漫画家の久保ミツロウ、コラムニストの能町みね子、音楽クリエイターのヒャダインによるフジテレビのトークイベント『久保みねヒャダこじらせオンラインライブ』が、現在のオンライン形式になって5月15日の開催で1年を迎える。

2017年9月に地上波放送を終了してから、月1回のトークイベントをコツコツと重ね、半年後にまさかの番組復活を果たしたかと思えば、仙台と豊橋で地方公演を開催するまで展開が拡大。昨年にはコロナの影響でイベント中止を余儀なくされると、オンライン形式でまたも復活し、番組開始から8年が経過しようとしている。

何度もピンチに見舞われながら、スタイルを変えて何としてでも継続するこの原動力は何か。演出・チーフプロデューサーのフジテレビ木月洋介氏に話を聞いた――。

  • 『久保みねヒャダこじらせオンラインライブ』本番中の(左から)能町みね子、久保ミツロウ、ヒャダイン (手前右)木月洋介氏

    『久保みねヒャダこじらせオンラインライブ』本番中の様子 (左から)能町みね子、久保ミツロウ、ヒャダイン (手前右)木月洋介氏

■最初は予定されていた放送枠で“実験”

木月氏いわく、「綾瀬はるかの帳消し力」に代表される“パンチワード”を繰り出す久保、自分なりの目線で世の中を解釈し“問題提起”する能町、この2人を猛獣使いのように仕切るMC力を見せながら自らの“闇”も覗かせるヒャダイン――そんな3人が地上波でほとんど使えない自由すぎるトークをフジテレビのスタジオで月1回公開収録で行ってきた『久保みねヒャダこじらせライブ』は、昨年2月に「VOL.28」まで開催されたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、翌3月が中止。その後、緊急事態宣言が発出され、4月も中止が決まった。

この時点で、「これはもうオンラインに切り替えたほうがいいな」と考えた木月氏。「まず仕組みを考えようとなって、イベントにせず、3人が自宅からZoomで参加する形で収録だけしたんです」と、予定されていた放送枠で“実験”することにした。

「3人には『これで面白かったら1時間の番組にします。そんなに盛り上がらなかったら30分にして、残りを総集編にします』と言っていたんですが、実際にやってみたらいつも通り面白くて、“これは行ける!”となったんです」

ちょうどその頃、ライブ動画配信サービス「PIA LIVE STREAM(ぴあライブストリーム)」が立ち上がる話があり、同サービスにとって初案件として、5月30日に第1回のオンラインライブ開催が実現した。

今や多くのアーティストや芸人らがオンラインライブを行っているが、それに先駆けてのスピード感。「あの3人が何でもやってくださるのが大きいですね。非常にフレキシブルなので、新しい挑戦がしやすい」という土壌が、『久保みねヒャダ』にはあるのだ。

  • (C)フジテレビジョン

■千葉雄大のゲスト回で最高観客数を記録

このオンラインライブによって、観客数が飛躍的に増加するというメリットがあった。リアルイベントでは、2つのスタジオを駆使して約1,400人が満員だったが、千葉雄大がゲスト出演した 20年11月1日の公演は約4,500人が視聴。「地方の方や、お子さんがいて会場に来れないという方が見られるようになったのと、時間の合わなかった方も追っかけ配信で見られるのが大きいですね」と手応えを語る。

これだけの集客があると、スポンサーも付くようになり、「これも新しいことをやろうと思っているスタッフが多くて、頑張ってくれました。普通はいろんな調整が入るので時間がかかりますが、“挑戦の場”という意識があるので、すぐに対応することができたんです」という。

オンラインになって3回目まで、3人はそれぞれ自宅から参加し、「やはり会えないので、話しづらい部分もあったようです」というが、フジテレビのオフィスに集まって対面形式で行うようになると、そのストレスも解消。もともとスタジオ収録番組だったため、目の前に観覧客がいないことでテンションが下がることもないようだ。