投資を始めると、ESG投資というキーワードを見聞きする機会が増えています。特に長期での投資を検討すると重要なキーワードになって来るので、しっかりと理解することが求められます。今回はESG投資について初心者の方、これから投資を始める方でも簡単に理解出来るよう解説していきます。

ESG投資とは

そもそもESG投資の「E・S・G」とは何の略でしょうか。しっかりと理解せずに使っている方も多いと思います。ひとつずつ、確認してみましょう。

E…Environment(環境) 地球温暖化対策などに取り組んでいるかどうか

S…Social(社会) 地域社会への貢献や女性活躍を創出しているか

G…Governance(ガバナンス=企業統治) 収益を確保しつつ不祥事などを事前に防ぐ経営をしているか

この3つのキーワードの頭文字を取って「ESG」と呼ばれています。この言葉が初めて意識されたのは意外と古く、1999 年、当時のアナン国連事務総長が提唱した企業にとっての行動規範に UN グローバル・コンパクト(UNGC)が「ESG」の元になったと言われています。

20世紀までは企業に投資をするうえで大切だったのは利益額や利益率等の業績、負債額やキャッシュフロー等といった財務が、投資を判断する上での主な判断材料でした。

しかし、過剰な利益追求などは環境破壊や地球全体での富の格差を生み出すこととなり問題視されるようになりました。

そこで新しい投資判断として「ESG」が注目されるようになったのです。

ESGとSDGsの違い

似たような言葉でSDGs(Sustainable Development Goals)がありますが、こちらは企業だけではなく国連や各国政府などの目標なので、投資手法として用いるのが難しいようです。

特にSDGsにはGovernance(ガバナンス=企業統治)の概念が含まれていないので、色合いが少々違うようです。

【あわせて読みたい】
投資の記事で最近よく目にする「ESG投資」って何
本記事では、ESG投資の考え方、注目される理由など、ESG投資の基本を紹介しています。

ESG投資のメリット

それではESG投資のメリットはどのようなところにあるのか分析してみましょう。

▶世界中の資本がESGに向かっている

今やESGに取り組んでいない企業への投資を取りやめる投資家がほとんどです。逆にいうとESGに取り組んでいる企業へは世界中の投資家が注目をしています。

投資家は成長が見込める企業にお金を投入します、これが投資です。企業の成長にはお金が重要です。お金が集まる企業は様々な投資活動が出来るので、おのずと収益も確保が出来る良いサイクルになります。

このサイクルに個人も乗ることが投資を成功させる近道になります。

▶長期投資に向いている

個人の投資、特に20代~30代の若い世代は退職後のセカンドライフへ向けて30年前後の長期での投資の成功が求められます。ESGは先述したように、長期での持続性のあるビジネスモデルが投資の対象です。投資家は持続性だけではなく収益が上がるかとうかにも注目しているので、個人の長期での投資のビジョンと一致するのです。

これまでは一致することが少なかった投資家と個人の投資目的が合致する機会がこのESG投資によって訪れたのです。

▶社会貢献ができる

日頃、意識して取り組めることが少ない、また、大きな影響が与えることが出来た実感の少ない社会貢献を投資先が代わりに取り組んでくれるので、スケールの大きな貢献への実感が得られるのもメリットのひとつです。

たとえば「地球温暖化防止」に対しての二酸化炭素の排出削減は個人ではほとんど貢献が出来ませんが、大企業のほとんどが製造過程や流通過程で取り組んでいるので、貢献度も大きく目にみえて成果が解ります。また、それに関連した技術革新も見えてきますので、投資機会が膨らむ可能性もあります。

投資先の活動はホームページなどを確認すれば、すぐに解るのでより実感が深まります。

ESG投資のデメリット

メリットがとても大きく見えるESG投資ですが、デメリットはないのでしょうか?投資の世界ではメリットだけしかないということありません。ESG投資にもデメリットはありますので、しっかりと見極めて行きましょう。

◆短期的なリターンは狙えない

先述しているようにESG投資は長期での収益が期待できる投資なので、逆にいうと短期での収益が狙えない手法です。短期で収益が期待できるFX取引と比較してみると、その違いの大きさが理解できるでしょう。

ただ、そもそも投資の目的が違い、比較するものではないので注意も必要です。

◆投資先の選定が難しい

業績の見通しや財務諸表のデータを収集するのは比較的簡単に出来ますが、ESGに対する取り組み具合や進捗を投資視点に合わせて判断するのはとても難しいです。

個人の見解では「良くやっている」と思っても投資家たちの視点では「まだまだ」となるケースやその逆のケースも多々あります。また、取り組み自体が業績や財務に反映される点を見抜くのは専門家でも難しいと言われています。

個人が投資する際の注意点

「長期投資に向いてるいるのなら!」始めてみたくなるESG投資ですが、デメリットでお伝えしたように投資先を選択することがとても難しいです。個人が投資する際は選択に悩んでいるうちにタイミングを逸してしまうこともあるでしょう。

そこでおすすめなのはESGに取り組んだ企業を投資先とした投資信託です。現在、ネット証券でも10本以上の取り扱いがあり運用成績は良好です。是非、チェックしてみてください。

【あわせて読みたい】
投資の世界にもESGの時代が到来! 最新四季報で注目のESG銘柄は?
本記事では、株式投資におけるESGやSDGsの概要と、注目の銘柄について解説しています。

まとめ

新型コロナウイルスの世界的な流行から、投資環境は資産価格の乱高下の幅が広くなり、個人が投資をすると一喜一憂することが多くなってしまい、どこか落ち着かない状況です。そのような中でおすすめ出来る投資手法として、ESG投資があります。

ただ、個人の情報収集力では難しいのも確かです。そこで頼りになるのは投資信託です。ESGに特化した投資信託はこれからも増えていくことが想定されます。しかし、投資信託はパフォーマンスの良し悪しが思っている以上に現れるので、しっかりと見極めて行きましょう。

この記事を執筆したカウンセラー紹介


小峰一真(こみねかずま)

2級FP技能士/証券外務員2種/住宅ローンアドバイザー| 明治大学政治経済学部卒業

大手国内証券会社、外資系保険会社を経て、前職では独立系FP事務所に創業から携わっていました。資金計画作成、住宅購入相談、資産運用、保険相談など全般的に得意で、セミナー講師も担当しています。趣味はゴルフと読書、スポーツ観戦(横浜Fマリノス、明治大学ラグビー部を応援!)です。