京成トラベルサービスは5月22日、京成電鉄の後援で「京成線ミステリーツアー」を開催した。出発地は宗吾車両基地、終着地は八千代台駅、ツアー所要時間は約2時間30分ということ以外は発表されておらず、車両も行程も「当日のお楽しみ」とされたツアーに、報道関係者らも同乗した。

  • 京成電鉄の新型車両3100形。「京成線ミステリーツアー」の貸切列車に

    京成電鉄の新型車両3100形。「京成線ミステリーツアー」の貸切列車に

当日の配布資料によると、今回は5月10~13日の期間に179名の募集を行い、366名から応募があったという。抽選が行われ、選ばれた参加者のうち170名がツアーに参加した。新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、出発前に列車内の消毒を行い、受付時には参加者の検温も実施。ツアー中は密接防止の案内を行い、参加者にマスク着用と手指の消毒をお願いするなど、対策を行った上での開催となった。

出発地の宗吾車両基地に入ると、行先表示に「臨時」と表示されたツアー使用車両がすでに待機していた。今回の「京成線ミステリーツアー」で乗車する車両は、おもに成田スカイアクセス線経由のアクセス特急で活躍する3100形。2019年に登場した新型車両だ。

3100形の貸切列車は10時ちょうどに宗吾車両基地を出発。宗吾参道駅1番線にいったん停車した後、トンネルのある京成成田方面へ走り出した。転線を終えると、ぐんぐん速度を上げ、公津の杜駅を通過。カーブの多い区間を越えつつ、JR成田線の下をくぐり、京成成田駅も通過する。主要駅を通過する際、京成トラベルサービスによる車内アナウンスが行われ、駅周辺の観光情報が紹介された。

  • 3100形の貸切列車は宗吾参道駅を発車し、京成成田方面へ

京成成田駅を通過した後、再び加速し、住宅や緑のある沿線をトップスピードで走行。京成成田駅と空港第2ビル駅・東成田駅との間に駒井野分岐点があり、通常、成田空港行は左に、東成田・芝山千代田行はまっすぐに進路を取る。京成トラベルサービスによるアナウンスも、「どちらの方面に向かうか予想しながら、車窓の風景をお楽しみください」と参加者に呼びかける。間もなく駒井野分岐点だ。さあ、どちらに進むのか…。

3100形の貸切列車はポイントを直進し、東成田方面へ進路を取った。その後、トンネルに入り、間もなく東成田駅へ。いったん停車するが、すぐに発車して芝山鉄道線に入り、芝山千代田駅へ向かった。東成田~芝山千代田間はたった1駅間、2,2kmしかないが、京成電鉄とは別会社である芝山鉄道の路線となっている。トンネル内で単線になり、右に左に曲がりくねるトンネル内を走っていく。

  • 駒井野分岐点を直進し、東成田駅へ。その後、トンネルを抜けて芝山千代田駅へと進んだ

やがてトンネルを抜け、貸切列車は10時24分、最初の目的地である芝山千代田駅に到着した。3100形による芝山鉄道線および芝山町内の走行はこのツアーが初とのこと。アナウンスでも、「今回ご乗車いただいたお客様が初めて、3100形で芝山鉄道線に入線したということになります。おめでとうございます」と放送された。

芝山千代田駅では5分間、ホームを自由に見学できる時間が取られた。ホームからは成田国際空港の飛行機がよく見える。3100形は普段、空港第2ビル駅の手前から地下に入ってしまうため、飛行機と一緒に撮影できる機会は珍しい。3100形と遠方に見える飛行機、芝山千代田駅の駅名標を絡めた写真を撮影する参加者も多かった。

  • ツアー参加者でにぎわう芝山千代田駅。3100形と飛行機、駅名標を一緒に撮影する参加者の姿も

10時34分、貸切列車は芝山千代田駅を発車し、約3分で東成田駅へ。「京成線ミステリーツアー」の第2の目的地は東成田駅だった。ここで約1時間の見学時間が取られ、全員が下車。3100形はいったん回送されるが、すぐに戻って来る。

東成田駅は1978(昭和53)年に成田空港駅として開業。現在の成田空港駅が開業するまで、京成電鉄における空港への玄関口となっていたが、現在の成田空港駅が開業した1991(平成3)年に東成田駅へ改称された。広いコンコースの割に駅構内は薄暗く、普段は少々寂しい雰囲気だが、今日はツアーということもあり、参加者らでにぎわった。各世代の「スカイライナー」のポスターが掲示され、これに興味を示すこどもたちもいた。

  • ツアー参加者らでにぎわう東成田駅。ちなみに、東成田駅と空港第2ビル駅を結ぶ連絡通路もある

東成田駅構内にて、オリジナルグッズの販売も実施。京成電鉄と京成トラベルサービスの物販ブース、芝山鉄道の物販ブースがそれぞれ設けられ、どちらのブースも長い列ができていた。

地上への階段付近にて、グッズの抽選会も行われた。参加者の着席する座席番号に応じて当選番号が読み上げられ、該当する参加者に3100形オリジナルグッズ(7名)、京成バラ園の入場券(5名)、レールのスライス(5名)がプレゼントされた。

  • 京成電鉄と京成トラベルサービス、芝山鉄道がそれぞれ物販ブースを設置。グッズの抽選会が行われた

通常は立ち入ることのできない旧成田空港駅時代の未公開エリアも開放された。仕切りの扉に入ると、共用部分以上に暗い空間で、床のコンクリートがはがれた部分もありつつ、旧成田空港駅時代をしのばせる設備や資材などが大量に保管されている。もともとあった有人改札が取り外され、そのままの状態で令和の時代まで残されていたことがわかる。

  • 旧成田空港駅時代がしのばれる未公開エリア。各種案内表示がそのまま残る

  • 非常に暗く、寂しささえ感じるが、貴重なものが多く残っている

足もとに注意して階段を下りると、そこは旧スカイライナー専用ホーム。現在も供用されているホームとは柱を隔てて隣に現存しているが、コンコースと同じく当時の駅名標や広告がほぼそのまま残り、まるでここだけ時間が止まったかのよう。先ほど回送された3100形が旧スカイライナー専用ホームに入線しており、旧成田空港駅時代に時を越えて未来の電車が現れたかのような、非常に面白い光景を目の当たりにした。

  • 旧成田空港駅時代のスカイライナー専用ホームに、令和の新型車両が入線

  • 駅名標、広告、時刻表も当時のまま。字体に時代を感じる

見学時間中、乗務員が参加者のリクエストに応え、3100形の前面・側面にさまざまな種別・行先を表示する場面もあった。たとえば、「エアポート急行 逗子・葉山」は京急線に実在するものの、京成電鉄の車両では普段運行されない。他にも「アクセス特急 千葉中央」「各駅停車 京成金町」など、めったに見られない組み合わせの表示を見られた。参加者からも好評で、次々に入れ替わる行先表示を撮影して楽しむ人も多かった。

  • 通常は見られない列車種別と行先の表示もイベントならでは

各々の目線で東成田駅の旧成田空港駅時代の設備を堪能した後、3100形の貸切列車は11時38分に東成田駅を発車。しばらくの間、京成本線を走行した。

  • 京成佐倉~京成臼井間ののどかな沿線を進む。この時期は水田に張られた水鏡が美しい

勝田台駅にさしかかったところで、間もなくツアー終了とのアナウンスが流れた。車窓風景も住宅地の様相に。12時14分、3100形の貸切列車はツアーの終着駅、八千代台駅に到着。改札外にて、参加者全員にノベルティグッズがプレゼントされた。なお、受付時には参加者全員にユアエルム八千代台店で使えるクーポン券もプレゼントされており、解散後にユアエルムで買い物する場合、500円分お得になった。

  • 車窓風景はだんだんと住宅地の様相に。12時14分、ツアー終着駅の八千代台駅に到着

今回の「京成線ミステリーツアー」は、おもに成田スカイアクセス線経由で運行される3100形の貸切列車に乗車し、芝山千代田駅と東成田駅を楽しむ内容だった。3100形による初の芝山鉄道線入線、東成田駅の旧スカイライナー専用ホームの見学と、貸切列車ならではの面白い企画だった。八千代台駅に到着する前の最後のアナウンスでは、「京成トラベルと京成電鉄では今後も皆様にお楽しみいただけるツアーを企画してまいります、ぜひご期待ください」と締めくくられた。