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物語の面白さと、役者の魅力を存分に発揮させた河毛俊作監督の手腕も忘れてはならない。河毛監督が施した画面1つ1つの演出が実に“スタイリッシュ”なのだ。

役者の魅力を存分に発揮させた手腕はもちろん、登場人物たちを紹介するテロップの洗練さであったり、時代劇では聴きなれないロック調のBGMであったり、光と影の揺らめきや勇ましく燃え上がる炎の描写であったり…と、次々と繰り出されるシーンの隅から隅まで、実に“スタイリッシュ”。それは監督が手掛けた、『沙粧妙子-最後の事件-』(95年)や『ギフト』(97年)に通じるものがあり、フジテレビだからこそ実現できたといっていい。

河毛監督の手がけた時代劇と言えば、木村拓哉主演『忠臣蔵1/47』(01年)がある。そのエンディングにエディット・ピアフの「愛の讃歌」を採用し、時代劇とは一見ミスマッチにも思える選曲だったのだが、実はその世界観を見事に表現していた。

それが今作でも踏襲されているのが、単発ドラマとしては珍しい書き下ろし楽曲である、宮本浩次の「shining」。完成された映像を見た上ででき上がった曲というだけあって、時代劇と曲名の違和感を吹き飛ばし、2時間30分のめくるめく回想シーンを背景にしたエンドロールとともに、楽曲が見事に重なり合っている。そのことで、視聴後感をより高めてくれているのだ。

■戦国時代の“転機”に通じるコロナ禍での“変化”

「桶狭間の戦い」と言えば、戦国時代の“転機”ともなった時代を変えた一戦。脚本の大森寿美男氏もインタビューで言及しているが、コロナ禍で様々な“変化”を余儀なくされた現代と通じる部分が多く、そんな世の中で求められる理想のリーダー像とは……ということも、450年以上前も時代の出来事から改めて考えさせられ、“今だからこそ”深みをもって見ることができる。

先日、河毛俊作監督×大森寿美男脚本コンビの時代劇で、豊川悦司主演の映画『仕掛人・藤枝梅安』が2023年に公開されることが発表されたばかりだが、役者の魅力を十分に発揮した今回のエンタテインメント作品で、一足先に思う存分楽しんでほしい。

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