日曜日の昼下がり、とある郊外をドライブしている最中にふと視界に飛び込んできた黄色地の看板。その店構えには見覚えがある。主に大通り沿いなどでよく目にするラーメンチェーン「来来亭」だ。

何度も見掛けておきながら、これまで実際に食べたことはない。「チェーン店のラーメンはまあまあの味」という偏見を持っていたからだ。しかし、チェーン店でも美味しいラーメン屋は存在するとハッキリ理解した今、これを味わわない手はない。

この日は、店の外で入店を待つ先客の姿もあった。5~6名ほどだろうか。まさかチェーン店で、しかも昼食どきを過ぎた14時半という時間帯に並ぶことになるとは思わなかった。改めて己の不明を恥じるとともに、否が応でも期待も高まるというものだ!

■特集:ラーメンチェーン名店巡礼

ねぎも唐辛子も抜けるが「情熱」は抜けないスタイル

外で15分ほど待っていざ入店。コロナ対策でパーテーションが設けられたカウンター席に通していただく。メニューを開くと、ノーマルの「ラーメン」を推していることがわかる。

なるほど、やはり初訪問のときは、その店でもっとも王道と思えるラーメンを注文するのが筋だろう。でもちょっとガッツリ食べたい気分なんだよな……ということで、「ギョーザ(5個)」と「半チャーハン」がセットになった「がっつりA定食」(1,120円)を注文。

ラーメンの好みは細かくオーダーができるらしい。おっと、ねぎも一味唐辛子も抜けるが情熱だけは「絶対抜けません」ときた。ふむ。この内容なら、個人的には麺かため、ねぎ多めが好みである。テンション次第では背脂も多めで頼むこともあるだろう。でも、今回は初回ということで、すべて普通でオーダーした。

卓上調味料はこんなラインナップ。ん? 右のほうの黒いツボは何だろう。ニンニクでも入っているのかな? と思って開けてみると……

まさかの梅干し! ラーメン屋で梅干しが卓上に置かれているなんて、なんとも珍しい。いや、ラーメン屋でなくとも珍しいか。しかし梅好きとしては、もうこの時点で愛せるお店であると認定できそうだ。

鶏ガラが効いた濃い目の「京都風醤油味」にヤミツキ!

……とかなんとか考えているうちに、ラーメンセットが到着。こ、これは……!

ものっすごい美味そうだ……。

ラーメン、半チャーハン、そしてギョーザ。「中華三種の神器」と形容されることも多いテッパンの布陣だが、こうも美しいキツネ色で統一されると、食欲が暴発してしまいそうだ。

では、まずはラーメンからいただきます!

おお~、好み。美味しい~! まっさきに感じたのは、"ピリッ"と主張する辛味がいいアクセントになっていること。最初から辛味が入っているタイプのラーメンとは意外だった。そういえば、味のオーダー表で一味唐辛子の有無についても書かれていたな。すっかり忘れていた。

麺はコシのあるプツプツ細麺で、スープは京都風醤油味。ふんだんに浮いている背脂が特徴的だが、鶏ガラスープ自体は綺麗に澄んでおり、口当たりはキレがあってスッキリとしている。旨味も濃厚で、塩分もやや濃い目。これはヤミツキになる味だ。

チャーシューは薄めにスライスされたものが何枚も乗せられている。このあたりもまさに京都ラーメンの代表的なスタイルで、麺をくるむようにして一緒に食べるのがよさそうだ。

ネギは新鮮なシャキシャキ食感で、背脂のこってり感をうまいこと中和。全体のバランスをうまく整えてくれている。

続いては半チャーハンを食べてみよう。このツヤツヤとした濃い目の美しい茶色……見ているだけで美味しさが伝わってくるようだ。

味は濃い目の醤油味。炒め方が上手いのだろう、とても香ばしく、チャーハンがホロホロと口のなかでほどけていく。味の系統が近いのか、ラーメンととても相性がいいようだ。好きな人は相当に好きな味である。「来来亭はチャーハンが美味い」と熱弁するファンも多いに違いない。私自身、ガツンとくるこの味にすっかりKOされてしまった。

そして、このギョーザの焼き加減である。パーフェクトではないか? 綺麗な焼き目のついた生地は、見ての通りのパリパリ食感。中の餡はふんわりとしていて、優しい野菜の甘みを感じる。

中華三種の神器、どれもクオリティーが高くて素直にビックリ……。

もちろん、最後まで美味しく完食。ついスープもゴクゴクと飲み過ぎてしまった。

ファミリー利用にも、居酒屋利用にも◎

この来来亭という店は、お酒を飲みにくる客も多いように思われる。ラーメンもチャーハンも、そしてもちろんギョーザも、すべてビールやハイボールによく合いそうな味付けである。

実際、メニュー裏を見てみると、唐揚げや焼肉ポーク、白身魚フライ、ミンチカツ、豚キムチと、お酒のツマミになりそうなメニューが実に豊富。店内にはいくつもテーブル席があるので、居酒屋的に利用するにももってこいだろう。

大満足してお会計へ。15時だというのに、店はまだ混雑している。店員さんによると、テーブル席が多いこともあってファミリーの利用客も多いらしく、土曜、日曜の昼時は行列ができることも少なくないという。もちろん、ラーメンの味が細かく調整できるのも、家族連れに人気の理由のひとつだろう。

万人受けする体制でありながら、味はしっかりマニア受けもする本格派の京都スタイル。全国各地に出店しているので、ぜひ一度味わってみてほしい。

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