社会にはさまざまな印鑑が存在し、用途によって種類や押し方に違いがあります。社会人になって、印鑑は"名前の横に押すもの"とは限らないことを学んだ人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、会社で使うことの多い「割印」と「契印」について解説します。

■「割印」とは

独立した二つの書類の関連性および同一性を証するために、それぞれにまたがって一つの印を押すことを「割印」といいます。

例えば、取引先に領収証を発行する場合、それと同じものを控えとして作成し保管する必要があります。このように2枚で1セットとなるような書類を作成した際に、原本と控え(または写し)をずらして重ね、双方にまたがるように一度だけ押印します。それが「割印」です。これにより、原本と控え(または写し)が「同一であること」や「同時に作られた同じ内容の文書であること」を示すだけでなく、その後の複製や改ざんといった不正を防ぐことができます。

割印のルール

割印に使用する印鑑は、その書類に使用したものと必ずしも同一である必要はなく、違うものでも構いません。割印を押す場所に決まりはありませんが、書類の上部に押印するのが一般的です。また、それぞれに印影が半分ずつになるようバランスよく配置し、きれいに印影が残るように押しましょう。

■「契印」とは

文書が2枚以上にわたる場合に、それらが一つの文書であること、かつその順序で綴られていることを証明するために、全ページを見開き状態にし、それぞれ両ページにまたがって押す印のことです。

契印のルール

契約書などの重要な書類に用いられることが多いため、通常、その書類には2人以上の署名者が存在するはずです。契印は、全ての契約当事者が押す必要があり、必ず契約書に使用した印鑑と同じものを使用します。それにより、書類の一部を抜き取られたり差替えられたり、順番を入れ替えられるなどの不正を防ぐことができるのです。

袋とじの場合

普段から契約書を扱うような業務に就いている人はわかると思いますが、契約書の多くは袋とじ(全ページを製本テープなどの帯で糊づけする綴じ方)されています。なぜ、袋とじにされているのか。

単なるホチキス止めの書類に比べ、袋とじはページが抜けにくくなっていることから、その文書の一体性は明らかです。そのため、契約書の表表紙と裏表紙が重なる帯の部分にまたがるように、一人一カ所に押印するだけでよく、内側に綴じられているページへの押印を省略することができます。また、この押印作業の省略は、契約書のページ数が多い場合には非常に効率のいいやり方といえます。契約当事者がそろった席で、それぞれが何十ページにも押印するのは正直面倒な作業であり、スマートではありません。契印の押し方とともに、袋とじの利便性についても覚えておくとよいでしょう。


「契印」も「割印」も書類にまたがって押印するものですが、割印は内容の書き換えを防ぐために、契印はページの差替えを防ぐための証明印です。両者の目的やルールを理解し、正しく使い分けましょう。