棋聖戦を第4局までに防衛すれば最年少タイトル防衛記録更新となる

昨年、棋聖と王位のタイトルを獲得し、タイトルホルダーの仲間入りを果たした藤井聡太王位・棋聖。棋聖は将棋界最年少でのタイトル獲得、王位は最年少複数タイトル保持の記録を更新する快挙でした。それから約1年。早くもその2つのタイトル防衛戦の時期がやってきました。対するは現将棋界最強の挑戦者2人と言っても過言ではない、渡辺明名人と豊島将之竜王です。


藤井聡太王位・棋聖のダブル防衛戦日程

【第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負】

4月30日に行われた永瀬拓矢王座との挑戦者決定戦を制して挑戦者になった渡辺名人。前期、当時の藤井七段にこの棋聖戦で1勝3敗で敗れ、初戴冠を許してしまったのが渡辺名人でした。今期は前棋聖として本戦トーナメントから参加し、リターンマッチを決めています。

前期の五番勝負は名勝負の連続でした。その証拠に第48回将棋大賞において、名局賞として第1局が、升田幸三賞特別賞として第2局が選出されています。

また、決着局となった第4局では、自身が敗れた第2局と同一局面に渡辺名人が誘導し、改良案を披露。結果は渡辺名人にとって厳しいものとなりましたが、トップ棋士の意地を垣間見ました。さらに、その渡辺名人の渾身の研究すら超えていく、まだ17歳の青年の凄さを再認識させられたのは言うまでもありません。

今回の五番勝負には、藤井棋聖の最年少タイトル防衛記録がかかっています。この記録を保持しているのは、かつての最年少タイトル獲得記録保持者の屋敷伸之九段です。

屋敷九段が棋聖のタイトル保持者だった当時、棋聖戦では1年に2度タイトル戦が行われていました。屋敷棋聖は1990年8月1日に第56期棋聖戦五番勝負第5局でタイトルを獲得した後、90年12月11日から森下卓六段(当時)と第57期棋聖戦五番勝負を戦いました。そして、91年1月25日の第4局を制し、3勝1敗でタイトルを防衛。この時屋敷棋聖は19歳0ヵ月7日でした。

藤井棋聖は7月19日に19歳の誕生日を迎えます。五番勝負の日程は以下の通りです。

第1局:6月6日
第2局:6月18日
第3局:7月3日
第4局:7月18日
第5局:7月29日

第4局までに藤井棋聖が防衛を果たせば記録更新。第5局までもつれると19歳0ヵ月10日での防衛となるため、更新とはなりません。もちろん、藤井棋聖はこの記録を全く意識していないでしょうが(笑)

藤井棋聖と渡辺名人の過去の対戦成績は、藤井棋聖の5勝1敗。その内訳は第12回朝日杯将棋オープン戦決勝、前期棋聖戦、第14回朝日杯将棋オープン戦準決勝と、どれも大きな舞台ばかりです。

【お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負】

豊島竜王は王位リーグ紅組を4勝1敗で優勝し、5月24日に行われた挑戦者決定戦で羽生善治九段を破って挑戦権を獲得しました。

第59期王位戦でタイトルを獲得した豊島竜王でしたが、第60期で木村一基九段相手に失冠。そしてその木村王位からタイトルを奪取した藤井王位に、今期挑戦するという流れです。

豊島竜王は初戴冠を果たした第89期棋聖戦以降、第59期王位戦、第77期名人戦、第32期竜王戦、第5期叡王戦と、挑戦したタイトル戦を全て制しています。最強の挑戦者と言って差し支えないでしょう。

藤井王位と豊島竜王の対戦成績は、藤井王位の1勝6敗。藤井王位が唯一大きく負け越しているのが豊島竜王です。初対戦から藤井王位は6連敗を喫します。そして、今年の1月に行われた第14回朝日杯将棋オープン戦本戦トーナメントで、藤井王位がついに初白星を挙げたのでした。

王位戦の日程は以下の通りです。

第1局:6月29、30日
第2局:7月13、14日
第3局:7月21、22日
第4局:8月18、19日
第5局:8月24、25日
第6局:9月6、7日
第7局:9月28、29日

藤井王位は王位戦の開幕とともに、棋聖戦と並行してタイトル戦を戦うことになります。2つのタイトル戦の日程を合わせた表は、記事上部の「藤井聡太王位・棋聖のダブル防衛戦日程」のリンクよりご確認ください。

棋聖戦が長期化すると、藤井二冠は王位戦と互い違いに対局を行うことになります。研究のストックの確保という意味でも、対局や移動による体力消耗という意味でも、過酷な日程です。そして何より、挑戦者が現役最強候補の2人という厳しさ。藤井二冠は試練の夏を迎えることになります。

渡辺名人、豊島竜王を防衛戦で迎え撃つ藤井二冠。写真は順位戦B級1組1回戦のもの(提供:日本将棋連盟)
渡辺名人、豊島竜王を防衛戦で迎え撃つ藤井二冠。写真は順位戦B級1組1回戦のもの(提供:日本将棋連盟)