世界にも出荷され、国内外のビールファンから熱い視線が注がれるクラフトビールメーカーのCOEDO。新たに2月15日から特別醸造したエールビールを販売開始する。売上の一部は、新型コロナウイルスの感染拡大によって中止となった地元・川越の年中行事である「川越まつり」の次年度の開催費用に寄付されるという。15日に行われた記者発表会では川越市長も同席し、開発に至った経緯や祭りへの想いを語った。

川越まつりの復活を祈念した『祭エール-Matsuri Ale-』

この会見でお披露目されたエールビール『祭エール-Matsuri Ale-』は、ヨーロッパ伝統のノーブルホップと、埼玉県川越市産のお米を副原料として使用。スッキリとした飲み口とクリーンな苦味でバランスの取れた味わいが実現した。缶のデザインには、歴代の川越まつりのポスターから唯一のイラスト版である平成 4 年のポスター絵を採用している。

川越まつりとは10月14日に斎行される氷川神社の例大祭と、直後の神幸祭、山車行事から成り立つ。神幸祭とは氷川の神様が川越藩の城主が寄進した神輿にのって町を巡行し、人々の安寧と町の発展を祈念するとともに民はご神徳をいただくものとされる。神社と城主、町衆の3者が結びつく祭礼として360年を超えて続けられてきた祭りで、豪華絢爛な山車が曳き回される山車行事は、平成17(2005)年に国の重要無形民族文化財に指定された。

  • 祭りの活気が伝わってくるポスターイラスト。会見場では歴代のポスターが並べられた

川越市民にとって川越まつりは、悠久の歴史とともに育んできた文化そのものだ。しかし昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で祭りは中止に。会見の場でコエドブルワリーを運営する協同商事の代表取締役社長・朝霧重治氏は「川越まつりが中止になるとは予想していなかったこと」と、残念さを滲ませた。川越の通称である“小江戸”を名乗り、地域に活動拠点を置く企業として地域に繋がることができないかと川越市にも相談したという。

そこで誕生したのがエールビール『祭エール-Matsuri Ale-』だ。日本語として馴染みのある“エール(YELL)を送る”とエール(ALE)ビールをかけた商品名に、川越まつりを応援するとともに復活を祈念する想いを込めた。売上の一部は市に寄付して、祭りの開催費用に充てられることも発表。同席した川越市長・川合善明氏はコロナ禍で川越市が財政的にも落ち込んだことを明かし、コエドビールで川越市を世界に広く知らしめるきっかけになって欲しいと新商品に期待を寄せた。

  • 発表会には川越市長・川合善明氏も同席した

祭りの精神性を大切にしたからこそ選んだ、川越産の米

『祭エール-Matsuri Ale-』を特徴づけるのは、原料の一部に川越産の米を使用している点だ。開発を担当した同社の似内彬人氏は「多くの人々に好まれるよう、軽くてすっきりした味わいに仕上げることにこだわった」と話す。ブルワーたちが個性的なビールを追求するのがクラフトビールの面白さだが、商品の特性から万人が愉しんでもらえることを目的にした。

  • 『祭エール-Matsuri Ale-』は酒販店・飲食店で販売される

朝霧氏は副原料にコメを選んだことについて、そもそも祭りが地域の実りを祈るものであることを指摘し、その精神性に由来していると話す。神社の祭祀は米にまつわるものが多くある。太古から人々は自然の恵みをもたらす神に感謝し、翌年の豊穣を祈ってきた。祭りのためのビールとして、これ以上ふさわしい材料はないといえるだろう。

  • できあがったビールは川越氷川神社に奉献された

コエドブルワリーでは川越まつりだけでなく、全国各地でも同様に中止を余儀なくされた祭りを応援するために「COEDO MATSURI YELL PROJECT(コエド・祭り・エール・プロジェクト)」を始動。祭りの復活のためにエールを送る、特別なビールを醸造していくという。副原料もそれぞれのご当地の米をテーマにしていきたい考えだ。「『祭エール-Matsuri Ale-』はスタッフ一同が丁寧に仕込んだビールです。コロナ禍でも明るい気持ちになって、笑顔でビールを楽しんでもらえたら」と朝霧氏。閉塞感を抱えて暮らす人や自治体との大きなエール交換となりそうだ。