テレビシリーズがいよいよクライマックスを迎えようとしている『魔進戦隊キラメイジャー』と、2019年に活躍した『騎士竜戦隊リュウソウジャー』、そして3月7日よりテレビ放送を開始する『機界戦隊ゼンカイジャー』、スーパー戦隊シリーズの"単独映画"3本立て興行『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』が、現在公開中である。

  • 水石亜飛夢(みずいし・あとむ)。1996年生まれ、神奈川県出身。2012年、舞台『ミュージカルテニスの王子様2ndシーズン』で俳優デビューを果たし、特撮ドラマ『牙狼<GARO>-魔戒の花-』(2014年)でクロウを演じて特撮ファンから注目された。映画『いぬやしき』(2018年)『センセイ君主』(2018年)、『笑いの枝折り』(2019年/主演)や、テレビドラマ『相棒 season17』(2018年/第4話)、『あなたの番です』(2019年)など出演作多数。撮影:大塚素久(SYASYA)

『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』は、テレビシリーズのエピソード21、22に登場した悪役ヌマージョの妹で"悪夢のマエストロ"と自称する魔女・ミンジョ(演:壇蜜)が姿を見せ、キラメイジャーたちを「夢の世界」に閉じ込める……というスリリングで幻想的な物語が繰り広げられる。

映画公開記念インタビューの今回は、押切時雨/キラメイブルーを演じる水石亜飛夢が登場。スクリーンやテレビ画面の中から輝きを放つ"イケメンアクション俳優"として常にクールな二枚目を気取っているが、そんなスタイルを徹底するあまり"やせ我慢"をしたり、思いがけないところで表情を崩し"変顔"を見せたりする人間くささも、時雨の大きな魅力である。水石は時おりまぶしい笑顔をのぞかせながら、1年間にわたる撮影での思い出や、時雨のキャラクターを強く印象付けるために行ってきたこと、そして映画の注目ポイントを語ってくれた。

――『キラメイジャー』で過ごした1年間を振り返って、水石さんご自身のどんなところが"変化"されたと思われますか。

ちょうど1年前のスチール写真を見返してみると、僕も含めて今のみんなの"顔つき"が変わったなとしみじみ思います。なんというか、"あか抜けた"感じ(笑)。現在の顔に、1年間の努力や学んだ経験が刻まれて、昨年よりもいっそうキラキラできているんじゃないでしょうか。

――押切時雨という役柄に、水石さんが影響を受けた部分はありますか?

まず、ヒーローであることへの"意識"を強く持つようになりました。普段でも、外で小さなお子さんを見かけると、つい「自分はこの子たちのために、ヒーローとして頑張らなくちゃいけないな」って思ってしまいます。毎日の生活の中で、自然と"ヒーロー"だと意識して行動する姿勢が備わりました。時雨自身、非常にストイックな性格だったので、彼に恥じないような芝居作りをしようと、気持ちを込めました。

――俳優として数々のテレビドラマ、映画で活躍した時雨の演じた役柄で、特に印象に残っているのはどれでしょう。

アクション俳優なのに、あまりアクションっぽい役をやっていなかったかもしれません。刑事役とか、着物姿で殺陣をやっていたことはありましたけど。時雨が出演した作品で印象的なのは、彼が初めて恋愛ドラマに挑戦したという『死神に恋してるっ』です。CARAT本部内で時雨が読んでいる「台本」という形で、何回もタイトルが出てきました。ドラマだけではなく"劇場版"にもなり、さらには劇場版第2弾の台本もありましたね。時代劇アクション映画『紺碧の剣』よりも『死に恋』劇場版のほうが当たったみたいです(笑)。

――さすがは人気アクション俳優だけあって作品が途切れることなく、戦いのないときは出演作の台本を読んでいることが多かったですね。台本の表紙もいろいろ凝ったデザインで楽しませてもらいました。

時雨が読んでいた台本は表紙だけ新しく作られたもので、中身は『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の台本をそのまま使っているんです。エピソード28「時雨泣き」では『宇宙の中心で愛を叫ぶ』の台本を読んでいますが、中にはコウ、カナロ、ナダのセリフが並んでいてよくわからなかった(笑)。

――エピソード18「闇落ち」の冒頭で、時雨が人気刑事ドラマ『相棒19』の台本を読んでいるのかなと思ったら、よく見ると『相撲19』と書かれてあって、意表を突かれました。

あれは秀逸なギャグでした。お相撲さんのドラマなんですね(笑)。ロゴも『相棒』に似せていましたし、小道具さんのパロディセンスの良さと遊び心の本気度を感じました。あのときの時雨のセリフ「ひと突っ張り、よろしいでしょうか」は、『相棒』が好きな(新條)由芽ちゃんと一緒に考えたアドリブなんですよ。由芽ちゃんに「右京さんの名セリフって何だろう?」って尋ねたら「"ひとつ、よろしいでしょうか"ってよく言うよね」って話になり、じゃあ「ひとつ」を「ひと突っ張り」にしてみよう、なんて(笑)。

――時雨は基本クールなイケメンで通していますが、それだけに"崩す"とギャップがすごくて、大きな笑いにつながるのがいいですね。エピソード3「マンリキ野郎! 御意見無用」で頭に巨大な万力がはさまり、痛いのにやせ我慢しながらそのまま映画の撮影に臨むという時雨主役編のインパクトがすごかったです。

わりと早い段階で二枚目像が崩れてしまいましたね(笑)。1年間ひとつの役を演じるにあたって、ただクールなキャラなのかとみなさんの頭の中にすりこまれちゃうと、いろいろな感情を演技で見せづらくなりますから、早めに何でも自由に表現できる役柄として作り上げておきたかったところがあります。

――カッコいい時雨といえば、エピソード24「バンドしちゃうぞ!」で"キラメイバンド"を結成したとき、時雨はベースギターを見事にこなしていましたね。

『キラメイジャー』には、僕たちがどんなことをやりたいかをリサーチすることで生まれたエピソードがたくさんあるんです。由芽ちゃんの「かるた」回(エピソード9「わが青春のかるた道」)もそうですし、エピソード7「トレーニングを君に」で僕が剣道をやりたいと要望して、充瑠(演:小宮璃央)の特訓シーンに採り入れてもらったりしました。

バンドの回も、(工藤)美桜が「みんなでバンドをやってみたい」と言ったことがきっかけで実現したエピソードでした。美桜はドラムをやった経験があり、由芽ちゃんもキーボードができる。歌の得意な(木原)瑠生はボーカルを務めました。僕と璃央だけ楽器経験がそれほどなかったので、この回に向けてかなりベースの練習をしました。撮影前、竹本昇監督に尋ねたんです。いかんせん、撮影に入るまでの日数がそんなになかったですからね。そうしたら監督は「正しい位置に指が置けて、正しく音が出ればいいよ」と……、いや、それ全部マスターしろってことやないかいっ!って心の中でツッコみました(笑)。撮影に向けて、みんな必死に練習していましたね。

――エピソード34「青と黄の熱情」では、時雨と為朝の"イケてる2人"のコンビアクションが冴えた回でした。

個人的に、すごく胸アツな回でした。僕と瑠生は撮影の序盤から仲が良く、ずっと"時雨と為朝のメイン回"を作ってほしいと言ってきたんですが、それが後半でようやく叶ったことになります。念願のエピソードなので、2人で気合いを入れて撮影に臨みました。