――ショーケースの演出は、素面で客席に寄ることができないことをフォローする、コロナ対策としても斬新な演出だと思いました。

結果としてコロナ対策の面はあるんですけど、あれはアクリル板をうまく使おうと発想したわけではなくて、なんとなくショーケースに怪人が入っている画が面白いなとよぎったからなんです。

「オペラ座の怪人」の続編のミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」で、ほんのワンシーンなんですけれど、奇怪な人たちがショーケースみたいなものに入ってるシーンがあるんですよ。あれがカッコいいなと前から思っていたんです。それで、冒頭でショーケースにベチャットが入れられているイメージができました。実は最初の構想では入れられているのは邪面師だったんですけどね。それが、「あれ、ひょっとしたらこれってコロナ対策に使えるんじゃないか」ってふと気づいたんです。

プロットを作った時に、ショーケースは大変ですねという話にはなったんですけれど、でもこれで下段まで役者を下ろすことができるかもしれないって(※新型コロナウイルス感染症防止対策のため、マスクなしの演者は下段には下りられないルールがある)。それで、プロデューサーにショーケースを6個作れますかって提案したんです。

――ショーケースは今後も登場の予定はあるのでしょうか。

せっかくオリジナルで作ったので、使いたいですよね。大きいので、どこに置いておくかの問題もあるのですが。でも、すぐ使うとあれだってバレるから(笑)。そういうのって裏側にいっぱいあるんですよ。

――ゲネプロを拝見して、番組と変わらないキャストのみなさんの輝きぶりが素晴らしかったです。

6人の場合は、すでに彼らの中でそれぞれのキャラクターが出来上がっていたので、特にこちらから何か指示を出すということはありませんでした。「ここはこんなふうにお客さんに見せたい」といった演出意図をお伝えすると、みんなそれに応えてくれました。

――合間の時間にも練習されている姿を見てびっくりしました。

こうした状況下ですから、お客さんの前に出る機会が限られていたということもあるでしょう。それに加えて、彼らの人を楽しませようとする性格からきているものもあると思います。そういう意気込みがすごく伝わってきました。本当に、真面目で熱心で素晴らしい6人なんですよね。

――井上さんがGロッソでショーを作る際に特に大事にしていることは何でしょう。

一番は「子どもを楽しませる」ということです。そこが第一で、絶対にブレないようにしようと心がけています。あとはショーなので、演劇にしないようにというのがあります。ショーでもストーリーは必要ですが、そちらに比重がいきすぎてしまうと子どもが退屈してしまう。とにかく何をやったら子どもが喜ぶだろうということしか考えないですね。

僕はもともと後楽園のヒーローショーは見たことがなかったんです。でもスーパー戦隊はずっと好きで、事務所に演出家を探しているという話が来たときに「絶対にやりたいです」と手を挙げました。それでプロデューサーの方が当時の舞台を見てくださって、一緒にやりましょうということになった。それで、きだつよしさんが手がけた「ゴセイジャーショー」の1期を見たんです。

その時の感想は、「こんなにすごいんだ」でしたね。ただただカッコいいなと。僕は『電子戦隊デンジマン』『太陽戦隊サンバルカン』『大戦隊ゴーグルファイブ』『科学戦隊ダイナマン』『超電子バイオマン』あたりにドカッとハマった世代なんですけど、あの時から戦隊に対するあこがれは何も変わってないんです。それがそのまま出てきたって感じ。

きっと、ショーを見た子どもたちもそう感じるんじゃないか。そんなショーを作る人たちの思いを繋いでいかなきゃと思ったんです。バトンを引き継いだじゃないですけど。だから、これまで作り出されてきたものを壊さないようにというのはありますね。

――私もGロッソで初めてヒーローショーを見たとき、そのアクションの迫力に驚きました。

やっぱり歴史ある後楽園のショーですからね。敷居が高いというか、この舞台に出ることに憧れている方って本当にたくさんいらっしゃると思うんです。生半可ではできない舞台なので、芝居のこともすごく考えてやってくれている方々が多い気がします。そこもやっていて楽しいところです。

Gロッソは、スタッフさんもすごいプロフェッショナルの方たちばかり。僕は10年くらいやらせていただいていますが、それでも一番若手のペーペーみたいなものです。でも演出家を立ててくださって、提案に対して多少ブーブー言いながらも(笑)やってくれるんです。その姿がすごくかっこいいというか、ありがたいですね。僕の目の届かないところも、音響さんだったり照明さんだったりが考えてやってくださっていて、ショーはそういうプロの仕事の結晶だと思います。

――井上さんから見た、Gロッソ公演の魅力は?

「本当にヒーローに会えるので、会いにきてほしい」ということです。子どもたちにとって、ヒーローは"いる"んですよ。だから、Gロッソではスタッフとキャストが全精力を注いで、「ヒーローはいるんだよ」ということを子どもたちに伝えています。「この世にはヒーローがいるんだから、みんないい子でいてね」というメッセージ。なので、僕にとってGロッソは、本当の意味で"ヒーローに会える場所"という感じなんです。

――いまはキラメイジャーの6人のキャストたちが中心となって、その思いを伝えているんですね。

正直なところを言うと、もしコロナ禍が終わって、声援を送ることが許容される世の中になったら、その時にもう一回やらせてあげたいくらい。彼らに、子どもたちの「がんばれ」コールを聞かせてあげたいんです。いまでも十分満足しているんですけど、それがあったらもっとすごいはずですから。一度は味わわせてあげたかったですね。

追加公演決定
3月14日(日)17:50~
3月21日(土)17:50~
好評につき、上記時間の公演が追加に。
※チケットが規定枚数に達し次第受付は終了となります。
詳細は公式サイトにてご確認をお願いします。
https://at-raku.com/hero/

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