お笑い芸人の明石家さんまが企画・プロデュースした劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』が11日に公開を迎える。さんまが直木賞作家・西加奈子氏の小説に惚れ込み、映像化に向けて動き出してから5年、自身が「100点」と納得する作品が完成。女優の大竹しのぶが主人公・肉子ちゃんの声を演じ、元夫婦タッグも話題となっている。さんま、大竹、渡辺歩監督に、本作に込めた思いや制作裏話についてインタビュー。大竹と渡辺監督は、さんまのプロデュース力を絶賛した。

  • 映画『漁港の肉子ちゃん』について語る渡辺歩監督、大竹しのぶ、明石家さんま(左から)

本作は、漁港の船に住む訳あり母娘・肉子ちゃんとキクコの秘密がつなぐ奇跡を描いたハートフルコメディ。「普通が一番ええのやで!」が口癖という、底抜けの明るさでパワフルに生きる肉子ちゃんと、多感な年頃である小学5年生のキクコ。2人が精一杯生きる愛おしい姿に、笑って泣けて、そっと勇気をもらえる物語だ。

肉子ちゃんの声を大竹、娘・キクコの声を声優初挑戦のCocomiが務め、花江夏樹や下野紘、吉岡里帆、マツコ・デラックスらも声優として参加。そして、『ドラえもんのび太の恐竜 2006』(06)、『海獣の子供』(19)の渡辺氏が監督を務め、圧倒的クオリティと世界観で多くのファンを持つSTUDIO4℃がアニメーション制作を手がけた。

――さんまさんが劇場アニメ映画をプロデュースするのは本作が初めて。当初はドラマ化を考え、脳ドックを受けて「最も向いている職業は“画商”」と診断されたことでアニメ化を考えるようになったそうですね。

さんま:映像化が決まってから西加奈子さんが『さんまのまんま』に来てくださって、そのときに「あなたは昭和の北斎です」とわけのわからないことを言われ、その後、脳ドッグに行って「画商に向いています」と言われて。とんでもなく不思議なご縁でアニメを作ることになりました(笑)

――新しい挑戦をされて、ご自身について新たな発見や気づきはありましたか?

さんま:アニメについて少しでもわかったのは新しい発見。次またやらせてもらえたら、もう一歩アニメ界も踏み込めるかなと思いますが、難しいなと感じる部分もありました。

――本作の企画・プロデュースで大変だったことを教えてください。

さんま:本当にアニメは大変! 二度とやりたくないというくらい時間がかかる。構想から5年、2年前からアニメという形にして、監督がパパッと仕上げて完成するのかなと思ったら、半年経って「まだ10分しか仕上がっていません」と言われて。バラエティやドラマとは大きく違う。アニメはこういう世界なのかと。いい経験をさせていただきました。

――アニメならではの楽しさは感じましたか?

さんま:アニメの制作現場から参加して、画まで変えられるようになったらどれだけ楽しいか。「ここで肉子を壁にひっつけたい」、「キクコをぺっちゃんこにしたい」とか、アニメだからできることがたくさんある。今回もたくさんやっていただきましたが、まだ遊べるなと思っています。

――さんまさんは約30年前に『サンタクロースつかまえた!』『リリが見たやさしい虹』という2本のビデオアニメ作品を手がけられました。今回またアニメに携わり、アニメ技術の進化によって表現できたと感じていることはありますか?

さんま:監督の手腕、スタッフのすごさでアニメの進化を感じました。ちょっと言ったことを監督が理解して、自分の思っている以上に仕上げていただいて。宮迫(博之)がセミの声を演じているシーンで、「宮迫の『ミンミン』という声に、本当のセミの声をかぶせてほしい」とマネージャーを通じてお願いし、マネージャーは「監督に伝わらなくて宮迫さんの声だけになってしまいました」と言っていましたが、0号試写を見たらちゃんとセミの声をかぶせてくれていて「できてるやん!」って。やりたいことが伝わる感性を持っている監督で非常に助かりました。