本記事では、「和をもって尊しとなす」の意味や読み方、由来、四字熟語でどう表すかなどをご紹介します。使い方の例文や英語表現も併せて解説するので、ぜひ参考にしてください。

「和をもって尊しとなす(和を以て貴しとなす)」の意味と読み方とは

  • 「和をもって尊しとなす」の読み方や意味、四字熟語などを解説する記事です

    「和をもって尊しとなす」の読み方や意味、四字熟語などを解説する記事です

ここでは、「和をもって尊しとなす」の意味をご紹介します。読み方も併せて確認しておきましょう。

「和をもって尊しとなす」の意味

「和をもって尊しとなす」は2つの意味を持つ言葉です。

■和を大切にしなさい

1つ目は「和を大切にしなさい」という意味です。お互いを尊重し、認め合って協力することの大切さを表しています。怒らず争わず協力や協調することが尊いことだ、という意味です。

■話し合いを大切にしなさい

2つ目は「話し合いを大切にしなさい」という意味です。争いを避けて和を大切にするだけではなく、お互い妥協せずに納得するまで話し合うことの大切さを表しています。

自身の気持ちや感情を抑えてひたすら我慢したり、相手の気持ちや意見を無視したりすることは「和」ではありません。「和」は妥協や同調ではなく、理解しあって調和・協調するという考え方です。

「和をもって尊しとなす」の読み方

「和をもって尊しとなす」は「わをもってとうとしとなす」と読みます。「和をもって貴しとなす」や「和を以て貴しとなす」と表記することもありますが意味は同じです。もともとは、「貴し」と表記されていました。

「尊し」を「貴し」と表記するときは、「わをもって『とうとし』となす」と「わをもって『たっとし』となす」の2つの読み方が存在します。

「和をもって尊しとなす」の由来・語源

  • 「和をもって尊しとなす」の由来は、論語と聖徳太子の十七条憲法といわれています

    「和をもって尊しとなす」の由来は、論語と聖徳太子の十七条憲法といわれています

「和をもって尊しとなす」の意味がわかったところで、その由来も知っておきましょう。「和をもって尊しとなす」の由来は主に2つとされています。

孔子の教えをまとめた『論語』や儒教の考え方

1つ目は孔子の『論語』です。孔子は紀元前5世紀頃に中国で儒教を確立した人物。孔子の没後に弟子たちが孔子との対話を編纂(へんさん)した『論語』に、「礼は之(これ)和を用って貴しと為す」と記載があります。

なお儒教でいう「和」とは、秩序を重んじる「礼」において、人々が互いに打ち解けて親しくすることの大切さを説いています。

聖徳太子が制定した十七条憲法

2つ目は聖徳太子が制定した十七条憲法です。十七条憲法には、役人たちが守るべき道徳的な戒めが十七カ条で記されています。十七条憲法の「和」は儒教における学問の「和」の概念を超えて、仏教の和合の精神の重要さを説いたものです。

「和をもって尊しとなす」は十七条憲法の第一条に登場します。

日本書紀の原文では続きがある

十七条憲法は日本書紀に全文が掲載されていて、その原文は漢文で表記されています。下記が第一条です。

一曰。以和爲貴、無忤爲宗。人皆有黨亦少達者、是以、或不順君父乍違于隣里。然、上和下睦諧於論事則事理自通、何事不成。

「和をもって尊しとなす」は漢文で「以和爲貴」と表現されています。実際には、「以和爲貴、無忤爲宗」までが一文で、「和を大切にするのが尊いことで、逆らうこと、争いを起こさないことを根本としましょう」という意味なのです。

第一条は「上下関係にとらわれず話し合いができれば、何もかも成し遂げられるだろう」という意味の言葉で締めくくられています。

「和をもって尊しとなす」の使い方・例文

  • 「和をもって尊しとなす」には2つの意味があるので、それぞれ使いこなしましょう

    「和をもって尊しとなす」には2つの意味があるので、それぞれ使いこなしましょう

「和をもって尊しとなす」の使い方をご紹介します。次の例文を参考にしてください。

和を大切にしなさい、という意味での例文

・「和をもって尊しとなす」の精神で他人と接しましょう
・何事にも「和をもって尊しとなす」を心掛ければ、悪口やいじめは少なくなるはずです
・「和をもって尊しとなす」は大事だが、過剰な忖度(そんたく)には気を付けたい

話し合いを大切にしなさい、という意味での例文

・課長は「和をもって尊しとなす」の精神を持っているため、会議は全員が納得して終わる
・君はいつも自分の意見を押し通すけれど、「和をもって尊しとなす」という言葉があるように、他の人の意見にも耳を傾けるべきではないか?

「和をもって尊しとなす」の四字熟語

  • 「和をもって尊しとなす」の四字熟語も覚えておきましょう

    「和をもって尊しとなす」の四字熟語も覚えておきましょう

「和をもって尊しとなす」を漢字だけで表現した四字熟語もあります。

以和為貴

「和をもって尊しとなす」は前述のように、もともと、日本書紀に漢文で書かれていました。「以和為貴」はその原文を、そのまま四字熟語としたものです。「和をもって尊しとなす」と同じ読み方、意味で使える四字熟語です。

用和為貴

「和をもって尊しとなす」の漢文「以和為貴」の別表記である「用和為貴」がそのまま四字熟語になったものです。

読み方は「ようわいき」または、「和を用って貴しと為す」なので「わをもってとうとしとなす」です。

「和をもって尊しとなす」の類語・言い換え表現

  • 「和をもって尊しとなす」の類語を知って理解を深めましょう

    「和をもって尊しとなす」の類語を知って理解を深めましょう

「和をもって尊しとなす」の類語、言い換え表現をご紹介します。

仲よき事は美しき哉(かな)

「仲よき事は美しき哉」は明治〜昭和にかけて活動していた小説家・武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)が、よく色紙に書いていた言葉です。

色紙には、淡い色調で水彩の野菜の絵がともに描かれることが多く、特に戦後の復興期に大変人気を博しました。

「和をもって尊しとなす」の英語表現

  • 「和をもって尊しとなす」の英語表現を紹介します

    「和をもって尊しとなす」の英語表現を紹介します

「和をもって尊しとなす」を英語で表したフレーズとして、「Cherish the harmony among people.」などがあります。

「cherish」は大事にする、心に抱くという意味、「harmony」は調和、和という意味を持つ単語です。「cherish」の代わりに、おなじみの単語の「important」を使ってもいいでしょう。

The number of people you get along with will increase if you have the spirit of "Cherish the harmony among people."
(和をもって尊しとなす」の精神を持つと、仲良くなれる人の数は多くなります)

In an era that demands diversity, harmony is the most important thing.
(多様性が求められる時代に最も大切なのは、調和です)

「和をもって尊し(貴し)となす」の意味を理解し使いこなしましょう

「和をもって尊しとなす」の意味は、「和を大切にしなさい」や「話し合いを大切にしなさい」です。もともとは『論語』や聖徳太子が制定した十七条憲法に記載されていた言葉です。

現代でも通ずる考え方を表す言葉なので、意味や使い方をしっかりと理解しておきましょう。