取引先に送る文章や挨拶などでよく使われる言葉のひとつに「ご愛顧いただき」という表現があります。実は「愛顧」は使う相手を選ぶ言葉ですので、相手によっては不適切な使い方になってしまうため、意味や使い方を正確に理解してから使いたいものです。

この記事では、「ご愛顧いただき」の意味や使用例、類義語などをご紹介します。ビジネスシーンで使う機会が多い言葉だからこそ、この機会に正確な意味を理解しておきましょう。

  • 「ご愛顧いただき」の意味と成り立ち

    「ご愛顧いただき」の意味や使い方などを紹介する記事です

「ご愛顧いただき」の意味と成り立ち

「ご愛顧(あいこ)いただき」とは、「いつもひいきにしていただいて」という意味を持つ言葉です。店舗や商品、サービスなどのリピーターに対して、利用に対するお礼を述べる際によく使われます。

■「愛顧」と「いただき」それぞれの意味とは

「ご愛顧いただき」に使われている「愛顧」とは、「目をかけて引き立てること」で、引き立てられる側からいう言葉です。

「いただき」は「もらう」の謙譲語である「いただく」の連用形です。接頭語「ご」と「いただく」を組み合わせた「ご~いただく」で強い敬意を表す謙譲語表現となります。つまり「ご愛顧いただき」は「愛顧」の謙譲語表現です。

■どんな相手にも使えるわけではない

「ご愛顧いただき」に使われている「愛顧」とは、主にビジネスシーンで使われる言葉です。取引先や顧客へメールや手紙を出す場合、書き出しの言葉としてよく使われますし、プレゼンテーションなど集まりでの挨拶で用いられることもあります。

基本的に、経済的な引き立てに対するお礼として、依頼や注文をしてくれる相手に対して使用する言葉ですので、上司ら社内の人間に対しては使いません。使用する相手が限定されているという点に注意しましょう。

■「ご愛顧いただき」と「ご愛顧くださり」との違い

「くださり」は「くれる」の尊敬語である「くださる」の連用形です。「ご愛顧いただき」は自分が愛顧をもらったことを、「ご愛顧くださり」は相手が愛顧をくれたことを表します。

また、「ご~くださる」は強い敬意を表す尊敬語表現ですので、「ご愛顧くださり」は「愛顧」の尊敬語表現です。「ご愛顧いただき」も「ご愛顧くださり」もともに強い敬意を表す点では共通していますが、自分がへり下るのか、相手を立てるのかという点で異なります。

「ご愛顧いただき」「ご愛顧くださり」のどちらも敬語としては正しいですので、シーンに応じて使い分けてください。

  • 「ご愛顧いただき」の意味と成り立ち

    「ご愛顧いただき」は自社に注文や依頼をしてくれる相手に対してお礼を述べる言葉です

「ご愛顧いただき」の使用例

「ご愛顧いただき」は日常会話では使う機会が少ない言葉でもあります。だからこそ、正確な使い方を理解しておきたいもの。ここでは「ご愛顧いただき」の具体的な使用例をご紹介します。

■メールや手紙の冒頭で使う場合

・平素より弊社のサービスをご愛顧いただきまして、誠にありがとうございます
・いつもご愛顧いただきありがとうございます

メールの文章の書き出しでよく使われる言い回しに「いつもお世話になっております」という文章があります。この表現を「いつもご愛顧いただきありがとうございます」と変更すると、丁寧な印象に変わります。

■文章の中で使う場合

日頃よりご愛顧いただきましたことへの感謝の気持ちとして当キャンペーンの開催が決定しました

新作発表会などビジネスの集まりで、「ご愛顧いただき」という表現が使用されることがあります。「ご愛顧いただき」を入れると、普段ひいきにしてもらっていることに対するお礼の気持ちをスムーズに表せますので、ぜひ活用してください。

■締めの文章で使う場合

・長らくご愛顧いただき、誠にありがとうございました
・今後ともご愛顧いただけますようお願い申し上げます

「ご愛顧いただき」はメールや手紙、会議などの締めの文章にもよく使われる言い回しです。「どうかこれからもひいきにしてください」という気持ちが込められており、取引先や顧客に対する丁寧な挨拶として問題なく使えます。

  • 「ご愛顧いただき」の使用例

    「ご愛顧いただき」はビジネスでよく使われますので使用例を覚えておきましょう

「ご愛顧いただき」の言い換え例

「ご愛顧いただき」には言い換え可能な表現がいくつかありますので、一緒に覚えておきましょう。

■ご愛顧賜り

平素は格別のご愛顧を賜りまして、心よりお礼申し上げます

「賜る」とは「もらう」の謙譲語表現として使われる場合と、「与える」の尊敬語として使われる場合があります。上記の場合は「もらう」の謙譲語であり、強い敬意を表す言葉です。つまり「ご愛顧賜り」は「ご愛顧いただき」よりさらに丁寧な表現をしたい場合に適しています。

■お引き立ていただき

平素より当店をお引き立ていただき、感謝申し上げます

「引き立てる」には、「ひいきにして力添えする、特に目をかける」という意味があります。つまり「お引き立ていただき」には「ご愛顧いただき」と共通する意味があり、同じシーンで使える表現です。

■ご高配賜り

今後ともご高配賜りますよう、心よりお願い申し上げます

「高配」とは、他人を敬って、その心配りをいう言葉です。「ご高配賜り」は「いつも心配りをいただいて(くださって)」という意味があり、敬意を持って感謝の気持ちを示す表現になります。「ご愛顧いただき」より少し意味が広いものの、同じようなシーンで使えます。基本的に目上の人に対して使用する言葉として、覚えておきましょう。

■お力添えいただき

日頃より多大なるお力添えをいただきまして、心より感謝しております

「力添え」には、「他人の仕事を手助けすること」「力を貸すこと」などの意味があります。「お力添えいただき」は「ビジネスで協力していただいて」というニュアンスで使われることが多く、「ご愛顧いただき」と同様に取引先などに対して使われることが多い表現のひとつです。

  • 「ご愛顧いただき」の言い換え例

    「ご愛顧いただき」は言い換えできる類義語がいくつかあります

「ご愛顧いただき」の英語表現

「ご愛顧いただき」と同じ意味を持つ英語表現をご紹介します。

■ giving us your patronage

Thank you giving us your patronage (ご愛顧いただきありがとうございます)

「patronage」の意味は「引き立て」「後援」などです。そのため「giving us your patronage」は「ご愛顧いただき」の英語表現として使えます。ビジネスメールなどで活用してください。

■ doing business with us

Thank you for doing business with us (ご愛顧いただきありがとうございます)

「doing business with us」を直訳すると、「我々と一緒に仕事をする」という意味があります。取引先に「ご愛顧いただきありがとうございます」と伝える場合に、「doing business with us」は使える表現のひとつです。

  • 「ご愛顧いただき」の英語表現

    「ご愛顧いただき」の英語表現例も覚えておきましょう

取引先や顧客に日頃の感謝を伝える表現

「ご愛顧いただき」は、取引先や顧客に対して使う言葉のひとつ。自社の取扱商品をよく購入してくれる顧客や取引先など、経済的に引き立ててくれる相手に対してお礼の言葉として使われます。「お世話になっております」などのように、どんな取引先にでも使える言い回しではありません。

「ご愛顧いただき」はメールや手紙などにおいて、冒頭や文章の中、締めの文章などさまざまな場所で使えます。取引先に対して使う言葉ですので、言い換えできる表現も多いです。

「ご愛顧いただき」はビジネスでよく使うからこそ、正しく使いたい言葉。正確な意味を理解して、ビジネスシーンで使いこなしていきましょう。