FOOD & LIFE COMPANIESは13日、都内で事業戦略発表会を開催。今後の成長戦略を示すとともに、スシロー、京樽、海鮮三崎港など各ブランドが具体的な取り組みについて紹介した。また、世界で同時に開催するブランド合同キャンペーン『あっぱれ、日本! 超すし祭』についても詳細が明かされている。
■海外展開を加速
会の冒頭、登壇したFOOD & LIFE COMPANIESの水留浩一社長は、上半期の決算が増収増益を達成したことに触れ「これは取引先様、現場のスタッフが色んなところで努力してくれた結果」と感謝した。
同社は2021年4月1日より社名をFOOD & LIFE COMPANIESに変更し、企業理念を『変えよう、毎日の美味しさを。広めよう、世界に喜びを。』と定めている。これについては「食を通じてお客様の日々の生活、ひいては人生に喜びを届けたいという想いです」と水留社長。同社の今後の方針としては、視野を広めにとりながら、先につながる施策を打っていくと説明する。
同社では、数多くの養殖業者と複数年契約を結び、安定した価格で継続的に魚を購入、漁業者の経営を助けつつ自らのチェーン店にも高品質な魚を安定的に供給してきた。業者からは「スシローのために新しい魚種の養殖に取り組む」といった声も聞かれているという。この「持続可能な調達」の取り組みを、今後、さらに強化していく。
このほか、海外展開も加速する。2021年5月13日現在で、海外の店舗数は49店に到達。すでに各地で高い評価を得ているとした。同社では今年度中を目標に、中国本土にも第1号店を出店したい考え。水留社長は「生魚をお刺身にして食べる、寿司にする、という食べ方は日本発の大きなコンテンツ。日本産の魚を海外でも食べてもらうべく、海外展開のスピードを加速していきたい」と意気込む。
■各ブランドの展望
続いて、あきんどスシロー 代表取締役社長の堀江陽氏が登壇。名店の匠とコラボし、回転すしの常識を超える逸品を提供するプロジェクトの続編『匠の一皿 第二章 独創』篇をスタートさせたこと、また販売のみを行うテイクアウト専門店『スシロー To Go』を東京にも進出させたことなどを紹介した。さらに新たな挑戦として、スシローの大都市出店を加速させていると報告。新宿三丁目店(3月18日)、梅田茶屋町店(4月22日)、渋谷店(6月10日)に加えて、東京駅八重洲口店もオープンを控えている。イートインとTo Goを併設させたハイブリッド型の店舗になる予定だという。
京樽 代表取締役社長の石井憲氏は、茶きん鮨、上方鮨をブラッシュアップさせるとともに、持ち帰りのノウハウを生かしたリブランディングにより、グループにシナジー効果をもたらしたいと意欲を見せる。「京樽に歴史はありますが、変えてはいけないモノと、変えなくてはいけないモノを社内で議論し、問題を浮き彫りにして、新たな視点で事業に取り組んでいきたい」と石井氏。また海鮮三崎港ブランドでは、都市型・中価格帯モデルを磨き上げる。各店舗に技術を持った職人がいる強みも活かしていく。目の前で握るライブ感を大事にし、鮮魚の店内調理にもこだわっていく、と話していた。
最後にFOOD & LIFE INNOVATIONS 代表取締役社長の木下嘉人氏が登壇した。緊急事態宣言下で酒類が提供できない大衆寿司居酒屋 鮨・酒・肴 杉玉では現在、寿司を中心とした食事を提供している。そこで気になる今後の事業戦略だが、規模を縮小するのではなく、向こう1年で少なくとも15店舗の新店舗を出店予定だという。「コロナの環境下ではありますが、その先を見据えた出店戦略でしっかり成長をつくっていきます」と木下氏。グループ全体の調達力を活かし、良い寿司を安く提供することで圧倒的なコストパフォーマンスを実現。また白木作りの内装など店舗づくりにもこだわり、利用シーンを選ばない居酒屋を拡大していきたいとアピールした。
さらに新業態として、『むすび寿司』のオープンを発表した。醤油も箸もいらない、どこでも食べられる、がコンセプト。木下氏は「おむすびのような形の寿司で、新たな寿司の在り方を提案します」と説明した。
■あっぱれ、日本! 超すし祭
さらにFOOD & LIFE COMPANIESでは、スシロー(国内 / 海外)、京樽、海鮮三崎港、杉玉、むすび寿司の5ブランド合同キャンペーン『あっぱれ、日本! 超すし祭』を世界 約900店舗で同時開催する。5月14日よりスタートする第1弾では、静岡県 八洲水産の「まぐろ」、青森県 オカムラ食品工業の「サーモン」、鹿児島県 小浜水産の「かんぱち / ひらまさ」といった、渾身の超絶品ネタを使用した商品ラインナップで臨む。以下に、メニューのほんの一例を紹介したい。
事業戦略発表会では、オンラインで八洲水産、オカムラ食品工業、小浜水産と中継を接続。各生産者からは「今後、海外展開するときの有力メニューになりそう」「地元の漁業関係者に勇気と元気を与えられる」「全世界に向けて、我々のつくった魚を販売できる。いまからワクワクしています」といった反応が聞かれた。
各生産者に向け、水留社長は「魚に対して真摯になり、良いものを作ろうと皆さん真剣に向き合っていただけている。だから我々としても、いただいた素材を大事に使っていきたい。この美味しさを国内だけでなく、海外にもしっかりと広めていきます」と約束。
そして最後に「この元気のないときだからこそ、ただ下を向いて耐えて待つのではなく、お客様には安心安全のなかで美味しいものを食べてもらいたい。そんな想いで今回、このキャンペーンを発表しました。これからも新しい食の世界を提案して、世の中が少しでも明るくなるように尽力していきたいと思います」と結んだ。
■回転寿司が強い理由は?
メディアの質問に、水留社長が回答した。
FOOD & LIFE COMPANIESでは、新規事業を継続するか否かの判断がとても速いが、何を基準にしているのか、という問いに水留社長は「いつも2~3店舗くらいでテスト展開して、各店舗でしっかりビジネスとして成立できるかどうかを見定めます。できれば全て違うロケーション、形態で店舗を出して検証して、いけるようなら5~10店舗に増やす。そんな形で、ステップを踏みながら展開しています」と説明。
コロナ禍で外食産業が苦戦するなか、回転寿司が強い理由は、と聞かれると「ご自宅でお楽しみいただける食事とどれだけ違う食事を提供できるか、つまり店舗に来ないと楽しめないものが提供できているか、を大きな要素と考えています。ご家庭でも、お刺身を用意して、シャリをつくって、お寿司をつくることはできますが、回転寿司はレーンがあり、色々なネタが回り、好きなものを好きなだけ取ることができ、サイドメニューにデザートもあり、といったことが体験できる。ご家庭では、なかなか再現しにくい。そうしたエンタメ性のようなものが、大きく効いているのではと考えています。これに加えて、寿司はテイクアウトにも適している。イートインの強さ、テイクアウトの強さ、その両方を持っているのが大きいのかな、と思います」と解説した。