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劇中は、ラウンジでの会話劇のシーンが多く占めることから、「高低差を付けて2階を見せたり、ロビーも作ったりしたんです。そうしないと画がもたないと思ったので、監督も喜んでくれました」と、美術発信で画を作っていくということが行われている。

熊野古道という神秘的な場所でのロケからクランクインし、スタジオでの撮影に臨んだが、どの出演者も立派なセットに驚いているそうで、柳川氏は「熊野古道から来た人たちに見てもらうので、セットも負けてられないです」と、デザイナーとしてのプライドを覗かせた。

■コロナ対策も各所に

新型コロナウイルスの影響は、セットを作る上でも出ている。スタッフが一度に集まって作業することができない分、設営に通常よりも時間がかかる上、テーブルやイス、棚など、出演者やスタッフが触れる部分は、撮影ごとにアルコールで拭いて消毒しなければならない。

そしてセットの設計も、密封を避けるため、天井を作らずふさがない方針となり、様々な制約が生まれた。

そんな状況で対策のノウハウが蓄積された今作は、壁を通常よりも30cm程度高くして設置。窓を多くするなど開放できる部分を作ることで、換気のしやすい環境にした。こうしたテレビ画面からは見えない工夫で、安全な撮影が支えられている。

●柳川和央
デザイナー歴40年で、『ショムニ』『GTO』『白い巨塔』『ガリレオ』『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』『シャーロック』『SUITS/スーツ』など、延べ140本ものドラマ・映画のセットデザインを手がける。三谷幸喜脚本作品では『オリエント急行殺人事件』『黒井戸殺し』『死との約束』のほか、『わが家の歴史』も担当した。