田中圭主演の映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』が18日より公開される。同作は1998年長野五輪、スキージャンプ団体の金メダルを陰で支えた25人のテストジャンパーたちの知られざる実話を映画化し、役者も実在の人物たち、あるいは実在の人物をモデルにした役を演じる。腰の故障により代表落選となったスキージャンパーの西方仁也(田中)が、競技前にジャンプ台に危険がないかを確かめ、競技中に雪が降った際には何度も飛んでジャンプ台の雪を踏み固めるテストジャンパーとなり、裏方から日本選手団を支えていく姿を描いている。

今回は、同作のテストジャンパーたちの中で、唯一の女子高校生テストジャンパーの小林賀子を演じた、日向坂46の小坂菜緒にインタビュー。女子スキージャンプがオリンピック種目になかった当時「テストジャンパーとしてでも長野五輪に参加したい」という熱い思いを持った実在の選手・吉泉(旧姓:葛西)賀子をモデルにしたキャラクターで、小坂も実際に吉泉選手の話を聞いて撮影に挑んだという。

  • 映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』に出演する日向坂46の小坂菜緒

    小坂菜緒 撮影:宮田浩史

■女子1人という経験がまったくなかった

——この作品に出ると聞いた時の感想を教えてください。

「本当に自分に出来るかな」とちょっと不安なところがありました。こんなに大きな映画ですし、オリンピックを題材にしているというのもあって不安だったんですけど、今までにないチャンスですし、自分でも初めて挑戦するジャンルでもあったので、素直に頑張りたいと思いました。

——どんな準備をしてイメージを広げられたんでしょうか?

オリンピック当日のテストジャンパーたちが飛ぶシーンを撮る前に、実際に私の役のモデルとなった吉泉さんにお会いしてお話をいろいろ聞かせていただきました。「当時飛ぶ時はどのような心境だったんですか?」とお話を聞いた時に、「若いから何も考えずに飛べた」とおっしゃっていて、私も「若いから思いっきり行っちゃえばいいんだ」という気持ちになり、役の作り方を考えることができました。

吉泉さんは「若い選手があまりいなくて、高校生がテストジャンパーにいること自体が珍しかった」という話をされていたので、本当にすごい挑戦で勇気がいることだと思いました。ご本人も過去に怪我をしたりして、周囲に止められたけど、諦めずにできたのは「若かったからだ」とずっとおっしゃっていたので、若さゆえの努力もすごくあるのかなと思いました。

——女性が共感する役でもあると思うのですが、小坂さんもどこか共感するところなどはありましたか?

私自身は女子1人で男子の輪の中に入るという経験が全くなかったので、すごく新鮮でした。初めて経験する環境だったからこそ、強い気持ちを保つことができたという風に感じています。男性の中に1人という状況は考えたことすらなかったので不安は大きかったんですけど、この役があるからこそ「負けてられないぞ」という気持ちを保つことができたので、すごく良かったです。

——普段の環境と全然違うと思ったことはありましたか?

普段は女子だけの環境の中でずっと活動していますし、メンバーが誰もいない環境なので、話す内容は全然違いました。私がけっこう人見知りというのもあって、田中さんや山田(裕貴)さんがいろいろ話しかけてくださったり。アイドルの活動に関して「ライブってどんな感じなの?」とか、普段あんまり改めてお話ししないようなことも話せたのですごく楽しかったです。

■「プレゼンがすごく上手い」と言われる

——オリンピックのお話ですが、自分に金メダルをあげるとしたら何の分野であげますか?

ええっ! なんだろう!? 金メダル……私、もらえるのかな!?(笑) あんまり自慢できるものでもないんですけど、好きなものに対して饒舌になるところがあって、よくメンバーやスタッフさんにアニメの話をして「プレゼンがすごく上手い」と言われます。だから、自分の好きなものに対してのプレゼン力に金メダルをあげたいです。

——最近成功したプレゼンはあったんですか?

母にプレゼンしました! よく動画は見てるんですけど、全然アニメとかに興味を持たないタイプで……でも私が好きなアニメを「こういう内容で面白いから見てみて!」とプレゼンして、何作品かはまらせました。「お母さんはこういう内容が好きだろうな」というのをリサーチして考えてプレゼンしてみたら、「めっちゃハマった! 次も見る」と連絡が来て。最近は私が原作から好きな『ホリミヤ』というアニメを、「主人公はこういう子で、こういうストーリーが展開されて、本当にいいから見てみて」と言ったら、見事にハマってくれました!

——お母さんの年代でもはまらせるのはすごいですね!

いつも「説明するの、本当に上手いよね」って言われるんです(笑)

■「自分って、こういう演技もできるんだ」

——大変なシーンがたくさんあったと思いますが、どんなシーンが印象に残ってますか?

本当に過酷なシーンが多かったです。中でも思い出に残っているのは、お父さんと口論するシーン。あんなに声を大きく出してお父さんに怒るなんてことも人生で初めてしたので、そこでは「自分って、こういう演技もできるんだ」と改めて気づいた瞬間でした。

——今回は主演の田中さんとのシーンも多かったと思いますが、一緒に演じていて「すごいな」と思ったのはどんなところでしたか?

演技に対する熱量を直にすごく感じました。常に演じる楽しさを持ってらっしゃる方で、本番までにもう、いろんなことをされるんです。テストで様々な演技をされて最終的に固まったものを本番で出す、自分が納得いく演技をするために一通りのことをやるという所が、すごく勉強になりました。

——小坂さんも、毎回違う演技を返すことになったのでしょうか?

田中さんの演技に合わせて、反応を変えてみたりしました。その場の空気を作るのが本当にすごくお上手な方なので、私たちもその波に乗って「ついてきます」という感じでした。原田選手がテストジャンパーの控え室に来て、西方さんと言い争うシーンでは、周囲でリアクションをする私たちも、2人の演技によってやっぱり思う感情が違ってくるんです。お二人が声を荒らげてる時と、ぼそっとイラついて言い争う時では自分たちの反応も変わるシーンだったので、思い出に残っています。

——ご自身が出演した映画ですが、実際に完成した作品を観てどんな思いになりましたか?

ストーリーも全部知ってるはずなのに、選手ひとりひとりに感情移入して見ることができる映画でした。脚本を読んだ時点で「やばい」と思うくらい感動したのに、完成した作品を見て目がうるっとなるシーンがあって、人の心を動かす力がすごく込められている作品だと思います。

私たちのように長野オリンピックを知らない世代の方にもぜひ見ていただきたいですし、体験された方でも「あの時こうだったなあ」という懐かしい思いになると思います。裏で頑張っている方の実話なので、何かに挑戦して頑張ることを諦めない素晴らしさが伝わる作品だと思うので、たくさんの方に見ていただきたいです。

■小坂菜緒
2002年9月7日生まれ、大阪府出身。2017年、けやき坂46(現・日向坂46)の2期生メンバーとしてデビュー。これまでの主な出演作品に映画『恐怖人形』(19年)、ドラマ『DASADA』(20年)など。現在、ラジオ番組 星のドラゴンクエストpresents 日向坂46小坂菜緒の「小坂なラジオ」のパーソナリティーを務め、個人写真集『君は誰?』(集英社)が発売中。