――"明るさ"を求めていた時代の流れにも合っていたのかもしれません。
確かに、『キラメイジャー』の魅力は、底抜けに明るいところにもあるのかもしれません。なかなかない戦隊でしたよね。たぶん、いろんな方が言っているんじゃないかと思うんですけど、「このコロナ禍の戦隊がキラメイジャーでよかったな」というふうに感じるんです。『キラメイジャー』だから、ドロドロした人間関係とかじゃなくて、ただただスカッとした気持ちにさせてくれるものを作ることができた。ショーでも楽しいものを作る方向に進めた。
「叔父の月を見ている」も、宝路とガルザをめぐる因縁のグラジュエルの流れだけだとシリアスなドラマなんですけど、それと並行してムシバ邪面みたいなヤツが出てきちゃうという。あのふり幅ができる戦隊だったので、すごく楽しかったです。かわいらしい戦隊という印象もすごくありました。
もちろん、コロナ禍でなければ、『キラメイジャー』はもっと盛り上がっていたかもしれませんし、もっとたくさんイベントをやることもできたかもしれません。それでも、この状況下で放送されたのが『キラメイジャー』でよかったと、心の底から思えた戦隊でした。塚田さんがすごいなと思ったのは、シリーズ44作品目にして、また新しさを感じさせる戦隊を生みだしたということ。本当に脚本を書くのが楽しかった作品でした。
――以前塚田さんにお話を聞いた時に、イメージが伝わりやすいように具体的な作品を挙げて提案されるとお聞きしたのですが、打ち合わせはそんな感じなのでしょうか。
そうです、そういうやりとりからですね。例えば、マブシーナが酔っぱらってしまうエピソード35「マブシーナ放浪記」なんて、もう『ハング・オーバー!』ですよね。あれも『ハング・オーバー!』みたいな感じはどうでしょう、みたいなところから始まっているんです。
でも、脚本を書いているときは、担当回の前がどうなっているのかはわからないんですよ。「こういうふうに終わります」という流れは教えてもらうんですけど。だから、面白い感じで始める脚本にしていたのに、前のエピソードがすごくドラマチックに終わっていたりすると、大丈夫かなって心配になりました。ヨドン皇帝が出てきたけど大丈夫かなって。でも、意外と見てみると気にならなかったりして。
――宝路のメイン回を担当されることが多い印象でした。井上さんにとって、宝路は思い入れがあるキャラなのではないですか?
どの回を担当するかというのはこちらで選べるわけではないので、宝路のメイン回が多かったのは偶然なんです。でも、よく書いていたことで思い入れがありましたし、キャラ的にも作りやすいキャラクターではありました。僕も昭和生まれで、実際の宝路と近い世代なので、やりやすさもありました。
――シリーズ第4弾「Gロッソ最終決戦 輝け!キラメキの光!」では、宝路をめぐる重要なシーンも描かれていましたね。
書かせてもらった「叔父の月を見ている」では、宝路とガルザによるグラジュエルが行われます。ただ、その後最終話でも2人の因縁がはっきりすることなく終わるので、せっかくなので決着をつけたいなと思って反映させたところはあります。
――今回、ショーの見どころとして、初めてキャラソンのコーナーが設けられていますが、これはエピソード24「バンドしちゃうぞ!」を執筆したことも役に立っているのでしょうか。
キャラソンをショーに入れることを提案してくれたのは、アクション監督の渡辺智隆さんなんです。劇中で音楽を前面におし出した「バンドしちゃうぞ!」というエピソードももちろんですが、そのひとつ前の回から始まったスペシャルエンディングの「キラメイ音楽祭」によってキャラソンの認知度を高めることができたので、ショーに入れても反応がしやすいのではないかと思いました。
――SNSなどでも、ショーには大きな反響が寄せられています。劇場の反応からも、手ごたえを感じられているのではないでしょうか。
手ごたえは確かにあります。もちろん、常にいいものをつくろうと思ってやっていて、毎回「今度が一番いいものができたかも」という気持ちになるので、同じといえばそうなのですが。それでも今回は一番自分の中でも納得のいくものができたのではないかという思いがあります。
――ファンの方の声で印象的だったのが、「30分とは思えない」というものでした。まさに中身の詰まった「30分とは思えない」ショーだと思います。
夏ごろ、YouTube向けに10分ほどのショーを作ったんです。もっとギュっとしたショーだったんですけど、作ってみると十分に見ごたえのあるものになりました。起承転結でやるべきことをしっかりやっておけば、この長さでもできるんだという実感を、ここで得ることができたのは大きかったですね。
もともと、第4弾は素顔の戦士出演の公演で公演数も多いですし、コロナ禍であることも鑑みて、あまり長いショーにしようとは思っていなかったんです。そこで、その10分のショーで組み立てたものをベースに付け足していくことでできるんじゃないかと。いつもより短いところにはキャラソンを入れていって、という感じですね。今回のショーは、この状況下での試行錯誤によってできあがったという面もあると思います。この状況下じゃなかったら生まれていなかったのかもしれません。