「きかんしゃトーマス」シリーズの劇場版最新作『映画 きかんしゃトーマス おいでよ!未来の発明ショー!』(3月26日公開)で、日本から来た世界最速の超特急・ケンジ役を演じている俳優の賀来賢人にインタビュー。2児の父でもあるが、「仲間で協力することの大切さを教えてくれる『きかんしゃトーマス』は、子供たちにも伝わるといいなと思うテーマが詰まっている」と父親としても本作の魅力に惚れ惚れ。「遊びでも仕事でも、子供たちに『パパ、楽しそうだな』と思ってもらえるような生き方をしたい」という子育てのモットーや、俳優業に抱く“ワクワク感”を語ってくれた。

  • 賀来賢人

「子どもが楽しめる作品に携わるのは大好き」

未来の発明ショーのために、世界中の発明家たちがソドー島に大集合。トーマスがショーを盛り上げようと奮闘する中、思わぬ大騒動が巻き起こる様を描く。ケンジ役のオファーが舞い込み、賀来は「僕と顔が似ていたので、ケンジに親近感がわいて。これは受けなければと不思議な使命感もわいてきました」と楽しそうににっこり。

2児の父親となり「子供向けの作品に触れる機会が増えた」そうで、「そういった作品を見ていると、小細工なしで、子供たちが100パーセント楽しめるような内容になっているなと感じるんです。エンタメとして、これほど素敵なものはないなと思う。だからこそ、子供も楽しめる作品に携わるのは大好きなんです」と喜びと共に飛び込んだ。

『ライオン・キング』の主人公・シンバに続いて、賀来にとって2度目の声優業への挑戦。「声の仕事は、技術的にとても難しい。プロの方々のすごさを、いつも思い知らされています」と苦労もつきもののようだが、「今まで僕が演じた役柄の中で、一番の好青年」というケンジを演じるうえでは、「ケンジと同じ表情をしながら演じてみると、表情筋がリンクして、うまく雰囲気がつかめるような気がしました」とあらゆる学びがあったそう。

実は役者としてさまざまなキャラクターに臨む際にも、賀来がもっとも大事にしているのが「声」なのだとか。「どんな役でも、まず台本を読んで『どういう声でいこうかな』と声から探し始めるんです。僕は柄本時生と仲が良いのですが、時生も親父さんから『その役の声を探せ』とずっと言われていたそうなんです。役作りの方法は人によってさまざまだと思いますが、僕は“声を探す”という作業が一番、時間がかかります。だからこそ、声の表現はとても大事だと思っているし、今回のような声のお仕事はとても勉強にもなります」と語る。

子供とは対等な目線を意識「きちんと話すように」

日本から、トーマスたちが暮らすソドー島にやって来た世界最速の超特急・ケンジ。劇中では、トーマスたちが彼を温かく迎える様子が描かれている。賀来は「仲間で協力することや、仲間を受け入れることの大切さを教えてくれる。しかも決して、押し付けがましくないんです。子供たちにも伝わるといいなと思うテーマが詰まっていると思います」と父親目線で感じる魅力について吐露。

自身の子供にも、今回「きかんしゃトーマス」の映画に参加が叶ったことを伝えたそうだが、「『あ! そう!』みたいな反応でした(笑)。まだ僕が何の仕事をしているのかよくわかってないみたい」とのこと。「テレビを観ていて僕が出ていると、『パパだ、パパだ』と言っています。『パパは、お仕事でいろいろな人になって、“なになにごっこ”みたいなことをしているんだよ』と説明しても、やっぱりよくわからないみたいで。ただ、僕がツッパリだとはわかっているみたい(笑)」と『今日から俺は!!』で賀来が演じているツッパリ高校生・三橋と同一人物だということはわかっている様子。

子供たちにたくさんのことを教えてくれる本シリーズだが、賀来が子育てにおいて大切にしていることとはどのようなものだろうか。

「“きちんと話すこと”を心がけています。適当に話していると、それもすべて子供にはわかってしまうもの。子供扱いせずに、対等な目線で触れ合うことが大事なのかなと思っています」。さらに「子供って、見たことを真似してしまうから、自分を律するようになったかもしれません。“こういう人になりたい”という姿を見せられたら、すごくいいですよね。そういった意味では、遊びでも仕事でも、子供たちに『パパ、楽しそうだな』って思ってもらえるのが、一番かな。『パパ、つまらなそうだな』とは思われたくない。そのために常に、ワクワクしていたいです」と子供たちが、あらゆる原動力になっているようだ。

コロナ禍で噛み締めた仲間との出会い、家族の大切さ

映画やドラマ、舞台と、コメディからシリアスな作品まで、幅広く活躍している賀来。「昔は、仕事について、愚痴を言ってしまっていた時期もあります」と告白しつつ、「自分は何をやりたいんだろうと整理するようになったり、ワクワクすることも増えてきた」と仕事への充実感を明かす。

「役者の仕事って、どんなに経験を積んだとしても、またゼロから新しいものを覚えて、新しい人たちと仕事をして、新しいものを作っていくことの繰り返し。しんどいこともあります」と苦笑い。「舞台をやらせていただくようになって、お客さんの反応を目の当たりにできるようになってからは、少し自分に自信が持てるようになったかもしれません。昨年は、舞台(ミュージカル『モンティ・パイソンのSPAMALOT』)に立たせていただくことができたんですが、“やれるかどうかわからない”という中でも、みんなで協力して、一生懸命に作り上げて、全公演やり切ったことも、とてもいい思い出になりました」と目を細め、「喜劇だったので、お客さんの笑顔を見ることもできました。僕自身、ものすごくそれに救われて。この仕事をやっている意味がわかりました」と力強く語る。

コロナ禍で、「考え方がよりシンプルになった」とも。「本当に僕は仲間や先輩、そして出会いに恵まれているなとも思いました。働くということは、自分のためだけでなく、家族のためでもあるんだと改めて気づいた部分もあります。30代もワクワクすることを探しながら、表現の世界を楽しんでいきたいです」とさらに前を向いていた。

■賀来賢人
1989年7月3日生まれ、東京都出身。2007年、映画『神童』で俳優デビュー。2009年、映画『銀色の雨』で初主演を務める。ドラマ『半沢直樹』(TBS/2020年)、映画『今日から俺は!!劇場版』2020年、映画『新解釈・三國志』(2020年)など数々の作品で個性を発揮し、映画やドラマ、舞台と幅広く活躍している。2021年には、第45回エランドール賞新人賞を受賞。