フォルクスワーゲン(VW)の新型「ティグアン」に試乗してみると、マイナーチェンジで進化している点と、もう少し熟成を待ちたい点の両方がはっきりと見えてきた。例えばトランスミッションのDSGは明確によくなった部分で、その完成度には感動すら覚えたほど。以下、詳しくレポートしていきたい。

  • フォルクスワーゲン「ティグアン」

    マイナーチェンジでどうなった? フォルクスワーゲンの新型「ティグアン」に試乗!(本稿の写真は撮影:原アキラ)

正常進化? マイナーチェンジの中身は

VWが日本国内でラインアップするSUVは、小さい方から「Tクロス」「Tロック」「ティグアン」の計3台。同社では前2台を“コンパクトSUV”、ティグアンを“スモールSUV”と呼んでサイズ感を表現している。

欧州にはティグアンの全長を伸ばした3列シート7人乗りの「ティグアン オールスペース」があるけれども、日本には導入していない。少し前まではV6やV8、W12といった大排気量エンジンを搭載した大型SUV「トゥアレグ」を日本でも売っていたが、高級すぎる装備や価格がVWのブランドイメージにそぐわないとして、今は売らなくなってしまった。なので、日本で買える最も大きいVW製SUVといえば、今はティグアンなのだ。

さて、4年ぶりにマイナーチェンジした今回の新型ティグアンは、全長が15mmだけ伸びて4,515mmとなったが、全幅1,840mm、全高1,675mm、ホイールベース2,675mmは変更なし。SUVらしくスクエアで使いやすいサイズ感をキープしている。

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  • サイズはほとんど変更なし。フロントセンターにはVWの新しいロゴが

エンジンは従来型の1.4TSI(ガソリン直噴ターボエンジン)から100ccアップの1.5TSIに変更。ツインクラッチのトランスミッション「DSG」は6速から7速に多段化した。運転支援システムやインフォテイメント面も変更し、VWでは安全性、快適性、利便性の全てにおいて正常進化を遂げたモデルだと説明している。そんな自信作を静岡県御殿場市付近の一般道や高速道路、砂利道などで走らせて、進化の具合を確かめてみた。

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    ガソリン直噴ターボエンジンは排気量が100ccアップして1.5Lに

著しいDSGの進化

グレードは「TSIアクティブ」(407.9万円)、「TSIエレガンス」(483.9万円)、「TSI Rライン」(503.9万円)、「R」(684.9万円)、導入記念の特別仕様車「ファーストエディション」(524.9万円)の5種類。試乗したのは新色の「キングズレッドメタリック」をまとった量販モデルのTSIエレガンスだ。

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    試乗したのは「キングズレッドメタリック」の「TSIエレガンス」だ

エクステリアはLEDのマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」、VWの新ロゴを配した新形状のフロントグリル、「TIGUAN」のエンブレムと新ロゴをセンターに配したリアハッチなどで新型であることを主張。インテリアはフルデジタルのコックピットや新ロゴをセンターに配した新形状のステアリング、タッチパネルとスライダーで操作する(運転中、視線を移さずに操作するのはちょっとした慣れが必要)3ゾーン オートマチックエアコンディショナー「Air Care Climatronic」などが新しい。

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    LEDのマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」

シートはオプションの「レザーシートパッケージ」(28.6万円)を装着していて、「パンッ」と張った皮の感触が欧州車らしく、上質さを伝えてくる。エレガンスのシートは運転席側が電動、助手席側が手動になっていて、ちょっと昔のVW車のようで面白かった。

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  • 「レザーシートパッケージ」を装着した新型「ティグアン」のインテリア

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  • 広々とした荷室

さて、走り出してすぐに気がついたのだが、従来のツインクラッチ式DSGで気になっていたゼロスタート時のもたつきが、今回は全く感じられなかった。新型ティグアンは通常のAT車のように、滑らかにスーッと動き出す。これはいい! マイチェン前の6速DSGは乾式単板で、7速DSGの新型では湿式多板に機構を変更したというので、その効果が如実に現れているようだ。欠点克服。VWのDSG車に乗った時にいつも原稿に書いていたギクシャク感が、ついになくなった。スバラシイ!

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    DSGの進化により、走り出しのギクシャク感が解消されていた

さらにいうと、DSGは1速増えたことにより、さらに細かくステップを刻んで変速するようになったので、エンジンが発生するトルクのおいしいところを常に使える。そのため、最高出力150PS、最大トルク250Nmの1.5リッターTSIは無駄なく、しかも余裕を持って1,520キロのボディを加速してくれる。ちなみに、80km/hの巡航時、エンジンは1,500rpm程度で粛々と回っていて、そんな時は4気筒→2気筒の気筒休止システムが作動していたかもしれないのだが、全く気が付かなかった。ボディの遮音と振動対策も万全のようで、そこからアクセルを踏み込んでみると、エンジンは遠くでブーンと回っている感じでするすると車速を伸ばしていく。

試乗日の天候は小雨で路面が結構濡れていたけれども、水跳ねの音がきっちりと遮断されていて、車内はとても静か。砂利道に侵入しても同様だった。

足回りは、ちょっと硬めだ。路面の悪いところではコツコツというショックを乗員に伝えてくる。乗り心地がいいはずの18インチタイヤを履くエレガンスよりもタイヤハイトの低い20インチを履く上位モデルには、運転状況や路面に応じてショックアブソーバーの減衰力を瞬時に調整するアダプティブシャシーコントロール(DCC)搭載車の用意がある。そちらに乗ったジャーナリストの感想では「とても滑らかな乗り味だった」との報告があったので、スタンダードなサスペンションのエレガンスでは、少し差をつけられた部分かもしれない。

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    エレガンスは235/55R18サイズのピレリ「SCORPION VERDE」を装着

新機能「トラベルアシスト」を試してみたが……

今回のマイチェンでは、ステアリング左スポークにあるボタンを1度押すだけでレベル2相当の運転支援システム(0~210km/hで作動)がただちに起動する「トラベルアシスト」を搭載したことが大きな進化ポイントだ。もちろん、試してみた。

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  • ステアリング左スポークのボタンを押すだけで「トラベルアシスト」が起動。この使いやすさはすばらしいのだが、はたして精度やいかに

御殿場ICから東名高速に乗り、「トラベルアシストが有効」の表示を見て、すぐにボタンを押した。事前のプレゼンでは、「ボタンを押したらすぐにビシッと車線中央を走ります」との説明だったので、そうした走りを期待したのだが意外や意外、車線いっぱいとまではいかないけれども、ティグアンはゆったりと蛇行しながら走り始めた。それは、数年前のレベル2の「カクン、カクン」という角張った動きではないし、車線をはみ出すわけではないので危険でもないのだが、ユルーイふらつきがいつまでも続いてしまう。ドライバーを交代してみても症状は同じ。操作に間違いはないはずだ。

ステアリングはトルク式から静電容量センサー式になっていて、作動中は軽く手を添えているだけでよくなったのは嬉しいのだが、こうした動きを見せるので、手先についつい力が入ってしまう。

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  • 白線内ではあるのだがゆったりと蛇行するような走りが気になった「トラベルアシスト」。個体差なのか熟成不足なのかは不明だが、改善が望まれるポイントだ

試乗を終えてVWの商品企画担当に尋ねてみると、全部ではないけれども、中にはそうした動きを見せる個体があることを認めてくれた。原因は制御の部分なのか個体差なのか、まだ解明できていないそうだ。報告を待ちたい。

トランスミッションやエンジン、サスペンションなど、走りの基本部分では優れた性能を見せてくれた新型ティグアン。室内や荷室は変わらず、十分なサイズを確保している。トラベルアシストが本来の性能を発揮してくれれば、文句なしにすばらしい出来栄えといえたのだが。