケーススタディ(case study)とは、ある具体的な出来事を詳しく研究・分析することで、一般的な法則や原理などを発見しようとする方法のことです。ビジネスや看護など、使われる分野によって詳細は異なりますが、「ある例を詳細に分析することで、他の事例にも通ずる手法を学ぶ」点は共通しています。

ケーススタディの他に「ケーススタディー」あるいは「ケース・スタディ」と表記される場合もあります。

ケーススタディの日本語訳

ケーススタディを日本語にすると「事例研究」あるいは「事例研究法」となります。事例研究法を示す場合には統計的方法(statistical method)が対義語です。「ケーススタディ」という語の使い方に迷ったときは、「事例研究」に置き換えても意味が通じるかどうかを考えるといいでしょう。

ケーススタディの類語

ケーススタディの類語としてケースメソッド、ケーススタディ試験があります。それぞれの意味を確認しておきましょう。

ケースメソッド

ケースメソッドとは、実例を研究する学習方法のうち、学習者の能動的な態度を重視したものを指します。使用者によって、ケーススタディとケースメソッドの違いを明確にしている場合と、同様の言葉として扱っている場合があります。

区別がされている場合、ケースメソッドはディスカッションなどのアウトプットにより重きをおいた能動的な学習方法、ケーススタディは講師から例題や資料を与えられる受動的な学習方法を指します。ビジネススクールや経営学・法学を学ぶ場面での活用が多い学習方法です。

ケーススタディ試験

ケーススタディ試験とは、職場でのトラブル事例などを問題として課し「自分だったらどう対応するか」を述べさせる記述試験です。管理職への昇進・昇格試験時に利用され、職場でのトラブルなどを管理職としてどう解決するかを回答させることで、管理職としての適性をチェックします。

回答は「適切な課題設定か」「有効な対応ができているか」「論理的な回答か」などから評価されます。

ケーススタディの対義語

ケーススタディの対義語は統計的方法となります。

統計的方法

ケーススタディの対義語である統計的方法とは、ある集団から集めたデータを分析することで、事例全体に通ずる普遍的な法則や理論などを発見することです。データをグラフや表に整理したり、平均値などを取ったりすることで傾向を見出したり、仮説を検証したりします。

  • ケーススタディの類語・対義語

    統計的手法とはグラフなどを利用した仮説検証のこと

ケーススタディの意義

ケーススタディを行うことには、以下のメリットがあります。

  • 短時間でより多くの事例を擬似的に体験できる
  • 新しいアイディアを発見できる
  • リスク回避

ビジネスにおいては、理論を知るだけでなく実践を積むことでスキルが身につきます。しかし、幅広い経験を積みたくとも、自分のいる環境や運などもあり、実際に業務内で経験できることは限られています。

ケーススタディを利用すれば、自分が担当したことのない事例についての学習を短期間で行えるため、効率的にビジネススキルを向上させられるでしょう。あらかじめ知識を得ておくことで不測の事態も減り、対応力も向上します。

過去の事例に対して「自分ならどう行動するか」を考え、「そのときにどのような対応をしたか」「他の人はどう考えるのか」をケーススタディでは学べます。それにより、新たな解決方法や対処法を発見することも期待できるでしょう。

また、失敗や事故のような「再度同様の事例を起こしてはならない」シチュエーションにも疑似体験ができるケーススタディが役立ちます。事故の原因や理由を分析し、事故防止のためにすべきことを学べるからです。

  • ケーススタディの意味とは?

    ケーススタディとはある例を詳細に分析して他の事例にも通ずる手法を学ぶこと

各現場におけるケーススタディ

ここからは実際の現場におけるケーススタディの詳細をご紹介します。

看護におけるケーススタディ

看護や医療職では、実際の症例に対して仮説を立てたうえでその検証を行うことをケーススタディと呼びます。

患者の方に寄り添った看護を実践するには「患者のニーズをとらえる力」「患者をケアする力」などが求められます。看護におけるケーススタディは、これらの力を養うことを目的として行われます。

起こった問題への新しい解決策を見つける以外にも、自身の看護技術の振り返りのためにも活用でき、実務に当たる場合だけでなく、看護学生の学習方法としても一般的です。

ケーススタディのテーマは「高齢者の食事」「肺炎予防に向けた口腔ケアの重要性」「脳梗塞により摂食・嚥下障害となった患者への援助」など多岐にわたります。

これらのテーマを決めた後、さまざまな文献を調べて対象となる患者の方に対する個別の看護計画を立て、行った看護について振り返るというのがケーススタディの一例です。

ビジネスにおけるケーススタディ

ビジネスシーンでは実際の場面を事例として学び、「どのように対応するべきか」を考えたりディスカッションしたりすることで、効率的に仕事に対する経験を積めます。講義を受けるだけの研修より、実践的なスキルを身に付けられるでしょう。

現場での柔軟な対応力を身に着けさせる目的で新入社員に行ったり、管理職向けにトラブル解決方法をケーススタディで学ばせたりと幅広い用途・対象に向けて活用できます。

介護領域においても、同様に事故防止や技術向上のため、ある事例に対してケーススタディが行われます。

教育におけるケーススタディ

教育現場においては、学生や生徒、教員どちらに対してもケーススタディが行われます。

学生は特に経営学を学ぶ際にケーススタディを利用する場合が多く、実際の事例をもとに学ぶことで経営者としての総合的な力とコミュニケーション能力を高めることを目的とします。

教員が対象となる場合は、主に2種類の目的のためにケーススタディが行われます。1つは講師を対象とした、授業や生徒指導の事例をもとに指導力の向上を図るもの。2つ目は管理職を対象とした、校内での事件やトラブルの予防・再発防止をするためのものです。

  • ケーススタディの意義

    ケーススタディには多くの意義がある

ケーススタディの進め方

ノウハウを身に着け、自分の考えを深めるために有用なケーススタディですが、実際に行う際にはいくつかのポイントがあります。

ケーススタディはディスカッションを含んで複数人で行われる場合が多いですが、1人で本などを用いて行うことも可能です。どちらの場合も、基本的な流れは同じになります。

事例や例題を探す

まずは、ケーススタディに利用する事例を探します。セミナーや授業ではあらかじめ課題が設定されており、資料が揃っている場合もあるでしょう。しかし、そうでなければ自分で事例を設定しなくてはなりません。

自分の目的に合わせ、参考になりそうな事例を見つけましょう。自分の経験や自社のインシデント事例などから探してもいいですし、ネット検索やセミナー・本の例題を利用するのもよいでしょう。

問題点を考える

次に、事例の問題点を明らかにします。この際に「事故の再発防止」「〇〇な状況におけるよりスムーズな対処法を見つける」など、ケーススタディの目標を明確にしておくと考えやすくなるでしょう。

事例について読み込み、何がどのような状況で起きてしまったのかを明らかにします。状況が整理できたら、ポイントとなる部分や事故の理由となってしまった部分をピックアップします。「自分だったらどうするか」を念頭に置いて、対応方法や事故防止案などを考えてみましょう。

アウトプットする

最後に、ディスカッションやレポートなどで自分の考えをアウトプットします。書き方や作り方に特に決まりはありませんが、第三者が見てわかりやすいようにするべきでしょう。自分の思考を整理することで理解が深まるだけでなく、対話や質疑応答をする中で他者の知見を取り入れられます。さらに良い解決方法が見つかる場合もあるでしょう。

自分一人で行っている場合も、アウトプットは必要です。ノートなどに考えをまとめることで客観的に自分の結論を見直せるからです。模範解答や実例を確認して比較するだけでなく、可能であれば先輩などに見てもらうとより学びが深まるでしょう。

  • ケーススタディの進め方

    ケーススタディをするうえでアウトプットは重要

過去から学び、未来に活かせるケーススタディ

ケーススタディは過去の事例を分析・検討することで自らの知識を増やす勉強法であり、時間短縮や新たな解決策を見つけるために役立ちます。ビジネスや看護などの分野によって意味する所は少しずつ異なっていますが、根本的な意味は同じです。

事例を集め、分類・分析し、アウトプットするのが具体的なケーススタディのやり方であり、複数人でも1人で本を用いてケーススタディをすることも可能です。

先人の知恵や経験を短期間で自らのものにできるケーススタディを有効に使い、社会人としての経験値を蓄えましょう。