「融通無碍」という四字熟語の意味や使い方をご存知でしょうか。ビジネスシーンで正しく使えば、相手とのコミュニケーションもよりスムーズになるかもしれません。この機会に理解を深めましょう。
融通無碍の意味
「融通」とは物事が滞りなく進むことを指し、一方「無碍」とは妨げがないこと、何にもとらわれていないことを指します。つまり融通無碍とは、考え方や行動などに何も障害がなく、のびのびと自由に対応できること、またそのさまという意味です。読み方は「ゆうずうむげ」です。
融通無碍の由来
仏教の宗派のひとつ、華厳宗に由来するとされる言葉です。
華厳宗の経典である華厳経では、この世界の事象はすべて互いに関連し合い、そこに障害となるものは何もない、すなわち融通無碍であると解釈されています。
融通無碍を用いた例文
ここからは、ビジネスシーンにおける使い方を見ていきます。例文を通して理解し、スピーチなどに盛り込んでみましょう。
融通無碍は、心身や考え方をさまざまな束縛から解放した、自由なさまを表現するときに使います。
<使用例>
- 私たちに求められるのは、常識にとらわれない、融通無碍な発想だ
- 融通無碍に立ち回らなければ、この局面は打開できません
融通無碍の類語
融通無碍の類語には融通自在、無碍自在などが、また意味が近い表現に自由自在、臨機応変などが挙げられます。例文とあわせて紹介しますので、場面に応じて使い分けてみましょう。
■融通自在
「自在」とは意のままに、自分の思うとおりにするさまを指します。融通無碍と同様に、何かにとらわれることなく思うとおりにできるさまという意味です。「ゆうずうじざい」と読みます。
<使用例>
- 老後を融通自在に生きる
■自由自在
何事も思うままにできるさまを指しています。何も束縛するものがないという意味で、融通無碍と近い意味で使えます。
<使用例>
- これほど自由自在に筆を操る画家は、ほかにいるだろうか
- 身のこなし方が自由自在で、軽やかです
■臨機応変
変化に応じて適切な対応をとるという意味です。
<使用例>
- 不器用で、臨機応変に物ごとをこなすのが苦手です
- 臨機応変に動けるように、普段から意識しましょう
融通無碍の対義語
ここからは、融通無碍と反対の意味を持つ言葉について、その意味や例文を交えて紹介します。
四角四面
生真面目で面白みに欠けることや、考え方や態度などが堅苦しいことを表します。「しかくしめん」と読みます。何にも束縛されず自由なさまの融通無碍とは、反対の意味を持つ言葉といえるでしょう。
<使用例>
- 四角四面な性格は、新商品開発の妨げになる
- 彼の四角四面なスピーチに、みな退屈していた
杓子定規
1つの基準を何にでも当てはめて処理しようとする、融通のきかないやり方や態度を指します。
<使用例>
- 彼は何事も杓子定規に扱うので、社内で反感を買っている
- 杓子定規な考え方では、ストレスがたまる一方だ
融通無碍の英語表現
融通無碍そのものに対応する英単語はありませんが、融通がきくという意味を持つ英単語として「flexible」「adaptable」などがあります。
flexible:柔軟な、順応性のある
人の行動や計画などに対し、柔軟で、順応性があるという意味です。融通がきくと訳せます。
<使用例>
- We have flexible working hours.(我々はフレックスタイム制をとっている)
- We must be more flexible in carrying out this project.(このプロジェクトを遂行するために、より柔軟になるべきだ)
- He is a flexible person.(彼は融通の利く人だ)
adaptable:適応できる
flexibleと意味は同じで、変化や条件に柔軟に順応できる、目的に合うように調整できることを指します。
<使用例>
- He has an adaptable mind.(彼は柔軟な考えの持ち主です)
- It's important to approach everything with an adaptable frame of mind. (あらゆることに順応できる姿勢で取り組むことが大切です)
融通無碍の意味を理解して使いこなそう
日本語には仏教が深く関わる言葉がたくさんありますが、今回ご紹介した融通無碍もそのひとつ。背景を少しでも知ると理解がぐんと深まります。実生活で融通無碍とはなかなかいかないものですが、理想として胸にとどめておくのもよいですね。