フジテレビ系スペシャルドラマ『死との約束』(3月6日21:00~23:40)に主演する狂言師・野村萬斎。『オリエント急行殺人事件』(2015年)、『黒井戸殺し』(18年)に続き、アガサ・クリスティー原作×三谷幸喜脚本作品に挑むことになるが、このタッグにどのような気持ちで臨んだのか。話を聞いた――。

『死との約束』に主演する野村萬斎 (C)フジテレビ

『死との約束』に主演する野村萬斎 (C)フジテレビ

■「半沢直樹に負けないようにしないと(笑)」

今作は、1938年に発表された長編小説が原作。『死海殺人事件』のタイトルで88年に映画化もされているが、日本での映像化は初めてとなる。舞台を“巡礼の道”として世界遺産にも登録されている熊野古道に、そして時代設定を昭和30(1955)年に置き換えて三谷が執筆した。

名探偵・勝呂武尊(すぐろ たける)を演じるのも3回目となる萬斎は「ある程度“投球方法”も定まって、豪華な役者さんたちと相まみえるのも楽しみではあります。そのキャッチボールというのが私たちも楽しいんですけど、きっとお客様の楽しみにもなるのかなと思っています」とコメント。

その豪華共演陣について、「松坂慶子さんから原菜乃華さんまで、いろんな世代がバラエティに富んでいたのが面白いですね」と、掛け合いを楽しんだ様子。「駆け引きも楽しめますし、若手になると非常にナチュラルな演技が僕には新鮮でしたし、『半沢直樹』に負けないようにしないといけないなと思いました(笑)」と、大ヒットドラマも意識しながら臨んだ。

ちなみに、「堀田真由さんが出演していたバラエティ(『ウッチャン式』)に、うちの娘(TBS野村彩也子アナウンサー)がちょうど一緒に出たりして、そんなご縁もありました(笑)」とのことだ。

  • 鈴木京香(左)と野村萬斎 (C)フジテレビ

■原作に忠実ながら面白い“三谷マジック”

『オリエント急行殺人事件』『黒井戸殺し』と比べて、「つくづく違う作品ですね」といい、「勝呂は共通ですけど、まあ面白くこうも違う作品として1本1本のアイデンティティがあるのも、今回の魅力だと思います」と実感。

そんな今作を演じて、「ややこしくてねぇ、謎解き大変でした。自分でも何しゃべってるのか分からないくらいややこしくて(笑)」と冗談めかしながら、「どんでん返しの仕方、そのための伏線という意味では、本当に良くできてるなと思います。(脚)本を読んでる時点ですでに面白いですから、きっと見て面白いと思います」と自信を語る。

この三谷脚本の魅力を聞くと、「前回の『黒井戸殺し』も今回の『死との約束』も、イギリス制作版(の映像作品)を見ると、より複雑にちょっと改変してるんですよね。書いてある文章を映像として派手になるようにということで急にアクションシーンが入っちゃったりとか、思いもよらぬ展開だったりとか、そういうサスペンス仕立てにするのがイギリス人の好みなのかもしれませんけど、それを本来の形に近いというか、楽しく読み進める小説の感覚というのが、三谷さんの作品にはあるという感想をよく頂きます。主人公がちょっと嫌なヤツというところも含めて、原作に忠実であって、かつ面白いというところが、まさしく“三谷マジック”なのかな」と評する。

三谷は、前作『黒井戸殺し』の際、アガサ・クリスティー原作ドラマを「あと50作くらいできる」と、シリーズ化に意欲を示していたが、萬斎は「もう三谷さんは次なる作品を構想していると我々の耳に入っていますけど、本当にすごいセリフ劇ですので戦々恐々です」と吐露した。

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■“勝呂節”がだんだん古畑任三郎に!?

飄々とした独特なしゃべり方の勝呂武尊は、「この役をやると、タイムラインが楽しみでしょうがないですね。内容と関係なく“勝呂武尊”というのがSNSに上がるんです。『喪黒福造に似てる』とか(笑)」と言うように、毎回強烈なインパクトを残すキャラクター。演じる間隔が数年空いても、「スタイルがある意味確立されているので、スッと入れますね」という。

この取材中も、どことなく“勝呂節”を感じさせたが、「ひげが付いてると、なんとなくしゃくれて、勝呂の感じになってくるんですかね。こういう象徴的なものを付けると演じる助けになりますけど、“三谷節”をやってると、だんだん『古畑任三郎かな?』と思うような間が出てきたりもします(笑)。でも、そこは勝呂なりの間に変えることができるようになったかなと思います」と、コントロールできているそうだ。

改めて、今作の見どころについて、「家族がテーマになっていることでしょうかね。それから、旅というもののロマンや不思議さというのも、実は大きなテーマになっています。このコロナ禍で、皆さん旅ができないと思いますので、旅行の良さを感じていただければ。贅沢な作品に仕上がっているので、ぜひご覧いただきたいと思います」と呼びかけた。

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