「プリキュア」シリーズの映画最新作『映画ヒーリングっど・プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』が、全国公開されている。
映画では、"ゆめペンダント"の力で、心の中に思い描いた夢を映し出すことができる"ゆめアール"体験が大流行中の東京を舞台に、プリキュアの活躍が描かれる。
今回は『ヒーリングっど・プリキュア(略称:ヒープリ)』で主人公・花寺のどか/キュアグレースを演じる悠木碧に、映画の見どころと一年にわたって演じ続けた『ヒープリ』への思いを聞いた。
――最初に映画の完成版を見た時の率直な感想は?
本当にてんこ盛りの一本でした。女の子の好きなかわいいものと、暗い空気を吹き飛ばすような明るさで構成された映像。それに、胸に残るメッセージも作品を通して描かれていました。ヒーリングアニマルたちまでひっくるめた、ヒープリチームの絆が生きた変身フォームもあり、そして『Yes!プリキュア5GoGo!』チームとの友情も描かれていますから。
――『Yes!プリキュア5GoGo!』のみなさんと収録が一緒になることはあったのでしょうか。
キュアドリーム/夢原のぞみを演じる三瓶由布子さんとはがっつり一緒にやらせていただきました。三瓶さんは久々の「プリキュア」だったと思うのですが、マイク前に立つとやっぱりのぞみちゃん。すごい”仕事人”という感じで、収録時間もすごく短かったんです。「すごいサクッと終わったなー」みたいな気持ちもありつつ、でも濃密な時間を過ごさせていただきました。
――キュアグレースとキュアドリームが並ぶビジュアルもインパクトがありますね。
こうして二人が並んだところを見ると、「おお、かっこいい!」みたいな。シンプルにテンションが上がりますよね。収録中はこうなるのかなあと三瓶さんと想像しながら作りましたけど、絵が付いてもっとずっとすごくなっていました。
――三瓶さんとはこれまで共演されたことはあったのでしょうか。
ここまでガッツリとご一緒したことはなかったんです。でも、プリキュアファミリーとしてグッと近くなれて、ご一緒させていただけて本当に光栄でした。めちゃめちゃかっこよかったです。
――映画だけのフォームも本作の大きな見どころですね。
本当にかわいいですよね! 映画だけの変身バンクが本当にかわいくて、パートナーフォームの時にのどかが手でウサ耳を作るんですけど、「あざといぞ!」って。「こんなの嫌いな人がいるのか……いや、いない」って(笑)。おそらくですが、オリンピックも想定して作られていた作品だったんだと思うんです。それが、日本のよさを海外に伝えるというところで和装の「カグヤグレースフォーム」や東京という舞台になっているのかなって。でも、こういう状況になってあらためて日本のよさを思い返そうという中で、いま届いてワクワクするテーマになっているんじゃないかと思います。
「ドリームキュアグレース」については、「二人は結婚するのっ!?」みたいな(笑)。どっちも花嫁みたいですよね。本当に素敵な夢の共演をさせていただきました。個人的にグッとくるのが、お互いのモチーフが逆に入っているところ。ドリームにお花のモチーフ、グレースに蝶のモチーフが入っているんです。それを見て、「ああ、結婚するんだなあ」って思いましたね(笑)。あと、なにかとグレースがピンチになるとドリームが助けにきてくれるんですよ。めっちゃかっこいいんです。
今回は何度も変身しますし、私服も変わりますから、ワクワクしながら見ちゃいました。やっぱり全人類、洋服が変わるとテンションが上がりますよね。
――第42話「のどかの選択!守らなきゃいけないもの」は、大きな反響を呼びましたね。
私自身、今までにいろんな正義の味方を演じてきて、自己犠牲のない子って見たことがなかったんです。それがある種、日本の正義の形なんだと思っていたし、そういう刷り込みで生きてきたから、のどかもたぶんそうなるんだろうと思って見ていたら、その自己犠牲は正しくないかもしれないっていう。
もちろん、正しいか正しくないかは人によると思うんです。今回であれば、ダルイゼンは吸収されてしまいますから。でも、それをちゃんと問わせるような、「あなたならどう?」って聞いてくる話だったのはすごいですよね。
ラビリンが、のどかが助けたいんだったら一緒に助ける、でものどかが助けたくないんだったら助けなくていいと言った時、みんなが一回のどかのポジションに自分を置いたと思うんです。私だったらどっちかなと思ったら、やっぱり"助けられない"を選ぶかなって。いままでダルイゼンがやってきたことを考えると……。
でも同時に、のどかならやってくれるんじゃないかって思っていた私って、なんてのどかの人格を否定していたんだろうという気持ちになったんです。のどかだったら優しいからなんでもやってくれるし、私たちにもできない選択をしてくれるんじゃないか。そんな期待を14歳の普通の女の子に負わせていた。それって、"優しさの搾取"みたいなものだったんじゃないかなって。
――のどかというキャラクターは、いままで悠木さんが演じてきたキャラクターから少し印象が違うように思いました。
実はこういう穏やかな子、普通の子というところが根底にある子はあまりやったことがありませんでした。どこかすごく尖っている子が多かったんです。でものどかに関しては本当に丸く丸く作っていかなきゃいけなくて、角をとっていくことで、この子のよさが磨かれていくというような役でした。
自分の性質とは正反対。でも、正反対にいるから見える影って絶対にあって、この子のイメージってこんな感じかなというのを引きで見ながら、「この子はこうであってほしい」「こうだったら素敵だな」というところを楽しく盛り立てていくのが最初のグレースの作り方でした。
でも途中から、「それって私や視聴者の理想であって、のどかのなりたい人って何なんだろう」というところにちょっと気づいて。それこそ、第42話は特にそういう側面が強かったですよね。自分がいかにこの子に理想を押し付けていたんだろうという気持ちになりました。
そこに気づいてから、のどかのなりたい人になりたいなと思うようになったんです。大人の立場から子どもの未来を考えることに近い感覚かもしれません。そこから役との乖離が減っていった感覚がありました。「あ、わかる。そういう人って素敵だよね。そういう人になりたいんだ。いいね、素敵だね」って同意してあげるように演じるようになってから、ぐっと身近に感じるようになったんです。
のどかはちょっと憧れの女神みたいな感じというか、ちょっとアイドル性高いなという印象だったんですけど、そうじゃなくて身近で頑張ってて、素敵な人になりたいから彼女は人に優しくしていることもすごく素敵だと思ったし、こういう子が増えるといいなって。そうなってからは演じるニュアンスが変わったかもしれません。