資産形成を後押しする制度として、「NISA」や「つみたてNISA」、「iDeCo」といった制度があります。それらの投資先は投資信託が中心ですが、一部ではETFという金融商品を選ぶことが出来ます。ETFは投資信託の中でもインデックス型の投資信託と類似していると言われていますが、実際には3つの大きな違いがあります。この記事で解説していきます。

ETFとは

ETFとは「Exchange-Traded Fund」の略称で、インデックスファンドと同じように日経平均株価やTOPIX、S&P500等、基本的にはベンチマークの値動きに連動するよう運用されている指数連動型の投資信託です。日本ではETFのことを「上場投資信託」とも呼ばれています。

また、レバレッジ型ETFと呼ばれるベンチマークの値動きに対して数倍の値動きをするETFがあります。例えば、ベンチマークが100円下がるとETF価格が500円上がるベア型、同じく100円上がると500円上がるブル型と呼ばれるものです。

今回の解説では主にインデックスの値動きと連動するインデックス型ETFとインデックスファンドの違いを解説しています。

世界初のETFと認知されているのが1990年にカナダのトロント証券取引所で上場された「TIPS35(Toronto 35 Index Participation Units 35)」です。一方、日本初のETFは1995年の日経300型上場投資信託です。

日本では個人投資家だけでなく、日本銀行(日銀)が年間12兆円規模で買い続けています。その保有額は2020年12月の時点で45兆円を超え、日本で最も国内株式を保有する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を上回りました。

インデックスファンドとは

インデックスファンドも基本的にはETFと同じように、日経平均株価やTOPIX、S&P500などの指数に連動するよう運用されています。しかし、インデックスファンドは上場していない為、取引する際の価格は1日1回決められる基準価格となります。

例えば、投資信託が投資している株や債券の価格を、注文締切時間の時価で計算し、そこから信託報酬などのコストを引いて、次の日の投資信託の基準価額が決まります。また、インデックスファンドはアクティブファンドと比べ、コストが安いことも特徴です。

ETFとインデックスファンド、3つの違い

ETFとインデックスファンドには大きく3つの違いがあります。

・取引の方法

・投資に必要な金額

・手数料

という点です。それでは解説していきます。

ETFとインデックスファンドの違い①:取引の方法

ETFとインデックスファンドの違いのひとつが「取引の方法」です。同じインデックスを対象としていてもETFとインデックスファンドでは価格の動きや価格そのものが違うという少し謎めいた事が起きています。その理由は「取引の方法」です。

◆上場か非上場か

取引の方法を解説するうえで、大切な事はETFが上場しているのに対し、インデックスファンドは非上場ということです。

そもそも、上場とは証券取引所で株式がリアルタイムで売買が出来るようになることを言います。

このことから、ETFとインデックスファンドでは取引の方法に違いがあります。ETFはオークション方式かマーケットメイク方式であり、投資信託はブラインド方式です。

◆オークション方式

「オークション方式」とは、「価格優先」と「時間優先」の原則に基づき、売りと買いの注文を成立させる方式のことです。オークション方式では、買い手は許容できる範囲で最も高い価格を示します。一方、売り手は許容できる範囲で最も低い価格を示します。

例えば、3人の投資家がA社の株式を100円、110円、120円と、それぞれ買いたい価格を提示します。同時に3人の投資家がA社の株式を80円、90円、100円と、それぞれ売りたい価格を提示します。この場合、取引所は100円の買い手と100円の売り手の注文を引き合わせて売買を成立させます。つまり、売り手と買い手の条件の中で一番良い価格を提示する注文が最優先される、ということです。

◆マーケットメイク方式

「マーケットメイク方式」とは、 証券会社が常時「売り気配」「買い気配」を提示し、最良気配を提示している証券会社と投資家との間で取引する方式のことです。 株を売買する人が買いたい・売りたいと希望している値段のことを気配値と言い、買い注文だけで売り注文が出ていない状態を「買い気配」、その逆を「売り気配」と言います。

◆ブラインド方式

「ブラインド方式」とは、申込み段階ではその価額が分からないようにしている方式のことです。普通は物を購入する際、値段を見て購入するかしないか判断します。では、なぜ投資信託ではこの方式を取り入れているのでしょうか。

例えば、投資信託が前営業日の基準価額で購入可能とします。そうすると、「今日の相場の動向を見て、前営業日の基準価額で売買しよう」ということができます。相場が高騰していれば買い、下落していれば売りです。高騰・下落前の値段で買えるわけですから、相場を見ていれば確実に失敗しなくなります。そうなると、既にその投資信託を買っている投資家が不利になってしまいます。

ブラインド方式は投資家間の不公平を生じさせないために導入されたものです。そのため、解約・買い付けの申し込みをする段階、もしくは、申し込んだ直後は、いくらで売るのか、いくらで売ったのかを知ることはできません。

◆信用取引の可否

ETFは信用取引ができますが、インデックスファンドはできません。信用取引とは、自己資金よりも高い価格で取引ができることです。信用取引には「信用買い」と「信用売り」の2つがあります。

「信用買い」は、証券会社から借りた資金で株式を購入すること、「信用売り」は信用買いした株式を売却することです。つまり、ETFは自己資金の総額よりも高い金額で取引ができ、インデックスファンドは自己資金の総額が取引限度額ということです。

ETFとインデックスファンドの違い②:投資に必要な金額

ETFは、基本的に1万円~10万円から購入することになります。対して、投資信託は最低100円からでも購入することができます。つまり、少額の分散投資にはインデックスファンドのほうが向いています。

ETFとインデックスファンドの違い③:手数料(コスト)

ETFとインデックスファンドに共通する手数料が信託報酬です。信託報酬とは、投資信託を管理・運用するための経費です。投資信託を保有している間はずっと投資家が支払い続けます。そして、ETFの信託報酬はインデックスファンドよりも若干安いです。ETFが一般的に0.1%~0.5%程度となっているのに対し、インデックスファンドは0.1%~1.0%程度です。

なぜETFの方が信託報酬が安いかというと、信託報酬は投資家が販売会社(証券会社)、受託会社(信託銀行)、運用会社の3社に対して支払うコストです。しかし、ETFは金融機関の窓口で販売されるわけではなく、すでに市場で自由に取引されているものを買うだけなので、販売会社へのコストは不要です。その為、ETFはインデックスファンドよりも信託報酬が安い傾向があります。

信託報酬は保有期間中、継続的に発生する費用となります。長期投資を前提として保有する場合、ETFのほうが有利でしょう。

つみたてNISA・NISAでETFは選べるのか?

インデックスファンドをiDeCoやNISA、つみたてNISAの制度を利用して投資する、という方が多く見られますが、ETFはこのような制度で投資先として選べるのでしょうか?

現在つみたてNISAで選ぶことのできる金融商品は2021年3月時点で193本が金融庁より発表されています。これらの金融商品の中心は投資信託ですが、ETFも7種類対象になっています。

つみたてNISA対象商品はこちら

また、NISAもETFを選ぶことはできます。NISA投資対象にできる商品は、「上場株式等」です。上場されている「個別銘柄」だけでなく、「株式投資信託」、「REIT(不動産投資信託)」「ETF」も対象となっています。しかし、NISA口座を開設した金融機関ごとに取扱商品は異なり、特に銀行や郵便局では「株式投資信託」しか買えませんので、「ETF」をNISAの制度を利用して購入したい場合、証券会社でNISA口座を開設しましょう。

まとめ:ETFは投資初心者でも活用できる金融商品

ETFはインデックスファンドと比べ、リアルタイムで取引ができ、手数料も安いといった特徴があります。しかし、どのタイミングで購入・売却をした方がいいのか見極める必要があります。その為、ある程度の知識が必要になることや、自分の性格は多少リスクをとって短期で増やしたいのか、安定的に時間をかけて長期で増やしたいのか、しっかりと検討してからETFかインデックスファンドを選択してみてはいかがでしょうか。

この記事を執筆したファイナンシャルプランナー紹介

加藤航四郎(かとうこうしろう)
所属:株式会社マネープランナーズ
マネープランナーズホームページはこちらをチェック!

2級ファイナンシャルプランニング技能士

埼玉県出身。 大手金融会社に入社。 お客様とお話しをしていく中で、お客様と末永いお付き合いと、より中立的な立場からの手助けをしいたいという想いからファイナンシャルプランナーに転身。 若さを武器に全国のお客様のもとへ飛び回っている新進気鋭のファイナンシャルプランナー。