ビジネスシーンで上司や先輩から「業務態度が一意専心だね」と言われ、自分が褒められているのか注意されているのかとっさに分からなかった、というような経験はありませんか?

今回は「一意専心」について、基本的な意味や由来、ビジネスシーンで使える例文を確認していきます。語彙を増やし、日々の業務にも役立てていきましょう。

  • パソコンを見ながらメモを取る人

    「一意専心」の意味や正しい使い方を知りましょう

一意専心の意味と読み方とは

一意専心の基本的な意味と読み方について早速見ていきましょう。

一意専心の意味は、脇目もふらずに一つのことに集中すること

一意専心とは、脇目もふらずに一つのことに集中すること、という意味の言葉です。「一意」は一途に心を向けること、「専心」は一つのことに集中することを表します。一点集中の意味を持つ言葉を重ねることで、更に意味を強調する四文字熟語といえるでしょう。

例えば、新プロジェクトに対する自身の意気込みを相手に伝える際に利用できます。あるいは上司との面談などの際に、自身がどれだけ業務に真剣に打ち込んできたか、学んできたかを表現するのにも有効な言葉です。

一意専心の読み方

一意専心は「いちいせんしん」と読みます。

一意専心は座右の銘としても使える言葉

一意専心は前述のように、ひたむきな様子や誠実さ、まじめさを表現する言葉です。座右の銘として、自己紹介のときなどに使用することができます。

一意専心の由来は中国の古典『管子』

一意専心は、中国の古典『管子』に出てくる言葉が由来とされています。この書には春秋時代のある政治家の偉業がまとめられており、その中に「健全な体で穏やかに一つのことに集中すると、感覚は鋭くなる」といった意味合いの一文があります。

原文ではここに一意専心という言葉が含まれており、ここから「一心に集中すること」を一意専心と表現するようになりました。

一意専心の使い方

「惑うことなくただ一つのことに専念すること」を表す一意専心は、勝負に対する意気込みを伝える、また前述のように座右の銘などの場面でも使いやすい言葉です。

意気込みとして使うと「今までおこなってきた事柄に対する思い」を、座右の銘に使用すると「自分の信条としている物事に対しての心構え」を表現できます。集中力や真剣さをアピールしたい時、特に有効な四字熟語といえるでしょう。

<使用例>

  • 一意専心に積み重ねてきたことを発揮したいと思います。
  • 座右の銘は一意専心です。
  • 虫眼鏡を使って本を読む少年

    正しい使い方を学ぶことで、伝達力も理解力も向上します

ビジネスシーンにおける一意専心の例文

一意専心は、ビジネスシーンで具体的にどのように使用するのでしょうか。いくつか例を挙げながら確認していきます。正しい使い方を学び、機会があれば積極的に使用してみましょう。

一意専心する

「~する」と続けることで、脇目もふらずに集中して物事をおこなう行動を表現できます。行動そのものを指す場合に使用しましょう。

<使用例>

  • 彼らはプロジェクトの問題を洗い出した。後はそれを解決することに、一意専心すれば良い。
  • まずは顧客の信用を得ることに一意専心しよう。

一意専心の気持ち

「一意専心の気持ち」は、その物事だけに集中して取り組む考え方が表現できます。物事に対して、真剣に向き合う意気込みや思いが伝わるでしょう。

<使用例>

  • 一意専心の気持ちで作った資料が、プレゼンで高く評価された。
  • 念願の部署に配属されたからには、一意専心の気持ちで精進しよう。

一意専心で取り組む

「一意専心で取り組む」は、対象となるその物事に対して全力で集中する心構え・姿勢が伝わります。どれだけ集中して向き合うのか、向き合ったのかが伝わります。

<使用例>

  • この問題の解決に、一意専心で取り組む必要がある。
  • 一週間以上も一意専心で取り組んだ甲斐があった。
  • パソコンと資料を使って話し合いをしている様子

    一意専心のビジネスシーンでの使用例

一意専心の類語や言い換え表現

類語や言い換え表現も併せて覚えることで、豊かな表現力を得られるだけでなく、とっさの場面でもニュアンスによって適切な言葉の選択ができます。一意専心の類語をいくつか挙げますので、併せて確認していきましょう。

一心不乱

「一心不乱」は、一つのことに熱中して、他に一切の注意が向かない様子を表します。鬼気迫るほどの集中力や没入感といったニュアンスを感じられる言葉です。

<使用例>

  • 彼女は一心不乱にスピーチの練習をしている。
  • この企業に入る為一心不乱に勉学に励んだ経験が、今の業務にも確実に活きている。

一生懸命

「懸命」は命がけを意味します。ここから、命を懸けて真剣に物事に取り組む様を表します。「一生懸命」は、気持ちの本気度や、全力感を伝えられる言葉です。

<使用例>

  • 結局のところ、日々一生懸命に働くしかないのだ。
  • 先日一生懸命まとめた資料が、今日の訪問先で役に立ちそうだ。

無我夢中

「無我夢中」は、我を忘れるほどに物事に熱中し、心を奪われることを意味します。無我は仏教用語で、心が自分自身に捕らわれた状態を超えることを意味し、それが転じて、心が自分に無い、我を忘れる、となりました。

<使用例>

  • 資格試験が明日に迫り、彼は無我夢中でテキストを読み返している。
  • 無我夢中で日々の業務をこなしていたら、いつの間にかチームメンバーに頼られるようになった。

遮二無二

「遮二無二」は、「しゃにむに」と読みます。後先を考えず、がむしゃらに行動することを表し、前後の見通しを立てないままに、むやみやたらと動いてしまう、強引に進める、という印象を与える言葉です。

<使用例>

  • いくら約束の期限が迫っているからと言って、遮二無二走り出すものではない。
  • 成功する可能性は低いが、遮二無二突き進むしか手立てはない。
  • 会話をしている男性と女性

    一意専心の類語や言い換え表現を知ろう

一意専心の対義語

様々な類語を確認しましたが、対義語はどうでしょうか。一意専心に相対する言葉はいくつもあります。類語だけでなく対義語も併せて覚えておくことで、効率的に語彙が増やせるでしょう。

語彙が増えれば、言葉の適切な使い分けができ、その分だけ会話力も上がります。一意専心の対義語も理解し、ビジネスシーンにおいて必要なコミュニケーション能力を高めていきましょう。

右顧左眄

「右顧左眄」は「うこさべん」と読みます。周囲の意見や目を気にして、ためらってしまい決断できない状態を指す言葉です。優柔不断と似たようなニュアンスですが、右顧左眄は決断できない原因が自分の中の葛藤ではなく、周りの様子を窺いすぎて、という部分に違いがあります。

<使用例>

  • 会議の結論を出す場面になると、なぜか右顧左眄してしまう方が多い。
  • リーダーを決めようと挙手を求めたところ、皆が右顧左眄し進行が止まってしまった。

狐疑逡巡

「狐疑逡巡」は、「こぎしゅんじゅん」と読みます。決心がつかずためらっている様子を、疑り深い狐になぞらえた言葉です。疑うあまり決断できない、というニュアンスで使われます。

<使用例>

  • 時間は限られているのだから、狐疑逡巡するよりも、まずは動くべきだ。
  • 疑うことは否定しないが、狐疑逡巡が過ぎると、せっかくのチャンスも逃してしまいそうだ。
  • 会話をしている様子

    一意専心の対義語は?

一意専心の英語表現

昨今のビジネスシーンでは特に、英語表現も覚えておくと便利な場合が多くあります。そこで、一意専心の英語表現と例文をいくつか以下に紹介します。シーンごとに適切な表現ができるよう確認しておきましょう。

with a single mind

with a single mind は、「ひたむきに」「一心に」といった意味を持ちます。一意専心とよく似た使い方ができる言葉です。

<使用例>

  • She set up the project with a single mind.
    (彼女は一意専心でプロジェクトを立ち上げた)

with one’s whole heart

with one’s whole heartは、直訳すると「心を丸ごと」になります。そこから、「一心に」「一生懸命」「真心を込めて」などの意味を持ちます。

<使用例>

  • I explained with my whole heart to the customer.
    (私は顧客に、心を込めて説明した)

wholeheartedly

wholeheartedlyは、「誠心誠意」「心から」という意味を持ちます。一意専心の意味である「脇目もふらずに集中」と言うよりは、「心を込めて向き合う」というニュアンスが近い言葉です。

<使用例>

  • I threw myself wholeheartedly into my project.
    (私は誠心誠意、プロジェクトに専念した)
  • 電話をしている男性

    一意専心の英語表現を学びましょう

意味を覚えて四字熟語「一意専心」を使いこなそう

今回は「一意専心」について、ビジネスシーンでの使用方法など例文を挙げて確認してきました。由来や類語・対義語を併せて学ぶことで包括的に理解でき、忘れにくくなるでしょう。

四字熟語は短い言葉の中に多くの意味を含んでいます。日常会話からビジネスシーンまで使いやすい四字熟語も多数ありますので、積極的に学ぶべきです。潤沢な語彙を手に入れるべく、一意専心に努めましょう。