和月伸宏氏の人気コミックを実写化した映画『るろうに剣心』シリーズが、ついに最終章を迎える。2012年の『るろうに剣心』に続き、『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』(14年)と3作合わせて累計興行収入125億円以上、観客動員数は980万人を突破した大ヒット作で、幕末に人斬り抜刀斎として恐れられた緋村剣心(佐藤健)が、不殺(ころさず)を貫きながら仲間と平和のために戦う姿を描いている。

コロナ禍での延期を経て公開される『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(2021年4月23日・6月4日公開)は、原作では最後のエピソードとなる「人誅篇」をベースに縁(新田真剣佑)との究極のクライマックスが描かれる「The Final」と、原作では剣心が過去を語るかたちで物語が進む「追憶篇」をベースに、"十字傷の謎"に迫る「The Beginning」の2部作となる。

今回は23日から公開される「The Final」について、緋村剣心役で主演を務める佐藤と、最後の敵となる縁を演じる新田真剣佑にインタビュー。4月より新会社を設立した佐藤と、海外への挑戦を表明した新田にとって、今作の位置づけとは。

  • 映画『るろうに剣心 最終章 The Final』に出演する佐藤健、新田真剣佑

    左から佐藤健、新田真剣佑 撮影:宮田浩史

■「縁がいる」「剣心がいる」

——今回佐藤さんが剣心、新田さんが剣心の最後の敵・縁を演じられましたが、実際に対峙したときのお互いの印象はいかがでしたか?

佐藤:僕が子供の頃から見てきた縁というキャラクターに扮したまっけん(新田)を見たときに、すごく説得力がありました。まっけんが役作りのためにこれまで準備してくれたこともあったし、衣装や髪型の似合い方もすごかった。漫画のキャラクターを演じるのは簡単ではない中で、「縁がいる」という域に到達していました。

新田:1作目が公開した時は14歳で、『るろうに剣心』のファンだったので、初めて対峙したときにはもう「映画で見ていた剣心が目の前にいる!」と思いました。剣心と対決したシーンは、人生で1番大変なアクションで、途中で歩けなくなったりもして……。でも、それだけ見応えのあるアクションができたんじゃないかなと思います。

——撮影現場も拝見したんですが、もうお二人とも部屋中グルングルンになってましたよね。

新田:セットも全体的に使ったアクションになりました。

佐藤:いや大変でしたよ、縁が暴れん坊で(笑)。とにかく避けて避けて、長期戦に持ち込みました。後半はもう、「気持ちと気持ちの高め合いだ」という感覚で、エモーションのぶつかり合いです。そうなった方が良いなと思ったし、互いに刀を通して気持ちを通じ合わせていくシーンになりました。まっけんも「歩けなくなった」と言っていましたけど、互いに限界もかなり来ていたし、本当にアクションするのが大変だったんです。そういったゾーンに入ってからは、「気力のぶつかり合いになったらいいな」という気持ちで。僕たちもそうだし、スタッフもそうです。現場全体が同じ感覚で撮影していました。

——撮影の中での、役を離れてのお互いの印象はいかがでしたか?

新田:縁になるために、撮影前に密かに別室で筋トレをしていたら、佐藤さんがちょっと覗いてきて(笑)。「やりたいな」と言ってくださって、一緒に筋トレをできたのが嬉しかったです。

佐藤:僕も体作りやトレーニングを現場である程度やっていたので、同士を見つけると嬉しいんです(笑)。一緒に頑張っていると、自分も頑張れるじゃないですか。1人でやるよりも、まっけんとできたことが良かった。

——役としてはバチバチではあるけど、裏では一緒に準備してアクションシーンが出来上がっていたんですね。

佐藤:やっぱり、アクションは信頼関係がないと絶対にいいものにならないので、お互いに遠慮なくぶつかれるような関係のもとで戦っていました。

■役者人生においての新たな章に

——ものすごく大きな作品であるのは間違いないと思うんですけど、改めてお二人にとって『るろうに剣心 最終章』はどのような位置づけの作品になると思いますか?

新田:『るろうに剣心』は間違いなく、日本が誇れる世界に通用する漫画として、トップクラスだと思うんです。そんな作品の実写映画に出られて、誇りに思います。この作品が今の日本で公開されて嬉しいですし、僕は今後海外に挑戦しますが、「日本で出演した作品は『るろうに剣心』だ」と胸を張って言いたいです。

佐藤:僕は22歳の時にこの作品と出会ったことで今の自分がいるし、『るろ剣』のイメージも含めて全てを背負って、他の仕事もしてきたので、やっぱり特別な存在です。その作品が、10年経った今、ついに完結するというのは、すごく感慨深いです。10年前の『るろうに剣心』が僕の役者人生において1つの章の始まりだとしたら、今回の公開と共に一旦その幕が閉じる。今年以降の役者人生が、僕の新たな章の始まりなんだろうなと思っています。だから、これからはこの作品を超えるような作品、この役を超えるような役と出会う必要があるし、自分からでも作っていく必要があると思っていて。それを目指すべきなんだけど、簡単じゃないんだろうなと思います。それくらい、強力な作品です。

——今回、公開は当初の2020年7〜8月から1年弱の延期となりましたが、延期になる前からそういった気持ちをずっと持っていたということでしょうか?

佐藤:そうですね。撮影期間中に自分が30代に突入して、平成も終わって、すごく新時代に向かっている感じがしたんです。剣心も明治を拓くために幕末を戦い抜いて、新時代を迎えようと頑張ってたわけで、演じながらも自分、そして世の中とリンクするような感覚がありました。きっと、この作品が終わることで、1つ何かの区切りがついて、これからはまったく全然違う仕事や生き方を求められるだろうし、していかないといけないんだろうということを感じていました。

——新田さんも、新しい区切りをこの作品に感じていたというところはありますか?

新田:『るろうに剣心』が公開してから海外に挑戦するので、そういう意味では、すごく良いタイミングだなと思いました。日本で剣心の公開を見届けて、その後は海外で頑張りたいと思っています。自分の中での区切りになるというところはあります。

——それでは改めてになりますが、実際にお二人が感じるこの作品の見所を教えていただければ。

新田:僕はもう、観ている間中ずっと体に力が入っている感覚で、終わった後にどっと疲れました(笑)。角度を変えてみれば、どちらが正義でどちらが悪かわからないという物語で、色々な意見があるんじゃないかと思えるところも、すごく面白かったです。自分が縁なので余計にそう思うのかもしれないですが、観ている時は縁を演じたことを意識せず、お客さんとしてとにかく楽しめました。

佐藤: 剣心にとっては贖罪の相手が最後の敵ということで、実は重いテーマなんですが、その重いテーマをエンタメに持っていくんだ、という思いのもとで我々は作っていたので、純粋にアクションエンターテイメントとして、難しいことなしで楽しめると思います。アクションに関しては、本当に、今できることを全部やりましたし、シリーズで比べても、当然1番出来がいいものを残せたという自信と手ごたえがあります。世界を見渡しても、ソードアクションという部類に関しては他にないことをしているという自信があるので、ぜひそこも楽しんでください。

■佐藤健
1989年3月21日生まれ、埼玉県出身。前作の『るろうに剣心』(12年)、続編の2部作『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14年)で幅広い層から不動の人気を獲得。『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17年)で、第41回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。主な出演作に、『何者』(16年)、『亜人』(17年)、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』『億男』(18年)、『ひとよ』(19)、『恋はつづくよどこまでも』(20年)などがある。待機作に映画『護られなかった者たちへ』(2021年秋公開)、Netflix『First Love 初恋』(2022年配信)がある。

■新田真剣佑
1996年11月16日生まれ、アメリカ、LA出身。『ちはやふる -上の句-/-下の句-』(16年)で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。『ちはやふる-結び-』『パシフィック・リム:アップライジング』(18年)、『十二人の死にたい子どもたち』(19年)、『カイジ ファイナルゲーム』『サヨナラまでの30分』(20年)などに出演。主演映画『ブレイブ-群青戦記-』(21年)が公開中。

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