ヘッドセットはリモート時代に必須の周辺機器に

昨年から続くコロナ禍で、オンライン会議はすっかり日々の業務に定着しました。その中で見落とされがちなのが、イヤホン、ヘッドホン、あるいはヘットセッドなどオンライン会議を支える音響機器です。

ZoomやMicrosoft Teamsなどのオンライン会議ツールは有料プランを利用する企業が増えた一方で、音響機器は従業員が個人で購入・管理しているケースがまだ多いようです。

そもそも、ほとんどの日本企業では従業員の持つヘッドセットを管理していません。昨年、緊急事態宣言が急遽発令された際も、企業の情報システム部門はVPNのセキュリティ証明書発行や在宅勤務用パソコンの支給に追われ、ヘッドセットの一括購入・管理にまで意識が回らなかったと言えるでしょう。

また、パソコン周辺機器を経費で精算する制度が整っている企業でも、「1万円以内で経費として精算してほしい」など、上限金額が決まっていれば良いほうで、仮に決まっていたとしても、どの製品を購入するかは従業員にゆだねられており、企業側はその購入製品を把握していないことも珍しくありません。

テレワークが浸透して約1年、ようやく一部の企業でヘッドセットの一括購入・管理や、その提供ベンダーの統一を検討し始めたというのが実態です。

欧米では会社による一括購入・管理が一般的

これまで、日本の企業やビジネスパーソンには「ヘッドセットを会社が購入・管理する」という概念がほとんどなかったのではないでしょうか。一方、欧米ではオフィスの物理的な距離の遠さから、コロナ前よりオンライン会議が行われ、社員にもヘッドセットを支給する企業が多くありました。

欧米で企業がヘッドセットを一括購入して管理する部門は「情報システム部」が一般的です。その理由は、パソコンのマウスやキーボードと同じように、PC周辺機器ととらえているからです。ひと昔前であれば、ヘッドセットは固定電話や携帯電話など、電話回線で利用されていたため、事務機としてくくられていることが一般的でした。

しかしながら、オンライン会議が普及した今、パソコンやスマートフォンと接続して使用することを考えると、PC周辺機器としてPCを管理する部門、すなわち情報システム部が適任でしょう。

そしてテレワークが一般的になった今、ビジネスパーソン1人につき1台ずつヘッドセットが必要になる時代が到来したのです。それではなぜ会社はヘッドセットを管理しなければいけないのでしょうか?会社がヘッドセットを管理しないとどういった問題が発生するのでしょうか?

会社がヘッドセットを管理しないと発生する2つの問題

1つ目の問題は、デバイスのトラブルです。接続不備や設定変更に伴う連携トラブル、故障、ノイズなどの問題が起こりやすくなるでしょう。オンライン会議ツールをZoomからTeamsに切り替えた時に、音声が聞こえなくなってしまうトラブルはよくあります。

全社で統一したヘッドセットを使用すれば、こうしたトラブルが起こっても(情報システム部がヘッドセットの管理を担当する場合)、情報システム部が原因を特定でき、迅速に解決することができます。従業員が個々人で利用デバイスが異なっている場合は、ヘッドセットの機能の理解などに手間取り、原因がヘッドセット側にあるのかシステム側にあるのかを把握しにくく、情報システム部が手間取ってしまうことが考えられます。

2つ目に起こりやすい問題は音声の品質です。テレワーク中にヘッドセットを使用する際、音楽を聴くために購入したヘッドホンやイヤホンを使用してTeamsやZoomの会議に参加している人は多いでしょう。残念ながら、こうした製品は必ずしも会話をするために開発された製品でないのです。音が飛んだり、声が聞こえにくかったりするほか、周辺環境のノイズが入りやすく、スムーズな会議進行を妨げてしまいがちです。

したがって、従業員に自分の好みでヘッドセットを購入させてしまうではなく、会社は会議使用に適したヘッドホンを従業員に提供すべきですなのです。中にはMicrosoftやZoomが掲げる製品基準をクリアした認定製品もあり、こうした製品は彼らのお墨付きを得られており、一定の音声品質が保証されているとも言えます。

また最近は、従業員のヘッドセットの利用状況を一括で把握できる管理ツールを提供するベンダーもあり、情報システム部がより管理しやすい環境が整ってきました。管理ツールにより、従業員に支給したヘッドセットが1日どれぐらいの時間利用されているかを把握したり、従業員のヘルスケアの観点から1日に人体が取り込んだ音の量を管理してアラートを出したりすることが可能です。この管理ツールについては、後編で詳しく述べます。

コロナ禍に適したヘッドセットを

コロナ禍で、オンライン会議を繰り返してきたビジネスパーソンは、オンライン会議中に周りの音が入ってしまうと進行に支障を来すという問題に悩まされています。例えば、Microsoft Teams対応のヘッドセットでは、ノイズキャンセリング機能が搭載されることが認定の条件となっています。こうした機器であれば、たとえ外出時のオープンスペースで急きょ会議に参加することになっても、そうした機能が搭載されていない製品に比べて、周りの音が拾いにくいです。

社内の重要な会議もオンラインで行われることが増えた今、会議に参加する全従業員が、同じ音声環境で会議を行うことの重要性を見直すべきでしょう。

著者プロフィール

岩岸優希

Poly 営業技術部 シニアSEマネージャー

ユニファイド コミュニケーション業界において20 年近くテクノロジーの専門家として携わっており、音声、ユニファイド コミュニケーションから、ビデオ、Web会議に至るまでさまざまな技術、製品を熟知。2019年8月にPoly(Plantronics, Inc.)日本法人にシニア SE マネージャーとして参加以降、優れた会議環境を実現する高品質な音声および映像テクノロジーを備えたPoly製品を日本市場へ広めていくことをミッションとしている。