舞台『染、色』のフォトコール及び取材会が28日に東京・東京グローブ座にて行われ、正門良規(Aぇ! group/関西ジャニーズJr.)、三浦透子、岡田義徳、加藤シゲアキ(原作・脚本)、瀬戸山美咲(演出)が登場した。

加藤シゲアキ

加藤シゲアキ

同作は、小説『オルタネート』で第164回の直木賞候補にあがった加藤が2015年に上梓した短編集『傘をもたない蟻たちは』(KADOKAWA/角川文庫刊)の一編を舞台化。主人公・市村(正門)は周りに才能を認められ、彼女もいて、何不自由なく過ごす美大生だが、そんな毎日を退屈に感じながら日々を送っている。ある日、壁にグラフィティアートを落書きする謎の女性・美優と出会うと、彼女の不思議な魅力に魅せられた市村は、彼女と一緒に行動するようになり、退屈だった日常に変化が訪れていく。初主演の正門のほか、三浦透子、松島庄汰、小日向星一、黒崎レイナ、岡田義徳が出演する。

レポーターからの「クリエイターの加藤さん」という呼びかけを受け、「クリエイターの加藤シゲアキです」と自己紹介した加藤。「本来であれば去年公演のはずで、瀬戸山さんとも何度も打ち合わせして『すごく良い台本ができたね』という話をした次の日に中止になってしまって。『せっかく話し合って良いものを作れたのに悔しいですね』という話をしたのが昨年の末くらい」と経緯を明かす。

加藤はさらに「情勢がどうなるかわからないながらも、もう1度上演する機会をいただけた時にすごく嬉しかったですし、この1年いろいろあった思いを逆にエネルギー、バネにしていい作品にしたいというところで、瀬戸山さんとは、気持ちを一つにしてここまでやってこれたと思います。僕の思いを受け止めて演出していただいたので、すごくいいものができるんじゃないかなという気がしてます」と自信。この1年の間に著書『オルタネート』(新潮社)が「第42回吉川英治文学新人賞」に輝いたが、「何かと話題にしていただく機会が多かったので、そういう意味では良かったのかなと思います」と照れ笑いを浮かべた。

演出の瀬戸も「1年前にすごく良い戯曲ができたという手応えがあって、世に出せないことが本当に悔しかったんですけど、稽古を重ねて本番も明後日。原作もとても面白いし、戯曲はさらに深まっていてとても良い作品だと思うので、実際に演じてもらって、作品が生き始めたなという感じがしています」と手応えを感じている様子。加藤は役者としても瀬戸山とタッグを組んでいたが、今回は「最初から僕が出ないプロジェクト」を希望していたという。

加藤は「僕が出ることで僕のイメージ通りに出来るけど、そうじゃないのが見たいと思っていて。原作も自分の作品なので、手を離れたときに僕の想像を超えるものにしてくれる演出家の方にして欲しいということで話が進んでいたんです。瀬戸山さんとは1度ご一緒して、間違いなく良い作品にしてくださるだろうと思ったので、脚本家に徹することが喜びだと今回は感じてました」と、改めて意図を説明した。

実際に原作・脚本を手がけた作品が上演されることについては「感慨深いものがあります。想像を超えて良い作品になっていますし、キャスティングが決まる前に台本が出来ているので、台本を読んでこの仕事を受けるというキャストの方もいると思う」としみじみ。「お芝居しやすい脚本というより、『読んでいて面白い作品にする』のが個人的なミッションで、楽しい台本にしようとしてめちゃくちゃ細かいト書きも書いて……僕はラブレターだと思ってみなさんに送ったんですけど、瀬戸山さんは挑戦状だと受けとったようです」と笑いを誘う。「無茶ぶりのようなト書きを忠実に再現しようとしてくださる意地みたいなものが見ていて楽しいし、変わったところは『ここはさすがに無理だったんだろうな』という面白さもあったりします。『変えてもいいですよ』と言ってるんですけど、瀬戸山さんもすごく真摯に『まずはそのままやります』と。『染、色』を愛してこの作品に臨んで下さってるんだなと思います」と、役者とは違う視点の面白さを語った。