「虚勢」は「見せかけだけの威勢」や「うわべだけの勢い」などを意味する言葉です。「虚勢を張る」という表現は一般的ですね。「見栄」と混同されがちですが、両者にはちょっとしたニュアンスの違いがあります。正しく理解しておけば、この先きっと役立つはず。
本稿では虚勢の正しい使い方や類語、英語表現などについて、くわしくご紹介します。
虚勢の意味
虚勢(きょせい)は「表面だけの勢い」や「見せかけの勢い」を意味する言葉です。一般的には「虚勢を張る」と言い、「自分の弱いところを隠し、威勢のあるふりをすること」を表します。相手のことを「中身がない」と非難する表現なので、面と向かって使うのは失礼にあたります。
なお、同じ「きょせい」と読む漢字で間違えやすいのが「去勢」です。動物の生殖腺を取り去って本来の機能を失わせることで、犬猫の去勢手術はこちらに当たります。注意しましょう。
虚勢の使い方と例文
虚勢の例文を3つご紹介します。
「彼は、自分の実力不足を悟られないように虚勢を張っている」
実力がないにも関わらず、それを悟られないように威張っている人を指します。このような人はビジネスシーンでも時々見かけるのではないでしょうか。
「父は虚勢を張ってばかりいる人だ」
虚勢を張って強く見せていても、その内面は弱く脆いと批判しています。どことなく切ない情景が目に浮かんできますね。
「私は気の弱さを隠すために虚勢を張ったが、相手には通用しなかった」
うわべだけ取り繕ってみたが、相手に悟られてしまったという状態です。
虚勢と見栄の違い
虚勢と見栄は、どちらも「虚勢を張る」「見栄を張る」と同じような言い回しで使われますが、意味は少し異なります。
虚勢
虚勢は「うわべだけの勢い」を指すので、主に「内面的な弱さ」を隠すときに使います。
「弱い犬ほど虚勢を張ってよく吠える」
「肝試しは怖かったが、虚勢を張って参加した」
「怒鳴り散らして虚勢を張る」
見栄
見栄は「見た目」を指し、「人からの評価を気にして外観を繕う」という意味合いが含まれます。内面的な弱さを隠していばるのが虚勢、周りからどう見えるかを気にして外観を飾り立てるのが見栄です。
「お金がないのに見栄を張ってブランド物を揃えている」
「身長170cmなのに、見栄を張って175cmと言った」
「彼は見栄っ張りだから人に嫌われる」
「虚勢を張る」も「見栄を張る」もニュアンスは異なるものの、どちらもあまりいい意味では使われません。うっかり面と向かって使わないよう注意しましょう。
虚勢の類語
虚勢の類語をご紹介します。どの類義語も「見せかけだけの」や「強がり」という意味合いを含んでいるのがポイントです。
やせ我慢
やせ我慢は、「無理に我慢をして平静を装うこと」を意味する言葉です。本当は欲しい物があるのにじっと我慢をして平気な顔をしたり、同情を嫌って援助の拒否をしたりするときなどに使います。なお、「やせ我慢」の「痩せ」は、「貧しく生活の苦しい人が我慢する姿」が由来とされています。
空威張り
空威張り(からいばり)は、「実力がないのにうわべだけ強そうにすること」を表す言葉です。「うわべだけ」という意味合いが「虚勢」と同じなので類語として使えます。
こけおどし
こけおどしは、「見せかけだけは立派で中身のないこと」や「あさはかな手段」を意味する言葉です。漢字で書くと「虚仮威し」となるので、「嘘」や「仮」による威しということになります。
空元気
空元気(からげんき)は、「うわべだけ元気よく見せること」や「見せかけの元気」などを意味します。落ち込んでいるのを悟られまいと元気なフリをした、という経験がある方も多いのではないでしょうか。意味は似ていますが、虚勢ほど悪いニュアンスを含みません。
虚勢の反対語
ここからは虚勢の反対語をご紹介します。
実勢
実勢(じっせい)は、「見せかけではなく実際の勢力」を意味する言葉で、主に「実勢価格」などの言葉で用いられます。
たとえば、メーカーが希望する販売価格「希望小売価格」に対して、消費者が実際に目にする価格は「実勢価格」と呼ばれています。また、不動産の売買評価額に関しては、市場で実際に売買されている取引価格のことを「実勢価格」と呼んでいます。
「虚勢を張る」のもほどほどに
虚勢は「見せかけだけの威勢」や「うわべだけの勢い」などを意味する言葉です。見栄と意味合いが似ているだけではなく、「虚勢を張る」や「見栄を張る」という言い方もほぼ同じなので、それぞれのニュアンスを把握しておきましょう。
身のまわりでも虚勢を張る人を見かけますが、実勢という言葉が似あう人になれるよう、心がけたいものですね。